JapanラグビーリーグONEは、東芝BL東京がタフなDFで埼玉WKに粘り勝ち | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 12月から始まって半年間、大いに盛り上がったかなと思えた、今年のJapanラグビーリーグONE。今季は、先のワールドカップで活躍した、海外のトップレベルの選手が多く参戦してきたということもあって、高いレベルの個人技なども見られたということも大きいであろう。また、各チームも勝ちにこだわって、激しい試合を展開してきたということもあったであろうか。

最後まで目の離せない、大熱戦だった東芝(赤)と埼玉WK(青)のファイナル

 

埼玉パナソニックワイルドナイツ 20(6−10/14-14)24 東芝ブレイブルーパス東京

 

 ラストプレーのホイッスルが鳴るまで、どちらにどう転んでいくのか、最後まで本当にわからない大熱戦だった。さすがに、今の日本で観られる最高のラグビー試合というにふさわしい内容のものだった。

 レギュラーシーズンを16戦全勝で抜けてきたのが旧パナソニックの埼玉パナソニックWKだ。対する東芝BL東京は14勝1敗1分けで、シーズン2位。その1敗は埼玉WKに喫したものだ。レギュラーシーズンの対戦は、36対24というスコアだった。戦力的には、やはりそのスコア差ぐらいあるという現実は否めないであろうと思っていた。

満員のスタンドに選手入場を待つ試合前

 どちらもトップリーグ時代には5度の優勝を飾っているが、東芝は90年代後半に全盛期を誇っている。埼玉はかつての三洋電機がパナソニックに吸収されて、パナソニック時代にもトップリーグを引っ張ってきた。そして、JapanラグビーリーグONEになってからも、初代王者となり、昨季も圧倒的な強さを示しつつも、ファイナルでクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れて準優勝となった。

 立ち上がりから、やはり埼玉が攻めこんで4分にPGで先制。なおも主導権を握る埼玉は、20分にも再びPGで追加する。⑩松田力也(伏見工→帝京大)という安定したプレスキッカーがいるだけに手堅い戦いでもあった。


安定したキックを見せていた埼玉WK松田力也(伏見工→帝京大)

 

 ここまで防戦気味だった東芝だったが26分に22mライン内のPKでスクラムを選択。ここで右展開してWTB⑭ジョネナイカブラ(トンガ、摂南大)が右中間に抑えてトライ。リッチーモウンガ(NZ)がゴールも決めて逆転。さらに34分にもPGを決めて10対6と東芝リードで前半終了。一見すると、ボール支配や敵陣への支配などでは埼玉が優っていたが、前半は東芝がよく堪えたと言っていいであろう。

 そして44分、後半に入って初めて敵陣へ攻めた東芝は22m付近から大きく右へ出して再びナイカブラが右スミに決め、難しいゴールもモウンガが決める。しかし、59分にPGが風で流れて外して、ここから流れが変わった。

 62分に埼玉はカウンターから大きく右へ出してゴール前混戦でFL⑥ベンガンダー(豪)が押さえる。ゴールも成功。さらに67分にもハイパントからWTB⑪マリカコロインベテ(フィジー)が持ち込み最後はSH⑨小山大輝(芦別→大東文化大)が押さえて逆転。ゴールも成功して3点差。

 あと10分少々、このまま埼玉が逃げ切ってしまうのかな…とも思えてきた。ところが東芝の気迫は素晴らしく73分、右タッチラインぎりぎりをCTB㉓森勇登(東福岡→明治大)が走り切って、最後は大きくゴール下まで回り込んでトライ&ゴール。結果的にはこれが決勝トライとなる。しかし、78分には埼玉がいい形で逆転トライかという場面。TMOの結果、その前にスローフォワードがあったということでトライならず。

今季参戦したモウンガ(NZ)の存在は東芝にとっては大きかった

 東芝スクラムで再開となったが、東芝にコラブシングがあって、埼玉ボールとなるが、厳しい場面を東芝DFが堪え切ってノーサイドとなった。東芝の勝因としては、タックルを一対一で確実に潰していっていたので、埼玉のオープン攻撃で余る選手を作らせなかったことが大きい。そして、22mライン内に入ってこられてからのDFも素晴らしかった。いわば、DFの勝利といってもいいものかもしれない。

 この試合のPOMは2トライのナイカブラが選ばれた。「どうしても勝ちたい」という思いの強かった東芝のNO⑧リーチマイケル(札幌山の手→東海大)は、悲願の日本一達成となった。東芝はトップリーグ時代から数えて14季ぶりの優勝となった。

勝利を喜び合う東芝ブレイブルーパスの選手たち

 また、この試合を最後に日本のラグビーを引っ張ってきたHO堀江翔太(島本→帝京大)は、この試合で現役引退を発表していた。「最後に負けてしまったのは残念だけれども、勝ち続けてきたことは誇りに思いたい」と締めくくっていた。

 この日は国立競技場に56,486人が詰めかけたと発表された。その満員の観客を十分に満足させてくれた好試合。改めて、ラグビーの魅力も示してくれたと言っていいであろう。 

 

試合前には、花火など派手な演出もあった