幼いころから昆虫関係や電車関係など少年がはまりそうな読書をことごとくしてきた僕ですが、はじめていわゆる大人が読むような「活字のちっさい本」を読んだのは、中1の時でオヤジの本棚にあった講談社の三国志シリーズです。
やはり、生涯で最初のがっつりした読書を何にするか、が結構大事だなと思っています。できれば小学生の6年くらいになったら、もう大人と同じ活字形式で読めばいいと思いますし、いつまでも青空文庫なり青い鳥文庫ってのもな~、とおもいます。
いろんな子に最初の読書としてすすめるものの、僕自身はじつは児童文学シリーズを読んだことがありませんでした。(今はハリポタとか読んでますが)
もちろん、最初ですから、なかなか進まなくて大変なのです。僕は中1のころはスケジュールにまだ余裕があったので、寝る前に30分から1時間ほど三国志を読み進めて寝ていましたが、ほんとに、言い回しなんかも難しく(当時はそう感じた。吉川英治さんの文章は難解ではないです)、遅々として進みません。8巻を読むのに、半年以上かかっています。
でも、それでもちょっとずつ読んでいくうちに、だんだん読めてきて、スピードが速くなり、理解力も増してくるようになります。まさに、日本語で「わかる」ことが増えます。だんだん、理解できる日本語が増えているのに気づいてくるのです。
これこそが、読書の最初のわかりやすい効果かなと思います。すべての教科の土台となる能力になったことは疑いがありません。実際、中1の6・7月くらいから読み始めたと思うのですが、そこから僕の成績は(単に気合を入れたということもありますが)、上昇カーブを描いていくことになります。
これがラノベやその他の娯楽小説だとこうはいかなかったと思うのです。こちらの理解力に「あわされて」しまっているので、ハイレベルになっていく要素が極めて少ないからです。
最近の芸事は、いわゆる作品レベルをユーザーやファンに合わせてばかりで、作者側に引っ張ってくる強烈な作品が少なくなったと思いますし、じゃないと売れないという先行き不安な時代になってきていると思います。
昭和に比べて日本人平均の理解力が落ちているのでしょうか? 僕はそうは思わないのですが。
だからこそ、ここでは、しょっぱなからグレッグイーガンなどをおススメしていますし、これからも普通に読むにはややきついものが多いかもしれません。それは上記のような効果を狙ってのものです。
今日のモノもラノベや娯楽小説に慣れきってしまっていると、少し理解がしにくいかもしれません。
<子供を伸ばすおススメ読書100タイトルーーvol.7 歴史人文編①>
31、三国志 吉川英治 文章レベル★★★
(リンクはkindle版です)
はい、上記にも記しました三国志です。中国では文字(書物)文化が古くからしっかりと発達していて、紀元前のものも他の国に比べ多くのものが残っています。三国志自体は西暦100から300年くらいまでの話で、ゲーム、小説、漫画と日本でもいろいろなメディアでとりあげられています。
この吉川英治さん作品は、主に、魏・蜀・呉と主に出てくる三国のうち、蜀の劉備玄徳視点で主に描かれています。というのも、三国志には、史実を元にした文献としての三国志と、「三国志演義」として後の世代によってエンタメ化された文献の主に2種類があり、そのミックスで書かれているからです。
確かに、趙雲子龍という武将がでてくるのですが、玄徳の奥さんを抱えて単騎で千人切りに近いことをしながら死地を脱するというとんでもない話もちょくちょく出てきます。
やはり面白いのはなんといっても男心をくすぐる英雄たちの物語です。それぞれの将軍が人間臭く書かれていて、吉川マジックともいうべきかっこよさがあります。劉備は人徳者、軍師諸葛亮孔明は先見の明をもつ天才、武勇に富む張飛やちょっと思慮深いところもある関羽など、蜀の将軍たちは皆、魅力的に描かれています。男子として心踊るものがあります。
やや曹操が単なる悪い奴にしか思えないところもありますが、その辺は漫画「蒼天航路」を読んで補うとして(笑)、やはり多くの登場人物、魅力的な人物、義や道のあり方、国政を執り行うものの心構え、など多くの要素を含んだ素晴らしい作品です。三国志にはいろんな作品があり、その後触れたりもしたのですが、吉川英治作品でよかったと思います。
