皆さんこんにちは。
室中です。
早速ですが、今回は少し前の保護情報と、現在の経過報告をさせていただきます。
2022年10 月 20 日のお昼過ぎ、JWC に 1 本の電話が入りました。
内容は、『トラックを運転していたところ、トビと衝突してしまい、現在保護をしているのだが、どう すれば良いか』とのことでした。
詳しくお話を伺うと、午前 10 時頃にバンパーに巻き込まれていることに気が付き、そこから救出したものの、飛ぶことができない様子だった為に、どうしたものかと、JWC にお問い合わせくださったそうです。
その後、メールで状態がわかるお写真を送っていただくと、右翼が変な方向に向いていて、少し出血もあり、翼を骨折している可能性が考えられました。
↑保護した方に送っていただいた写真です
保護した方にこちらの所見をお伝えすると、翌日、病院まで連れて来てくださることになりました。
次の日、レントゲンを撮ると、やはり右翼の上腕骨が裂けるような形で折れていました。
骨折をしてしまった時、人間の場合はギプスで骨折箇所を固定し、動かないよう安静にすることで治していきますが、動物の場合は難しく、特に鳥の翼の骨折の場合、外から固定しても、動こうとしてギプスがずれてしまったり、取れてしまうことが少なくありません。
そこで、今回は骨と骨をワイヤーピンで固定する手術を行い、内側から骨折箇所を固定することにしました。
幸い、保護されてきたトビは幼鳥とは言え、全長約 50 cmと、ハシブトガラスの成鳥より二回り程大きな体であることと、病院到着時の容体が非常に落ち着いていたことから、麻酔や手術に耐えられると判断し、急遽、その日に手術を行うことになりました。
手術は順調に進み、骨と骨の間に、14 cmのワイヤーピンを入れました。
※白いのが挿入したピンです。
内部の処置が終わったあと、胸部圧迫に細心の注意を払いつつ、外からも翼を固定する為にテーピングをしました。
手術は無事終わり、その後、麻酔からの覚醒も良好で、その日の夜にはしっかりと食事も行えていました。
術後に、容態が急変する恐れもある為、保温をして、室温管理を徹底しながら、痛み止めと抗生剤を餌に混ぜて与え、十分に栄養も取れるように、1 日 3 回ほどの強制給餌を数日間行いました。
初めは、警戒心からか積極的には餌を食べてくれませんでしたが、段々と食いつきが良くなり、 数日後には、餌を置いてからすぐに完食するようになりました。
一般的に、骨が癒合し始める(くっ付きだす)のには 1週間程かかりますが、羽ばたきに耐えられる程になるまでにはさらにかかります。とはいえ、あまり大事に固めたままでは、筋肉も弱まり、飛べなくなってしまう恐れもあります。
様子に気を配りながら、テーピングもこまめに巻き直し、常に外部からもきちんと固定されている状態を保ちました。また、この子にはかわいそうですが、今が一番大事な時期。極力動かないように、狭い場所で安静にしてもらいました。
手術から 2 週間が経過し、改めてレントゲンを撮ったところ、 ピンを入れた箇所の骨はくっ付いていることが確認できた為、固定していたピンを抜くことにしました。
その後は、傷口が塞がるまで(目安としてピンを抜いてから2週間)再びテーピングし狭いケージで安静にしてもらい、抗生剤の投与を行いました。
2週間が経過し、テーピングを外して、ウッドデッキ下のケージに移動してみることにしました。
急に開けた場所へ来た為、最初は緊張した様子でしたが、人がいなくなってしばらくすると、止まり木に止まって広い場所でのびのびとしているように感じました。
しかし、翌日の夕方、2回目の餌をあげに行くと、地面に疼くまるトビの姿がありました。
急いで駆け寄ると、手術を行った方の翼がぶら下がったような形で床に落ちていて、出血してしまっていました。
この発見から1時間ほど前の見回りの際には特に問題無かった為、その間に木から落ちて着地に失敗したか、どこかに翼を引っ掛けてしまったのではないかと思われます。
発見時は、ぐったりとして、軽度の貧血を起こしている様子でしたが、室内に移動させて傷口の応急処置をして安静にさせると、少しずつ落ち着き始めました。
病院でレントゲンを撮ると、再び右翼の骨がぽっきりと折れていました。
再手術のリスクも考え、一旦テーピングで外固定の上、室内の狭いケージで様子を見ることにしました。
10日ほど経過すると傷はすっかり塞がり、元気、食欲も回復して、生きた魚も足を器用に使って食べるようになりましたが、残念ながら右翼はほとんど動かなくなってしまいました。
最近は、保護当初に比べると体も一回りほど大きくなってきたので、ガレージ下ケージに移動することになりました。
ここは、怪我をしてしまったケージに比べると少し狭いですが、台と止まり木を設置したので、今まで見えなかった外の景色も見えるようになりました。
現在、移動してから1ヶ月ほどが経ちました。
餌は、生きた魚と買った魚を使用し、バランスを考えてマウスとウズラもあげています。
小さい魚、ウズラなどは丸呑みです……!
食欲は旺盛で、外が見られるようになってからは心なしか嬉しそうな気がします。
保護当初、骨折していた箇所は翼の付け根で、そもそも完治する確率は低く、このまま飛べないよりは万にひとつの可能性に期待し、手術を行いましたが、骨折の位置から中々綺麗な整復が難しく、トビ(命名:トン)はニ度目の骨折を起こしてしまいました。
せっかく、手術を乗り越えたのにも関わらず、このような結果となってしまったことを非常に悔しく思います。
今後の治療方針やリハビリについては、また獣医師と相談しながら、慎重に進め、できる限りのことをしてあげたいと思っています。
ということで、トビの保護情報と経過報告でした。
色々と保護が重なり、更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
これからも、トンの様子は引き続きブログやその他SNS(Instagram・Twitter・YouTube)でお知らせしていきたいと思います。
どうぞ、温かく見守っていただけますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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