高校野球の応援テーマの定番「狙い撃ち」歌詞を吟味してみると…(^^♪ | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 昭和歌謡が好きだ。亡くなった、なかにし礼が言っていたことでもあるが「昭和の終焉とともに歌謡曲そのものがなくなった」ということ。じっくりと昭和歌謡曲を聞いていると、改めてそのことをしみじみと感じることも多い。

 高校野球の応援テーマソングとしてすっかり定着している「狙い撃ち」。元々は山本リンダの持ち歌で🎵ウララ、ウララ、ウララ、ウラウラで…。ウララ、ウララ、ウラウラよ…🎵 なんていう導入♪でも昭和の一時代に大ヒットした歌謡曲である。作詞は阿久悠、作曲は都倉俊一と、その時代を代表する歌謡曲ヒットメーカーのコンビによる作品で大ヒットした。

 「困っちゃうな」以降、いささか低迷していた山本リンダの強烈な復帰作でもあった。セクシーなヘソ出しルックと胸の谷間を露出するような衣装は、当時十代のボクにとっては強烈な刺激でもあった。「平凡パンチ別冊 ポケットパンチOh」なんかでのセクシーグラビアも衝撃だった。ボクなんか、グリップ、アタックの参考書を買うふりして一緒に「ポケットパンチOh」を買ってしまっていたりもした。

 昭和歌謡曲全盛期の昭和40年代のことである。

 この「狙い撃ち」は、作詞した阿久悠が明治大出身だったということもあってか、東京六大学野球で明治大の応援ソングとして使われるようになった。そして、それがいつしか高校野球の応援ソングの一つとして甲子園はもちろんのこと、高校野球の応援スタンドではブラスバンドから奏でられる常連曲である。

 リズムが良くて、確かに攻撃の時には勢いがつきそうだし、まさに「狙い撃ち」したくなる、そんな気持ちにさせるリズムでもあった。

 しかし、その歌詞を吟味してみると、今の時代だったら「あきまへん!」とNGを出されるかもしれんなぁという内容である。

 というのも、女が容姿を武器にして「こんないい身体の私、こんなステキな私、手を出さない男がおかしいでしょ」というような展開の歌詞である。それを🎵ウララ、ウララ、ウラウラで…🎵 なんていうリズムに乗せられて妖艶な駆け引きもあって、聴く人にとっては、そんな歌詞の内容はどこかへ飛んで行ってしまう。

 そうした歌詞と曲との構成が巧みで、これが山本リンダの妖艶さもあって、大ヒットになっていったのではないかとも思われる。

 それにしても、すごい歌詞だ。イケメン狙いの女が「私は玉の輿に乗りますよ」宣言をして、セクシーボディーを武器にして男のリビドーを刺激していこうという内容なのだ。「どう? こんな私を見ても、あなたは勃起しないの…?。 私はあなただったらオールOKなんだけどなぁ」という、逆ナンパ曲なのだ。

 そんなことに最近気が付いたのだけれども、そう考えると昭和歌謡の歌詞というのは、やはり今ならばNGもの多いんじゃないだろうかとも思ってしまう。

 奥村チヨの「恋の奴隷」や殿様キングスの「涙の操」や「夫婦鏡」は、今だったら歌詞として「あきまへん」でしょう。バーブ佐竹の「女心の唄」も難しいところかなぁと思ってしまう。まあ、何だかんだ言って昭和全盛期、歌謡曲全盛期の時代は、そんなことは気にも咎めない、いい時代だったのかなぁなんて思ってしまう。というと…懐古趣味のジジイになってしまうんだけれども、そういうことでもないんだけれどもねぁ。

 ただ、今の時代の言葉狩りや、あまりにものコンプライアンス重視だとか、道徳心や正義心がちょっと窮屈に思ったりすることもあるもんでねぇ。ついつい、そういうことも言ってみたくなる時があるということである。