子供を伸ばすオススメ読書100タイトル vol.10 SF編②(過去記事再編版) | お受験ブルーズ

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現役講師がお受験を通じて世間を眺めています。
大手塾勤務→独立→プロ家庭教師と変わって来ました。(作曲・編曲、戦国シンフォニックメタルバンド「武士メタル~Allegiance Reign~」のベーシストとしても活動しています。どっちも本気です)

 さて、このおススメ100タイトルも半分を過ぎました。一回あたりに気合を入れ過ぎて、いつもの記事の倍くらいの時間をとりながら書いています。

 今日はSF編の2回目です。とりあえず、家に置いておいて損はない本をあげています。

 日本ではSFの本が90年代中盤あたりから急激に売れなくなってきているそうです。それは世の中がリアルなものを求める思考になったから、というのがハヤカワさんなどの分析だと聞いていますが、僕は子供たちの様子などから考えて、ちょっと違うのかなと思っています。

 1つは、子供たちの読解力が少し落ち気味であること。ゆとり世代を境にして、やはり少し子供時代の読解力が落ち、子供っぽいものしか理解のできないティーンが増えたと感じます。もちろん、ネットの影響で妙なところはマセていたりもするので、理解力はないけど大人の世界は見聞きしているリアル志向であり、それにエンターテインメントが合わせてしまった面があると思います。

 また、もう1つは、海外のSFと違い、日本のSF作家の作風はファンタジー色がかなり強かったために、リアルさを追求する世相から置いてけぼりを食らった面があると感じます。
 すると、書いても売れないので、いわゆるハードSFと言われる「小難しいけど新しい発想のあるもの」を書ける作家が減った、もしくはミステリーやライトノベルなどに流れたと感じます。これはハヤカワ、創元をはじめとする出版社側も若者にアピールすることを怠った面があると思います。

 漫画やゲームなどでもそうですが、国内にレベルの高い作家がいない分野は必ず廃れていく様相があると思います。

 若者の理科離れも同じくらいの時代のことで、無関係とは思えません。寂しいことです。一応、今日の紹介には日本人作家も入れておきました。海外の面々とくらべて、「やわいな」感がおわかりいただけると思います。できることなら、ぬるいものは通らず、いきなりイーガン(前回に紹介)かクラークに行ってほしいところです。

 今日紹介する、クラークやアシモフといった作家は、40年以上も前に、今の世相をかなり正確に予想できていた面があります。もしくは、クラークたちの夢想した未来に人間社会が寄っていったのかもしれません。
 そういう意味でも、SFはある意味、未来を創る側面、未来を示す側面があるのです。読んで損はありません。

 巨匠たちの発想は現代からみても依然として個性的であり、まだまだ新鮮味を失ってはいません。理系を志望する、もしくは、将来どうするか迷っている方は、今日紹介するものなどを少したしなんで、内なる世界を広げてみてはいかがでしょうか。


<子供を伸ばすおススメ読書vol.10 SF編②>

46、アイロボット アイザック・アシモフ 文章レベル★★★

 



ロボット、という単語は、カレル・チャペックという人が初めて使ったのですが、それはいわゆるバイオオートマタといいますか、いわゆるロボットとは違う感じでした。
『ロボット』という単語とイメージを浸透させ、概念を提唱したのが、このアイザック・アシモフだと言われています。日本でも「アシモフ」というロボットがあったり、彼の『ロボット三原則』の話がいろんなアニメで出てきたり、未だに影響力のある作家です。

アシモフの好きなところは、基本ミステリー作家でもあり、アシモフ自身が生化学者でもあり、読み易さとリアルさを兼ね備えている点です。この作品でも短編集なのですが、ロボット三原則を逆手にとったような、ミステリーの構造も見え隠れします。

この作品は、アシモフが設定したロボット三原則をいきなり破っているように見えるロボットが多数出てきて、なぜロボットが三原則に反しているのか、をロボット工学者スーザンたちが謎解きしていく、という内容になっています。
鉱石ロボットなのに鉱石を一つも持って帰ってこない、とか、セレンという物質をとりにいったのに、ずっと走り続けているロボットとか(セレンがなくなると人間は死ぬ)。その何故には、必ず哲学的な内容や、どきっとさせられるものがあります。

この作品が1950年のものだということに非常に驚きます。いわゆる人工知能によって世の中が調整されている描写なんかもあったりして、今の時代にも十分通じる作品になっています。

この作品が気に行ったら同じくロボットが活躍する「鋼鉄都市」、純粋なるミステリーとして面白い『黒後家蜘蛛の会』シリーズをオススメします。知性と発想を持ち合わせている素晴らしい作家ですので、一冊くらいは読んで見ることをオススメします。


47、星を継ぐもの J.P.ホーガン 文章レベル★★★

 

 

