『スイート・マイホーム』はホラーミステリーとしては納得は出来た | 週刊テヅカジン

週刊テヅカジン

手束仁が語る、週刊webエッセイ

 観ていて、何度かゾクッとさせられるシーンがあった。そういうことだけでも、ホラー・ミステリー映画ということでいえばまあまあ、及第作ということかなぁと思わせてくれた『スイート・マイホーム』(齊藤工・監督/倉持裕・脚本)。原作は現代小説長編新人賞を獲得した神津凛子の同名小説。ボク自身は、原作は読んでいないので何とも言えないのだけれども、そもそもストーリー構成が、案外、よく練れているのではないかと思った。

 それと、キャスティングもなかなか役にハマっていて好抜擢かなぁと思えた。主人公のスポーツインストラクターで、寒冷地の長野県で新居を購入する窪田正孝。その妻役に蓮佛美沙子、キイとなるHAホームの担当者で設計士でもある奈緒。あとは、実家の母親の根岸季衣、何だか訳ありで怪しげな兄が窪塚洋介。このあたりの関係性の妙はなかなかいいのかなと思わせてくれるものだった。 

 冬には寒くてしょうがない住まいを思い切って引っ越して家を購入しようと決心した主人公は、「冬は暖かく、夏は涼しい」という快適な″まほうの家"というキャッチフレーズのマイホームを購入する。特に、地下の構造に特徴があって、そこから全室暖房が出来るようになっているし、全室をモニターチェックできる機能もある。そんな便利すぎる構造の家でもあるのだけれども…、実はそこから次々と奇怪な出来事が起きていく。

 暖かくて、まさに理想のマイホームだったはずのところだった。ところがそれが、いつの間にやら不可解な現象の起きていく場所となっていくのだ。

 そこからさらに事件は発展していき、殺人事件まで起きてしまうという展開になっていく。このあたりからは、どんどんとミステリー展開に引っ張られていく。

 ストーリーに引っ張られていると、ちょっと意表を突かれたというところもあった。観ている側としてはビックリさせられたし、ギョッとっとしたり、ゾクッとしたりもさせられた。

 そして、思わぬ形で犯人が見えてくるのだけれども、そのあたりから、冒頭の地鎮祭と、その後の関係性が見えてくる。冒頭の映像のことは、その後の関連が繋がらなかったので、どういうことだったのかということすら忘れかけていた。ところが、ここで「ああ、そういうことだったのか」と思い出させてくれて、このあたりは上手いなぁと思った。

 そこからは、ある程度ストーリーは読めてくるようになる。

 と同時に、内容としては、いくらか非日常性が高くなっていって、家の構造なども含めて、「それはないだろう…」みたいなシーンも出てきてしまうところもあった。とはいうものの、それは映画的な納得ということで良しとしておこうかな、とも思った。捜査の刑事が、周辺人物に、犯人の目星となるヒントを伝えてしまうあたりも、「そういうことが、あってもいいのかな?」なんていうことも思っていたところもあった。それでも、「まあ、そんなところはいいかな」と思わせるくらいに、ストーリーそのものは、引っ張っていってくれるパワーはあったのかなとも思う。

 いつも、思うんだけれども、自分自身、ホラーサスペンスというのは、必ずしも好きなジャンルではないのだけれどもね。だけど、何となく見てしまって、その中で、ゾクッとしたり、ドキッとしたりすることも、案外刺激になっているのかなと思う。

 ということは、この手のジャンル、実は案外、好きなのかなぁ…とも、思ってしまった。

 それと、窪田正孝、先の『春に散る』の相手を見下しているような、ちょっと生意気なチャンピオンのボクサーも味があったけれども、今回の新婚ながら、不倫交際もしてしまっていたというスポーツインストラクターも悪くなかった。この年齢の俳優陣の中では、味のある役者かなとも思う。