進化:コアラのマーチ | エホバの証人研究(ブログ)

エホバの証人研究(ブログ)

ものみの塔 (jw.org) に関わるすべての人に向けてひたすら情報を提供します。

$エホバの証人研究

オーストラリア - 不都合な真実


聖書に書かれている物語を文字通りの真実と考えると様々な問題に直面します。

その一つにオーストラリア大陸とそこに生息する特有の生物の存在があります。

聖書によると今から4400年ほど前に世界的な大洪水が神によって引き起こされ,その際に箱舟の中に集められた動物以外はすべて滅び去ったということになっているからです。

このノアの洪水物語を真実とみなすのであれば,今から4400年ほど前に中東のどこかに集められた雄雌二匹ずつの動物(あるいは清い動物は七匹)以外はすべて滅び,箱舟の扉が開けられてそこから出てきた動物によって現在の世界の生態系が出来上がったということになります。

つまり,現在オーストラリア大陸に生息する大陸特有の生物たちも今から4400年前に箱舟から出てきてオーストラリア大陸に渡って増え広がったということになります。

これにはどんな問題があるでしょうか?

まず時間的な要素があります。オーストラリア大陸はかつて南極大陸やアフリカ大陸につながっていたと考えられています。これは古生物の化石の分布地図によって判断することができます。
$エホバの証人研究
オーストラリアが完全に分離されて太平洋の孤立した大陸になると陸生動物は移動ができなくなるわけですから,聖書の物語を信じるのであればオーストラリア大陸の分離はノアの洪水(紀元前2400年頃)より後に起きたことにます。そうでなければ,コアラやカンガルーがアララト山を出てオーストラリアに住み着くことができないからです。

しかし,実際には大陸の下のプレートは現在では最大でも年間10センチほどしか移動しません。4400年かけても440メートルほどです。仮にノアの洪水後1000年の間に今の位置までプレートの移動が行われたとすると,かなりの頻度で巨大地震が発生し,それに伴う大津波が太平洋沿岸に押し寄せたことになります。

ですから古代において大陸移動のスピードが今よりも速い時代があるとしても,現在と極端に差があるということは考えられません。むしろ地質学的な証拠はオーストラリア大陸は少なくとも3800万年前には他の大陸から分離しており,その後,大陸独自の生態系を作りあげてきたと言えます。

長い年月の進化の証明


続いて,オーストラリア大陸の生態系に見られる進化の証拠について考えてみましょう。不思議なことにオーストラリア大陸に生息する哺乳類は全て「有袋類」です。有袋類は子宮内に胎盤がなく,早期に生まれた子どもを腹部に備えられている袋の中で育てることになります。ぼくたちが知っている哺乳類のほとんどは「有胎盤類」と呼ばれる種類に属しています。人間と同じように子宮内に胎盤を持ち,長期にわたって子宮の中で胎児を育てるのです。

ではなぜ,オーストラリア大陸の哺乳類はすべて有袋類なのでしょうか?ノアの洪水の物語と整合性はあるのでしょうか?動物学者のリチャード・ドーキンスは次のように語ります。
進化の存在証明 - リチャード・ドーキンス 387頁

これらの動物がすべてノアの箱舟から分散していったのなら、動物の地理的な分布はどのようになっていなければならないかを、考えてみてほしい。中心地-ひょっとしたらアララト山-から遠ざかるにつれて、種の多様性が減少していく何らかの法則性が存在するべきではないだろうか。それが私たちの目にしているものではないことは、あえて言う必要もないだろう。
なぜ、これら有袋類のすべて - 小さなフクロマウスからコアラやミミナガバンディクートを経て巨大なカンガルーやディプロトドンに至る幅をもつ - が、有胎盤類はまったくこないのに、アララト山からオーストラリアへ大挙して移住してきたのか?彼らはどのようなルートでやってきたのか?

$エホバの証人研究

4400年前の有袋類の大移動を合理的に説明できる人はいません。

先に説明した通り,古い地層の中からは爬虫類の化石がオーストラリアとオーストラリアに接面していた大陸から共通に発見されます。それに対してカンガルーの化石に関してはオーストラリア大陸でしか発見されません。オーストラリアでは現在のカンガルーとは姿が異なり3メートルの身長をもつカンガルーがかつて生息していたことを示す化石も見つかっています。これはオーストラリア大陸が他の大陸から地理的に独立し,長い時間をかけて独特の進化や絶滅を経験し大陸の中で多様な種を生みだしてきたという推論と一致しています。その期間は4000年では足りないのです。

$エホバの証人研究

この写真にあるフクロモグラ(オーストラリアにしか存在しない)がアララト山からオーストラリアに移動する姿を想像してみてください。しかもフクロモグラは目がないようなもので一日の大半を地中で活動します。大陸が分離する前にどれだけのスピードで彼らはオーストラリアを目指して進んだのでしょうか?

 

有袋類と有胎盤類の相似


オーストラリアの有袋類について調べていくとさらに不思議な点に気が付きます。例えばオーストラリアにはフクロアリクイと呼ばれる哺乳類がいます。ぼくたちが知っているアリクイのように舌は粘着質で覆われ、巣の中にいるシロアリを捕食するのに適しています。しかし大きな違いは彼らが有袋類であるということです。同じようにフクロモモンガ,フクロモグラなどは,それぞれモモンガ,モグラによく似た生態を持ちながら有袋類としてオーストラリアに生息しています。

写真:フクロアリクイ,フクロモモンガ,フクロモグラ。
$エホバの証人研究$エホバの証人研究$エホバの証人研究

写真:絶滅したフクロオオカミと現存するタイリクオオカミ
$エホバの証人研究$エホバの証人研究

さらに1936年には絶滅してしまった「フクロオオカミ」の存在があります。これはぼくたちが知っているオオカミと同じような姿や性質を持つ有袋類でオーストラリア大陸で繁栄していました。しかし人類がその地域に進出してから衰退し現在は完全に滅んでいます。

このような生物の相似は,原始哺乳類が分化してそれぞれの地域で独特の種が進化していくことを示す目に見える証拠となっています。

そして有袋類と有胎盤類が姿かたちが似ていても交配することができないという事実は,小進化の積み重ねがやがて個別の「種」に分化していくことを物語るものとなっています。

答えなくてはならない疑問


コアラは洪水後に家族を増やしながらオーストラリアに大移動を開始したのでしょうか?しかも大好物のユーカリの木を植えながら。あるいは神がノアの洪水後にコアラとユーカリをセットにしてオーストラリアに奇跡的にワープさせたのでしょうか?(ユーカリは近年になって人間の手で世界各地に広められましたが,本来はオーストラリア特有の種です)

さらにかつて大陸が繋がっていた証拠として出される化石(隣接した大陸で同種のものが見つかる)がいつも古代の植物であったり,古い形の爬虫類であったりするのはなぜでしょうか?そして同時に哺乳類など後から出現したと考えられる動物に限って大陸ごとに独自性が見られるのはなぜでしょうか?

ぼくたちは聖書のノアの箱舟の話を文字通りに信じるのであれば,これらの問いに答える必要があります。

もし現存する化石の証拠や動物学的証拠,地質学的証拠がそれと異なる答えを提出しているのであれば,それも真摯に考慮すべきではないでしょうか。