この作品は壮大な惑星規模のミステリー作品です。SFとしても当然面白く、荒唐無稽に思える現象もすべてしっくり腑に落ちるように出来ています。

月で死体が発見され、それが「5万年前」の死体であると判明します。でも、そのころ人類は存在しておらずどういうことなんだ? と。遺品分析から、わけのわからない矛盾だらけの事実が次々と判明していきます。もっていた携帯食料(水生生物)が明らかに地球産じゃない、などどんどん謎のスケールがアップしていきます。

あわせて木星の衛星ガニメデで発見された事実から更に混迷を深めます。そこから、太陽系のなrたちや月の謎、太陽系にかつてあったとされる謎の惑星(ミネルバという名前がつく)の存在にまで話が及び、地球人類がどうやら、その惑星に生物を運んでいたのでは? という太陽系規模のミステリーに発展していきます。

実際に、火星のすぐ外側の起動には小惑星群があり、かつては惑星があってそれが砕け散ったのではないかと言われています。月の裏側がなぜ見えないのか、裏側の構造の事実など、どこまでもリアルにホーガンの分析が入り、「まじであったんちゃう?」と思わせる説得力のある内容です。そういえば、オカルトの世界では月で人の遺体が見つかった、なんて話もあったりはしますね(笑)

続編として『ガニメデの優しい巨人』などの巨人シリーズを読み進めるとさらに深まっていけます。


48、幼年期の終わり アーサー・C・クラーク 文章レベル★★★☆

 

 

 


これは押しも押されもせぬSF界の超名作ですね。個人的にはクラーク作品ではもっとも好きです。話的には、映画「インデペンデンス・デイ」とほとんど入りが同じです。(もちろん、クラークが先)

ある日、いきなり巨大な宇宙人の空飛ぶ円盤が地球の主だった首都の上空に現れます。「オーバーロード」として、人類に働きかけ、社会を次々と変革していくのですが、なかなか人類の前にその姿を現しません。「50年後に姿を表す」という約束をし、現れた宇宙人は、地球人にとっては、あってはならない姿なのでした。

徐々に宇宙人たちが地球に来た目的が明かされ、地球人類は「幼年期に過ぎない」こと、成熟せねば滅びてゆくことなどが明かされていきます。勝手にオーバーロードの宇宙船に乗り込んだ人なんかもいて、お話としても面白いです。

地球人類に対する課題や、示唆、文明への考察、いろいろなものが含まれるとんでもない作品です。


49,2001年宇宙の旅 アーサー・C・クラーク 文章レベル★★★☆

 



またクラーク作品です。これはスタンリー・キューブリック監督とのコンビで映画化され、世界中に大きな衝撃を与えた作品です。映画と小説版があるのですが、当時は同時進行だったみたいですね。

いわゆる宇宙旅行モノではあるのですが、その宇宙船につまれた「HAL」というスーパーコンピューターが意思のようなものを持ち、一見すると人間のような感情をもったのではないかと思わせます。そのために、エラーがあるとして「止めよう」とした乗組員をHALは殺してしまいます。そこから、緊張感あふれる宇宙飛行士とHALとのやり取りが描かれます。

なんとかHALの思考部を停止させた主人公は、航行の真の目的である「モノリス」の存在を知ります。モノリスとは、生命を産み育てる存在として度々人類の前にあらわれている未知の存在なのでした。主人公はモノリスと接触し、未知なる存在へと進化していきます。

もちろん、映画を先に見ても良いですが、映画はリアリティをトコトン追求している分、やや冗長な部分があります。小説版はテンポもよく、オススメです。訳の分からない部分もありますが、なんとなくわかればいいと思います。

 2作連続クラークですが、やはりクラークは全作読破しても良いくらいのものすごい作家です。一応、日本では「クラーク、アシモフ、ハインライン」が3大SF作家と言われています。が、やはりクラークが最も造詣が深く、影響力の強い作家だと思います。

 自身も物理学の論文を出す先進科学者であり、軌道エレベーター構想やタッチパッドによる端末(iPadですね)など、今の人類には、クラーク発想のものが多数あります。クラークを読んでいれば、これからの人類のことも少し見えてくるでしょう。

 『2010年』『2061年』などこのシリーズは続きます。ぜひとも全部読んで欲しいところです。手記なども出版されていて、それも興味深い内容が盛りだくさんです。
すでに絶版になってしまった名著などもあり、悔しい限りですが、僕もいつかはすべて読もうと思っています。


50、果しなき流れの果に 小松左京  文章レベル★★★

 



日本のSF作家の作品がやっときましたね(笑) 日本では「小松左京、光瀬龍、筒井康隆」が3大SF大家だと言われています。が、この中では、SF作家としてすごいなと思わせるのは、ダントツ小松左京さんです。光瀬作品も好きではありますが、SFとしては紹介しにくいですかね(笑)

