『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』という映画 | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 正式タイトルが長い映画である。『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(穐山茉由・監督/坪田文・脚本/大木亜希子・原作)という映画だ。番宣では略して『#つんドル』ということで紹介されている。タイトル通り、アイドルをやっていた女子が、倖せで充実した人生だと思っていたが、実は売れていなくて、生活にも窮していたという現実を認識して、そこからどう生きようかということを考えていくという話である。

 そのヒロインというか主人公を元乃木坂46に所属していたという深川麻衣という子が演じている。ボクは、そのアイドルそのものを知らないので、むしろ、先入観なしに観ていられたということはあったのかもしれない。

 映画としては、タイトル通りに、ひょんなことから赤の他人のおっさんと同居していくということになるのだ。そんな中で、何かが起きそうで実は何も起きない。ただ、アラサーの元アイドルという女子が、生活に窮して失意のどん底になったり、失恋したり、同じポジションだと思っていた友達が結婚して倖せそうだったりということを体験していく。まるで「ハワイへ行きたい」と、同じような軽さで「死にたい」などと口にしてしまう。

 さらには、そのおっさんの所有している軽井沢の別荘で人生観を話したりということ体験していく。そこで、新しい自分を見出していくのだ。

 そうこうするうちに、やがてそのおっさんのところから巣立って(というか、新たな生活の場を求めていくというか)いって、何度か失意もあった人生から立ち直っていこうとしていくのかな…というストーリーである。

 格別の距離感で、若い女子と同居するおっさん。ササポンという呼称となっているが、それを井浦新が、淡々と演じていく。先の社会的映画の『福田村事件』(森達也・監督)での朝鮮で教員をやっていて、それを辞して故郷へ戻ってきた元中学教員とは、イメージも設定も全く異なる役どころだった。

 それを、なんとも言えない味を出して「テキトーにね」何て言いながら演じてくれていた。自分の半分ほどの年齢の同居する女子に対して、説教するでもなく性的欲望を抱くでもなく、ただ淡々と、接していく。かといって、空気のような存在かというと、それよりは多少なりとも影響力はあるんだろうなということも感じさせてくれる。

 一方で、高校時代の同級生と思われる三人の女子の友情物語みたいなところもあった。その三人で呑んでいるシーンなんかは、まさにアラサーの女子会というのはこんな感じなんだろうかなぁ…、とも思って納得していた。まあ、だから何…❔ と言われてしまうと、何でもないということしか言えんのだけれどもね。

 そんな映画なのだけれども、まあ、それなりに楽しく観られたのかなぁと思いつつも、ちょっとしたじれったさや、戸惑いなんかもあった。というのも、そもそもオレ自身「アイドルとは自分でやるものなんか…?」という疑問もある。また、フリーライターなんて言うのは「体のいい失業者だろうが…」なんていういささかの偏見もあるからなぁ。

 それに、アラサーでもアラフォーでも、アラフィフでもいいけれども、そんな女子が同居してくれたら💕、問題が起きんかなぁと、淡い期待をもってしまうのだけれども…ねぇ。というよりも、オレだったら、何か問題が起きそうなことを画策してしまうのではないかという気になってしまう。もっとも、そんな煩悩の塊のオヤジのところには、そもそも、そんな女子が同居するなんて言うことは…ないわな(苦笑)。