あの懐かしい街へ。 | やさしい時間

やさしい時間

ときメモGSの妄想小説です。

ネタバレなSSもアリ。
一部限定公開もアリですのでご注意を……。

 日本の地に足を踏み入れるんは何年ぶりくらいなんやろう。空港に降り立って、感慨深くそんなことを思った。

 卒業したらお父ちゃんの仕事を手伝う、その前のほんの数年間の自由時間。そう決めて留学先を日本に選んだのはたまたま何かで見た日本の美しい景色やった。
 それから一生懸命言葉を覚えて、高校に入学して…。そして、ボクは何物にも代えがたい経験をさせてもろた。たぶん、あの時に得た経験はきっとボクの一生の宝物や。

 空港からバスに乗り、最寄駅まで移動して。電車に乗り換えてかつて馴染んだ街へと向かう。久々に浴びる周囲の視線が、やっぱりボクが外国人なんやということを思い知らされて。そう言うたらあの頃はそんなん全く気にしてへんかったなぁと小さく苦笑う。
 あの頃は、ただひたすらに『現在』を楽しむことに必死やった。自分で決めたことやけど、期間限定の自由っていうものに固執していたんやと思う。だから、自分の好きなことを思いっきりするんや、と。考えてみたら、そんな必死になってたら楽しいことも楽しくなくなるんと違うんやろか。今ならそう思える。
 勉強も、部活も、そして友達も。何もかもをがむしゃらにしてた。思い出すとちょっと恥ずかしいけど、あの頃の自分がいるから今のボクがあるんやろうな。

 窓の外の景色が、少しずつ懐かしい風景に変わっていく。何や、ちょっと緊張してきたみたいや。

 高校を卒業してすぐに帰国して、それ以来訪れることのなかった日本。なんで今さら戻ってきたかというと、1通のメールがボクの元に届いたからや。

 同窓会のお知らせ。
 長い事日本に行ってないボクにわざわざそんなメールを送ってきてくれた気持ちも嬉しかったけど、何より気になったんが送信者がつけてくれていた1枚の画像。
 数年前にも1回開催されたという同窓会、その時の集合写真。離れていた年月分、みんなちょっとずつ変わってるようやったけど、変わってない笑顔。そして――。

 あの子、今はどうしてるんやろか。いっつもニコニコしてて、ちょっとからかったら真っ赤になって恥ずかしそうにうつむいてたあの子。集合写真の中では、あの頃よりも大人っぽくなった雰囲気であの頃のままの笑顔で映っていたけど。
 結局、ずーっとボクの片思いのまんまやったんやなぁ。最初はただの仲良しさんやったのに、いつの間にかあの子のことが気になるようになって。でも、あの子にはもう別に好きな人がおって。
 傍におれるんやったら、友達のままでええわと思ってた。まあ、ちょっとは期待もしてた。…期待はただのボクの願望やったんやけどな。

 あの子の恋愛相談に乗るようになって、最初はつらかったけど。でも、あの子が好きな人を思って一喜一憂する可愛い顔を見れるんはボクだけの特権なんやと思ったら、友達っていう選択も悪くはなかったんやないやろか。

 卒業の日、あの子と彼が二人で海岸を歩いてるんを見た時。泣きたいくらい胸が痛くなったけど、同時に泣きたいくらいに嬉しくなったんや。あんなに好きやった人と、思いが通じ合ってよかったなぁって。ホンマに、素直にそう思えたんやで。

 ああ、そろそろはばたき市に到着や。同窓会の連絡をくれた幹事の子に到着時間を知らせたら、誰か迎えに行くわって言うてたけど。誰が迎えに来てくれてるんかな。



 ――そしてボクは、雑踏の中に並ぶ懐かしい笑顔に迎えられた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


2月23日はクリス君のお誕生日!
誕生日っぽくないけど誕生日なので用意してみましたw

お誕生日オメデト♪(゚∀゚ノノ"☆(゚д゚ノノ"☆(゚∀゚ノノ"☆チャチャチャ