横山光輝さんの漫画版もいいのですが、やはりここは小説版にしてほしいですね。教え子の中には1,2ヶ月で読んでしまった子もいます。8巻もある長編を読みきった時の達成感もこれまたすごいです。吉川英治さんだと、宮本武蔵なども良いですね。
僕はこれ以外に「新・平家物語」を読んでいます。ただ、20巻くらいあってきついので途中で挫折しています。(というかそのころには他にも読みたいものがいっぱい出てきた)
僕はこれを読み終わったあと、山岡荘八さんのシリーズにも少し手をだしています。
32、燃えよ剣 司馬遼太郎 文章レベル★★★
これは幕末の新撰組モノですね。僕は漫画「るろうに剣心」の影響で手を出しています。
司馬遼太郎さんの文章は小学生でも読みやすいです。史実よりもキャラがエンタメ的に固定されていて、そこが面白いポイントなのかもしれません。例えば、沖田総司が薄幸の美少年剣士として描かれていますが、実際の写真を見ると、全然美少年ではないです(笑) 司馬遼太郎さんの演出だったと言われていますが、影響が強すぎて、日本人なら沖田といえば美少年な感じがするのではないでしょうか。
いわゆる司馬史観と言われる歴史観の問題がよく言われていますが、この作品だけを読んだだけでは特に影響はありません。確かに、上記の沖田の例でもあるように、司馬遼太郎さんはどちらかと言うと「作家」であり、史実を論じる学者ではないので、そのあたりの冷静な判断をもちフィクションの歴史である、という認識を持っていればいいと思います。
作品がはやりすぎて、日本人の多くが「幕末はかっこいい」「大東亜戦争は悪だ」という極端な司馬さんの主観に影響を受けすぎたことがこの問題の論点だと思います。どちらも戦争(片方は内乱か)なのですから、一定の悲惨さがあることは当然です。歴史認識は、学校の勉強と資料からくる自身の判断に重きを置きましょう。(学校の勉強のほうがこの影響を受けている可能性もありますが)
歴史小説の第1歩としては、非常に読みやすい作品です。「坂の上の雲」なども良いです。ここから歴史に興味を持ち、どんどん得意な時代を増やしていくのも良いでしょうが、司馬遼太郎さんの作品の感じをそのまま試験で書くと、間違ってしまうかもしれません。
33、物語日本史 平泉澄 文章レベル★★★
司馬史観とは全く異なる、道徳観を重視した素晴らしい、哲学ある日本の見方をされています。皇国史観と称されることもありますが、平泉さん自身がそのように標榜したことは無いそうです。内容を読むとわかりますが、「なぜ日本が今のような形なのか」が無理なく、わかりやすく書かれています。いかにこの人自身が日本を愛していたかがよくわかります。
というのも、この本は昭和の子供たちに向けて書かれた本なのです。ただ、今の子供ですと、塾の上位の子しか意味が理解できないかもしれません。短歌からの考察や、正当性なき支配者の末路に関する厳しい視点など、大きな視点、天皇の意味、日本が理想としてきた国家のあり方など、現在でも通じる、むしろ現代に欠けてしまったもの、が語りかけるように書かれています。
むしろ高校生以上、大人が読むべきかもしれません。3巻構成ですが、薄くて読みやすいです。
このラインナップを見てもわかるように、僕は基本理系ですので、同じジャンルでも相反する立場の本を複数読んでいることが多いです。それが科学者的なものの見方の基本だと思っていますし、すでに癖づいてしまっています。
複数の立場を理解し、若輩者を自覚しつつ、僕自身が偏り過ぎないような視野を構築して、子供たちにもっともプラスなものをススめようと思っています。右翼でも左翼でも、運動家でも無いですからご安心を(笑)
34、現代語古事記 竹田恒泰 文章レベル★★★
旧皇族といわれる竹田恒泰さんの本です。後で出てくる、漫画家の小林よしのりさんがその著書で「皇族から離れすぎていて尊敬できない」とも言っていたのですが、この人の本を読めば、日本に対して日本が単純に好きなんだなというのがわかります。「朝まで生テレビ」という番組に出演されていて、その語り口が真摯であり、「たぶん大丈夫な人だ」と判断したことが手にとったきっかけです。
古事記関連の本は好きすぎて、数冊読んでいるのですが、妙な曲解や思い込みもなく、中でも一番良かったし、子供たちにも安心して薦められます。
いわゆる日本の神話である古事記物語を現代語にしていて、解説などもわかりやすく、時に俗っぽく書かれていますが、それがまたわかりやすさを増しています。塾の講師に向いているかも?
