if | やさしい時間

やさしい時間

ときメモGSの妄想小説です。

ネタバレなSSもアリ。
一部限定公開もアリですのでご注意を……。

「やっぱり3人で遊ぶのって楽しいね!」
 そう言って無邪気にお前が笑った。その笑顔があんまりにも底抜けに明るくて、そこに他意も悪意も全く感じられなくて。それにつられるように、気が付いたら頷いていた。
「ああ、まあ…たまには、な?」
「まあな!たまになら付き合ってやってもいいぜ!」
 多分、奴も同じだったんだろう。弾かれるように答えて、何となくいつもの流れで奴と二人でお前を家に送って行って。始終楽しそうなお前と、ゲラゲラ笑う奴と。お前ら二人の前では素のままの自分でいられるから、それも心地よくて。次に遊ぶときもやっぱり三人でだな、なんてことを考えていた。
 でも、お前を送り届けた後に奴と二人になった途端に妙に気まずくなる。三人だと心地よくて楽しいのに、お前が抜けるとそこは居心地の悪い場所になる。多分、それは奴も同じで。
「…じゃ、俺こっちだから」
「ああ。またな」
 短く別れの言葉を交わし、自宅へと向かいながら空を仰いだ。いつの間にか日は落ちて、空には星が瞬いている。思い出すのは、別れ際にお前が見せた明るい笑顔。奴もずっと冗談ばかり言ってて、三人ですごく笑って…。やっぱりワイワイ遊ぶなら人は多い方がいい、なんてそんな気分になって。
 でも、と思う。きっと、こんな楽しい時間は長くは続かない。だって俺たちは――。





「コラ!さっきから呼んでるのに何やってんだよ!」
「きゃああああ!?」
 突然目の前に見慣れた顔が現れて私は悲鳴を上げた。つい没頭していて彼が近づいてくる気配に気づかなかったみたい。
「も、もう!びっくりしたじゃない!」
 抗議の声を上げながら、慌てて作業途中の画面を保存して閉じようとして…。再び私は悲鳴を上げる羽目になった。
「ボーっとパソコンいじってるお前が悪い。で、何やってたんだ?」
「いやーーーーーーーー!!ちょ、見ないでよ瑛くん!!」
「見るなと言われたら余計見たくなるだろ。良いだろ、減るもんでもないし」
 私の抗議の声をさっぱりと無視して私とPCの間に割って入り、作業途中の画面に見入る瑛くん。そしてポツリと一言。
「なんだ、これ」
「あの、その…なんて言うか…」
「お前…この間からこそこそゲームしてたと思ったら、とうとう同人活動まで…」
「いや、そこまで本格的なものじゃなくてね?なんていうか、ちょっとした趣味みたいな…?」
「しかもお前、これ。もしやと思うけど設定…」
 それまでじっと画面を見ていた瑛くんがゆっくりとこちらを見る。あえて無表情を装っているのが怖いんですけど。
「もしかしなくても、俺と針谷か?」
「ご、ごごごごごめんなさい!」
 ゆらり、と瑛くんが手刀を構える。思わず私は頭を庇った。
「だ、だってホラ、新システムの三角関係がすごく面白いって皆言ってるし!2ndにもあればいいのにとか言ってるし!瑛くんと組み合わせるのならハリーかなぁって……痛っ!」
 ぽかり、と手刀が振り下ろされて脳天に痛みが走る。
「だからって、よりにもよって針谷はないだろ」
「え、じゃあ…赤城君の方がよかった?……痛い!」
 2度目のチョップは1度目のよりも強めで、私は叩かれた箇所を撫でながら上目づかいに瑛くんを睨む。
「もう、何かというとすぐチョップなんだから…」
「ウルサイ。チョップされるようなことをするお前が悪い。大体三角関係ってなんだよ。お前そういうのが望みだったのか?俺と言うものがありながら…」
「え?」
「な、なんでもない!」
「痛っ!なんで!?」
「ウルサイ!お前なんて二次元でもどこでも行っちゃえばいいんだ、バカ!」
 3度目のチョップの理由が分からずに抗議をすると、瑛くんは子供のような捨て台詞を吐いてぷいっと横を向いてしまった。えっと…これは、もしかして。
「あの…瑛くん?」
「なんだよ」
 明らかに不機嫌そうな声。
「もしかしてなんですけど…妬いてる?」
「バッ、お前…!」
 振りかざされる手刀に慌てて首をすくめると、4度目の衝撃は無く。恐る恐る目を開けると、なぜか怒ったような困ったような微妙な表情の瑛くんと目が合った。
「瑛くん…?」
 声をかけると、はっと気が付いたように慌ててそっぽを向く。その首筋がほんのり赤い。
「あの、ごめんね…?」
「…なんでお前が謝るんだよ」
「だって…。その、瑛くんに不満があるとかそういうことじゃないの。瑛くんはカッコいいし優しいし、私でいいのかなーっていつも…」
「バカ、お前何言ってんだよ」
 表情の見えない瑛くんの首筋が、赤みを濃くした。
「俺はお前じゃなきゃ…って、そういうことじゃなくて!じゃあなんでこんな…」
「だ、だからね!色んなパターンの瑛くんを想像してるうちについ、ね?」
 ごめんね?と小首をかしげて見せると、頬を朱に染めた瑛くんは首筋を掻きながらため息を漏らした。
「いいよ、もう。分かった」
「ホントに?」
「ああ。だから早く降りてきて店の手伝い頼む。開店準備しなきゃ」
「うん!すぐに行くね!」
 部屋から出ていく瑛くんを笑顔で見送って、ヤレヤレと書きかけの文書ファイルを保存した。
 ……あの様子じゃ、瑛針とか針瑛なんて設定も人気だなんて口が裂けても言えないよね、なんてことを思いながら。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


7月19日は佐伯瑛くんのお誕生日!

と言う訳で、お誕生日用に書いてみましたが……何だかお笑いに走ろうとして失敗した感満載ですヽ(;´Д`)ノ
やはりコメディは難しい。。

何はともあれ、瑛くんお誕生日おめでとう!