そろそろお盆も終わりますね。夏休みには普段本を読む子も、ちょっと難しめの純文学を読んでほしいですね。
純文学は面白いとはいい難いとは思うのですが、情感ある描写、丁寧な心情描写などライト系のものにはないモノがあります。ただ、良いモノを選ばないとダラダラとヤマのない話が続く作品も多いです。とりあえず良質なものをここではすすめていきたいと思います。
<子供を伸ばすおススメ100タイトル VOL14 日本純文学編②>
73、蜘蛛の糸・杜子春 芥川龍之介 文章レベル★★★
74、羅生門・鼻 芥川龍之介 文章レベル★★★
僕が純文学にハマるきっかけは杜子春でした。やはり、杜子春が好き、という子が大手塾の上位層にもけっこう多くて、「オレのチョイス、イケてるな」と思うことがありますw
朗読テープで塾の国語の時間に聞いたのがきっかけだったのですが、(橋爪功さんだっと思います)非常に臨場感がありよかったです。読書になかなかふんぎりがつかない子はそのようなモノでもよいかと思います。また、普段、ライトノベル的なものしか読めない子にも良いでしょう。
ここにあげた芥川龍之介作品はすべて初期のもので、まだ自殺(芥川は35歳で自殺しました)をほのめかす感じはありません。ですので、まだ小学生にも薦めやすいです。
やはり大正をはじめとする純文学家は自殺が多く、よくない流れを感じることはあります。僕はどちらかというと、落ちぶれてもダサくても無様でも最期の最期まで生き抜けよ、生き抜く努力をしろよ(いきてるだけで丸儲け的なヤツです)、というタイプなので疑問や弱さを感じることがあり、小学生に薦めるときはかなり慎重になります。
ただ、芥川龍之介の素晴らしいところは、その繊細さゆえの細やかで美しい文章です。やはりエゴイズムや深い罪悪感などの葛藤描写は読む価値が大きいです。
また、古典に題材をとっているのも面白いです。うちの中学では、かつて現国で芥川をやり、古文でその原典の宇治拾遺、今昔物語などをやる、という完璧なパターンがあり、より深く理解ができました。
ま、読破したいなら、太宰作品と同じく、高校生以降をおススメします。
75、山椒大夫・高瀬舟 森鴎外 文章レベル★★★☆
さて、森鴎外をやはり一つはすすめておきたいと思います。夏目漱石や森鴎外は、芥川のような暗い部分がなく、やはり良いですね。また軍医としても有名なので、医学部志望者は読んでもいいのではないでしょうか(笑)
森鴎外は、ドイツに渡り医者の修行をしているのですが、そこで金髪美女におせわになったのか、小説にも良く出てきます。また、当時のインテリを思わせるドイツ語や英語が頻繁に作品に出てきて、若干小学生は読みにくいかもしれません。また、完全な文語体のものもあり、「ま、読まなくていいかな」と思う短編もあります。
面白いのは、山椒大夫や高瀬舟で、文語体の作品は飛ばして、すこし年齢が上になってから読めばよいと思います。そういう意味では代表作舞姫も中学以降になったらおススメする感じです。
僕が好きなのは、親に会いにいく途中で人さらいにさらわれた母と姉弟を描いた「山椒大夫」です。さらわれて、山椒大夫という男に買われた姉弟は、数年を過ごすうちに脱走を考えるのですが、それは姉の命をかけたものなのでした。
森鴎外の作品は、純文学にありがちな風家描写や山ナシでまったりしたものは少なく、しっかりオチのある短編が多く、楽しく読めます。
76、岳物語 椎名誠 文章レベル★★☆
ここからは少し現代作家を紹介したいと思います。岳物語は一時、中学受験にもでまくった作品ですね。
椎名誠と実在の息子、岳くんとのふれあいが書かれた作品です。個性的で活発な岳君とその父親とのふれあいがなかなか軽妙で面白く、楽しく読めます。心情描写もたくみで、小説における気持ちの変化にもなれることができるでしょう。ま、長さ的にも、薄くて読み易いですね。
気に入ったら、「続・岳物語」も読むとよいですね。今、岳君もアラフォーになってるはずですね(笑)
77、そこに僕はいた 辻仁成 文章レベル★★☆
高校のころ、僕は辻作品にガンガンにはまり、僕がバンドでベースをとるきっかけにも少しなった作家さんです。今はなんか変人扱いされたりしてますが、僕はその辺も含めて面白い作家さんだと思います。
