恐ろしいくらいに察しが悪く融通が利かなくて、夢中になると他のことが見えなくなってしまう、ちょっと迷惑な男。その主人公・牧本を阿部サダヲが独特の雰囲気で怪演。🎥映画『アイ・アムまきもと』(水田伸生監督/倉持裕脚本)は、そんな不器用で独り暮らしの中年男を主人公とした作品だったけれども、いろいろ考えさせられる作品ではあった。
どうかすると、真面目なのかふざけているのかさえ分からなくなるような存在の牧本。その男の勤務先は東北地方の小さな都市(山形県庄内市)の市役所「おみおくり係」だ。「おみおくり係」とは、孤独死などで人知れず亡くなった人を埋葬するということなのだが、思い余って、自費で葬儀をあげてしまう。その葬儀の出席者は自分だけということもあるが、人の生きてきた証を大事にしていきたいという思いは純粋だったのかもしれない。
ところがある日、県庁からやってきた局長によって「おみおくり係」が廃止されることとなる。その最後の仕事で、一人の孤独死した男の葬儀をあげようと奔走して、その男と関連のあったさまざまな人たちに会っていく。そうしていくうちに、実の娘や一緒に棲んでいた女などを含めて当初は否定的だった人たちの心をも動かしていく。そして、葬儀の当日には路上生活をしていた時代の仲間までもが列席して、予想以上の人が出席したということになった。
しかし、その式に、牧本本人の姿はなかった。そんな、ストーリーなのだけれども、その余韻がなかなかしんみりとさせるものがあった。
コミカルタッチの演出なのだけれども、扱っているテーマは実は、非常に重たいし深い。孤独死と無縁仏。そして、家族との関係や孤独、人間が生きていく上で背負っていかざるを得なくなる過去や人と人との絡み。そんなことが、さりげなく描かれてもいた。
どんな人間関係を作ってきたのか、どんな生き方をしてきたのかということ。それは、人生の結果に関わらず、みんなが背負ってきているものである。そして、誰もがやがて訪れる、自分の人生の幕引き。それをどういう形で迎えるのか、どんな形で見送られるのか…。
そんなテーマを深刻にならずに、考えさせられる作品でもあった。
観終わった後は、ちょっとしみじみとした気分にもなった。と、同時に人生の後半戦と言うよりも、そろそろ終盤戦に入りかかっている自分のこともふと思って、オレは一体、どういう形の幕引きになるのだろうか…❓ なんてことも思ってしまった。