この後にも出てきますが、神話関連書籍は洋の東西を問わず、僕はガチです。高2くらいのころ、理系文系の選択の時に、考古学者と生物学者のどちらになるかを本気で悩んだこともあるくらいです。
多分、出版されているものでメジャーなものはほとんど抑えています。読むうちに、日本でのほとんどのこれらの関連書籍は数冊の本に依って書かれていることに気づいています。
また、神話を読むには、こちらの「センス」のほうが大事であり、より原文に忠実、紳士な対応をしている本を選ぶようにしています。スピリチュアルなものや、偏りがあるものはオススメしません。どう受け取るかは、こちらのセンス次第であり、それを磨いていくべきだと思います。
また、子供たちにもしっかりと建国神話くらい教えておいたほうが良いと思います。そこには、日本人の失われつつある精神性や、自然観、人物観など多くの示唆があります。それは、決して忘我的な天皇礼賛などではありません。
日本を真(芯)から好きになるのに、必要なのです。
自分の国が好きだというだけで「右なの?」と言われるような国は危険なのではないでしょうか。百人一首も、一つ一つを解説することに意味があり、味わいがとんでもなく深いです。百人一首が好きなら、このあたりの本も読むべきでしょう。
35、大東亜論 小林よしのり 文章レベル★★
さて、来てしまいました(笑)漫画なのですが、平気で薦めてしまいます。かつて漫画「おぼっちゃまくん」で一世を風靡した小林よしのりさんですね。
この後のタイトルにもいずれ出てきますが、僕が社会に対して考えるきっかけをくれたのが、この小林よしのりさんの「ゴーマニズム宣言」シリーズであり、このゴー宣スペシャル系のものは本当に勉強になることが多いです。僕はほとんど読んでいますし、東大入試の当日にもこのシリーズを片手に待ち時間に読んだりしています(笑)
小林さんはその昔、オウム真理教に殺されかかったり、右翼のような扱いを新聞でされたりと、世間一般(主にネット?)には、危険人物のような扱いをされていることがあるのですが、そこはしっかり作品を読みこめば、そういうのはすべて吹っ飛びます。ほとんどが角度の違った批判であることがわかります。そういうレベルで書いてはいません。
小林さんの時に過激な意見はどうあれ、このシリーズを読むと「俺はこう思うな」という大事な「自身で思考する」という習慣が残ります。それが何よりも今の学生には大きいです。
常々思うのですが、人が何かを真剣に考えるには、「思っていたことと全く違うこと」を平気でどかーんと突きつけられる作業が必要だと感じています。そういう意味でも、読書はクスリばかりではダメなのです。時に毒も喰らわなければ。その毒さえも、良いバランス感を得るための契機とすれば良いのです。そして、その毒も、作家が真剣に訴えているものでなければつまらないです。
さて、この最近出ているこの『大東亜論シリーズ』は、明治の文明開化期の英雄たちの物語となっています。当時は開国したばかりで、日本が近代化を急速に遂げる時代なのですが、民主主義とは名ばかりで、国会すらもありません。そのような時代に、政治に対して不満を抱いたり、不安を抱くならば、一体どのように意見を通せばよいのか。
国を真剣に憂うとはどういうことなのか、が巨闕「頭山満」を中心に多大な熱量を込めて書かれています。やはり日本の行く末を真剣に憂うならば、「命をかけて」行動するしかない時代なのでした。不自由な時代だからこその、真剣な生き様が描かれています。
果たして、今の政治家たちが、ここまでの熱情を持って仕事をしているのでしょうか。いや、僕ら自身、ここまで真剣に国のことを考え、全体視できているのか、自問自答してしまいます。
漫画とはいえ、結構な情報量があります。昔のシリーズは一晩で読み切る気合があったのですが、最近は無理になってきました(笑)
何人かの子にこのシリーズを読んでもらってはいるのですが、どうもある程度知能的に熟達した子にしか響かない(し、読みこなせない)ようです。また、素直さといいますか、面白いと思えるには資質が少し必要なのかもしれません。
ただ、その資質は、国立大学に直結します。
でも挑戦する価値は非常にあります。ちゃんと読めば、難解ではないはずです。
他のシリーズの面白そうなものからでもいいです。
うーん、ここまで書いて、誰もついてこれんかったらどうしよう。たまに、「先生の感性にはついていけません(笑)」みたいなことを言われます……。
ちょっと待ってくれ、きっと君にも理解でいるはずなんだ。僕と同じくらい読めば。そうさ、まずは反対意見のものも必ずパッケージで読むようにして、月に10冊くらいでいいから読めばいいんだよ。
このオススメ100タイトルの判断基準は、子供の「視野を広げ」「思考力を深め」「エログロナンセンスの少ないもの」といった感じになっています。ご活用いただければ幸いです。
お問い合わせいただいたメールに返信はできていますでしょうか? 迷惑メールとして処理されてしまって届いていないということがたまにあります。僕はどんな内容でも、1週間の間に必ず返信は行いますので、1週間経ってもこない方はお手数ですがもう一度しっかりタイトルなどもいれて送っていただければと思います。問題集に載っているアドレスの方にだしていただいても構いません。
5年生や受験学年でない方のコンサルも受け付けております。また、遠方の方も交通費さえ頂ければどこにでもいきます。
教え子の医学部留学生がブログをはじめました。医学部にご興味のある方はどうぞご覧になってください。医学部生のきつさや海外生活なんかの赤裸々なところがわかるかもですよ、むふふ。
こちらです。
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