辻さんは引っ越しの多い少年時代を送っていて、そのころの経験からビビッドな心情描写がたくさん書かれています。岳物語と同じく、随筆調なので、心情もわかりやすく文学の入り口としては良いですね。
この続きに「そこに君はいた」「ガラスの天井」「音楽が終わった夜に」と随筆集を読んでいくと、辻さんの青春がよくわかります。僕はほとんどすべてを読んでいます。(冷静と情熱の間くらいから読んでないですが)
一時は中学受験にも良く出ました。ま、男子にはちょうどよい作品かもしれません。バンド少年にもガラスの天井はおススメですね。辻さんの純文学作品といえる「海峡の光」や「クラウディ」などもなかなか面白いです。
78、僕は勉強ができない 山田詠美 文章レベル★★☆
これは高校生のころにもっともハマった作品です。ここから、山田詠美作品は当時刊行されていたものは、ほとんど読んでいました。
高校生の秀美くんが、いわゆる勉強などの価値とは違うものを示してくれる青春小説です。タイトルにひかれる方も多いと思いますが、その期待は裏切りません。
この作品の後半に秀美くんの小学生時代の話があるのですが、それが非常に僕の人生に何度か登場し、印象深いものとなっています。小学生時代にもここを読んでいたのですが、なんとセンター試験本試にこれが出まして、「よっしゃ」と思ったものの一転、解答はボロボロでした(笑)
知ってる文章が出ても、点数には反映しないことのよい例ですね。ですので、この痛い経験からもw、入試に出そうな本を読むのではなく、素養の方を育てる視点で本を選び、読んでもらいたく思います。
79、小僧の神様・城の崎にて 志賀直哉 文章レベル★★★
また昭和に戻ります。志賀直哉は、この名前の雰囲気ですと難しそうなイメージですが、読んでみれば現代語ですし、流れるような日本語で、しっとりとして良い文体です。
粋なお金持ちに、粋な感じで寿司をおごってもらうという「小僧の神様」、都会を離れ、一人旅館に佇み作品をねる「城の崎にて」など、人情や人の温かみ、江戸的な「粋」が作品に現れます。作風が暗くないのも良いですね。
なんとなく気に行ったら、代表作「暗夜行路」に行くのも良いでしょう。
80、金閣寺 三島由紀夫 文章レベル★★★☆
さて、本日最後にまた暗い作品を持ってきてしまいました。まあ、ショッキングな最期を遂げた三島ですが、やはりその文体の美しさ、力強さ、繊細さは、一度味わってほしくはあります。
僕も少しずつ三島を読んでいますが、ま、狂ってますねw この作品も金閣を燃やそうとある日から思い続ける坊さんの話なのですが、幻覚をみたり、衝動的な行動に走ったり、まーすごいです。そういう意味では面白いかもしれません。強烈でないと、心には響かないものもありますのでアーティスト志望の方ならば、読んでみるのも良いと思います。
ま、高校生くらいになってから一度は読んでみてほしいですね。そういう意味では、金閣寺が分かり易いとは思いますが、「仮面の告白」や「潮騒」も良いです。
やはり純文学から受ける感動は、エンタメ系のものから受ける感動とは全く別種であり、心が揺さぶられるものに当たることがあります。ものすごく濃い、重いものに、どこかで、できれば夏休みなどに触れてみてはいかがでしょうか?
いつも読んでくださってありがとうございます。
このオススメ100タイトルの判断基準は、子供の「視野を広げ」「思考力を深め」「エログロナンセンスの少ないもの」といった感じになっています。ご活用いただければ幸いです。
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お問い合わせいただいたメールに返信はできていますでしょうか? 迷惑メールとして処理されてしまって届いていないということがたまにあります。僕はどんな内容でも、1週間の間に必ず返信は行いますので、1週間経ってもこない方はお手数ですがもう一度しっかりタイトルなどもいれて送っていただければと思います。問題集に載っているアドレスの方にだしていただいても構いません。
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