日本のSF作家の特徴はこのあとの星新一さんもそうですが、「文系っぽい」ということなのです。(星さんは農学部ですが)日本人のハードSF、というのは有名作品ではあまりないですね。

これだけでも日本のSFの傾向性が分かりそうなものです。やはり、ややファンタジー色が強いのですが、その分、読みやすくなっていますし、かえって本質に迫っている部分も小松さんにはあります。日本の理系は文章が下手なのかもしれませんね。作家性がある人が少ないのでしょうか。

この作品は壮大です。イーガンの「ディアスポラ」の日本人版といった感じです。より時空感が強いです。ディアスポラよりは、訳がわかりやすいです(笑)

中生代の地層から発見された不思議な「砂時計」の謎を追うことになった主人公たち。それが見つかった古墳を調査することになるのですが、やがて全員が謎の変死、失踪などおかしなことになります。
主人公の野々村は、古墳から繋がる時空の歪みに落ち込み、行方不明になってしまうところから本格的に話は始まります。1部は普通の考古学モノみたいなノリなのですが、2部から宇宙、時空を舞台にした壮大な物語になっていきます。

 小松左京さんといえば、最も知られている小説が「日本沈没」で、こちらもオススメです。地震への対応が東日本の震災を思わせ、「予言者?」と思わせるくらいのリアルさです。実は、この日本沈没は、この作品と世界がつながっています。

 これと合わせて、「復活の日」も読むことで、小松左京世界をどっぷりと知ることができます。やはり、どこか「霊感」のようなものを感じさせるリアルさをもった作家さんです。

(追記 2020年 復活の日は、感染症などで人類がほぼ絶滅する話で、コロナ騒ぎと結びつけると面白いです)

51、宇宙戦争 H.G.ウェルズ 文章レベル★★★☆

 



ウェルズといえば、ヴェルヌとならんでSFの父と呼ばれる人です。かなり昔の作品なので、クラークやイーガンのようなリアルさは無いのですが、やはり良作です。

これは、火星から侵略者がやってきて、人類がどう対応していくか、というイギリスを舞台にした作品です。火星人といえば、タコの化物みたいな感じを思い浮かべると思うのですが、これはウェルズの発想から来ています。

ウェルズ作品は「タイムマシン」などもオススメですが、こちらはファンタジーみたいな感じで読むと良いです。未知なる存在にたいした時に、どう人類が反応するのか、はやはり面白い命題です。ま、薄いし、すぐ読めると思います。


52、ボッコちゃん 星新一 文章レベル★★★

 


さて、僕はあまり星新一さんのショートショートは読んでいないし、薦められたりして読んだものもあまりピクリと来たことは無いのですが、やはり読んだ中でも、これは推しておこうと思います。

短編でさっと読め、オチがあって、教訓的なものから、面白いものなど様々な作品があり、無理なくどの年代でも読むことができます。
表題作は、アンドロイドに恋する男性を描いた悲恋な? 物語です。
短編集ですので、笑えたり、怖い話なんかもありますし、面白いです。よいSF作家は基本的に短編がうまい方が多いですね。たくさんショートショートは出ていますので、図書館などで借りて乱読してくれても良いです。

 ただ、これを読書のスタートとしていただくのは良いのですが、SFのハシリとしてはインパクトはないです。これがSFの本流だとは思わないでほしいですね。この辺が、日本のSF観を誤解させる要因になっていると思いますので。
 
 できれば、クラーク、アシモフ、ハインライン、イーガンあたりをまずはしっかり読んで欲しいと思います。


 ふぅ、意外とこの本紹介はエネルギーを使いますね。この中から、何かしらでもピンと来たモノに手を出していただけると、必ず子供たちにはプラスがあると思います。
 日本からクラークレベルの作家が生まれることを僕は切望しています。そのためには、僕がよい刺激を与えられる存在でい続けなければと思う部分もあり、これからも研鑽を続けていくつもりです。

 いつも読んでくださってありがとうございます。

このオススメ100タイトルの判断基準は、子供の「視野を広げ」「思考力を深め」「エログロナンセンスの少ないもの」といった感じになっています。ご活用いただければ幸いです。




お問い合わせいただいたメールに返信はできていますでしょうか? 迷惑メールとして処理されてしまって届いていないということがたまにあります。僕はどんな内容でも、1週間の間に必ず返信は行いますので、1週間経ってもこない方はお手数ですがもう一度しっかりタイトルなどもいれて送っていただければと思います。問題集に載っているアドレスの方にだしていただいても構いません。


5年生や受験学年でない方のコンサルも受け付けております。また、遠方の方も交通費さえ頂ければどこにでもいきます。(九州や群馬、栃木、大阪、奈良、兵庫、京都などもありました)

教え子の医学部留学生がブログをはじめました。医学部にご興味のある方はどうぞご覧になってください。医学部生のきつさや海外生活なんかの赤裸々なところがわかるかもですよ、むふふ。
こちらです。
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