彼女はみずがめ座
。みずがめ座らしく、反抗心旺盛で、勉強は大嫌い、公立中学に通っていたのですがまったく勉強についていっていませんでした。どんな先生にも反抗し、どこの塾にいっても成績はあがりませんでした。そんな彼女がうちの塾に流れ着き、僕が担当になり、個別指導という形で指導がはじまりました。僕は一目見た時から「一筋縄ではいかない」と覚悟。まずはほとんど勉強をしろとは言わずに、彼女の話を聞いて、僕の率直な意見を言うというところから始めました。つまり、人間関係から作っていきました。半年たつころには僕のことを気にいってくれたのか、何かと学校や家のことを話してくれるようになりました。
そこで知った事実は僕に戦慄を感じさせるのに十分でした。彼女の家庭は父子家庭で、かに座
のお父さんから何かと厳しく管理されていたのです。時には暴力をふるわれ、体の目立たないところですが、アザがついていることもありました。彼女はそれを僕に見せてくれました。僕はそういうのが初めてでしたので、戸惑いました。そこからいろんな本を読んで勉強していくことになります。「きっと勉強をすればお父さんとも仲良くやれる」そう言って、そこから１年ほど、彼女はまったくわからなくなった英語や数学を一から僕らとやり直しました。結局、そんなに成績はあがりませんでしたが、まあ高校くらいはいけそうだ、くらいのところまでは持っていくことができました。
ある秋のころ、もうすぐ定期テストだったのですが、彼女はこれまでになく勉強してくれました。やはり愛情が足りないのか、ふらふらと変な遊びにはまったり、携帯の前略プロフにはまったりと大変でしたが、テスト前はそれこそ夢中で勉強してくれました。これはイケるかもしれない。僕は自分のやり方に確信と自信を持とうとしていました。
でもそこで事件は起こったのです。
また、父親に暴力をふるわれたのです。明け方まで叱られ、暴力をふるわれました。彼女はそのまま自分の部屋で勉強しているフリをし荷物をまとめ、トイレに行くとみせかけそのままトイレの窓から脱走。そのまま家出してしまいました。
僕はそのことを彼女のプロフを見て知りました。そのあと、お父様からも事情を電話にて説明されましたが、娘が家出してもなお体裁を保とうとする父親に憤りを禁じえませんでした。ですが、お父様も随分気落ちしているのはわかりました。
僕は感じていました。「このお父さんは病気だ」と。何度悪いと思っても愛する娘に手をあげてしまう。それはもう病気です。せめて手をあげなければ彼女は自我が保てたはずです。最初会った時はそれはもう、クラスメイトはいじめるし、言葉はひどいしでもう大変でした。でもじっくりと対話し、この世の中の真理？を語っていくうちに、やさしい子だとわかりました。
１年半経つころにはいじめをやめ、クラスの人気者にもなりました。それを彼女は「あんたのおかげだよ、こんな楽しく学校いけたことはない」とまで僕に行ってくれました。心底うれしかった。
その彼女が苦しみながら這い上がろうとしていたのに……！最悪のタイミングで最悪なことをしてくれました。僕は受話器をもちながら、怒りに手が震えていました。
家出をした彼女を待っていたのは都会の厳しい現実でした。 つづく
あ、長くなったので今日はこの辺で。この話は事実です。僕の教育に対する基礎になっている事件です。
いつも読んでくださってありがとう御座います。
