かつて『愛と死をみつめて』(1964年・斎藤武市監督)という映画があった。原作は二人の文通による書簡集という形だが、日活で当時の青春黄金コンビでもある浜田光夫と吉永小百合で演じられた。この作品は病室での二人のやりとりがメインで、徐々に病に侵されていくヒロインのそれでもけなげに生きようとする姿が涙を誘った。
それから半世紀以上の年月を経て、やはり不治の病で限られた命を生きる女性の実話が書籍化されて映像化もされた。それが、『余命10年』(藤井道人・監督/岡田惠和、渡邉真子・脚本/原作・小坂流加)である。
数万人に一人という不治の病で余命が10年しかないということを知ったのが夢も希望もあって、将来へ思いを馳せたい彼女が大学生の20歳の時だという。そこから、10年余と人生を限られてしまった中で、何を思い、どのようにして生きていくのか。そんな葛藤の中で、東京からちょっと外れた田舎(三島市)で中学の同級会に出席したことで、余命10年の生き方を見出していった。
そこには、人生の目標を失い「死にたい」と思っていた男がいた。そんな彼と彼女が、ひょんなことから東京で付き合うことになっていく。そうして、彼は、「誰かのために生きたい」と思うようになって、仕事もしようと意欲を持って、そして夢も抱くようになっていく。しかし、彼女の方は生きることに執着しないように恋はしないということにしていた。だから、少し思いのすれ違いもあったかもしれない。
だけど、交際を深めていくうちに、彼女の思いも彼に惹かれていく。そして、彼は「彼女と幸せに生きていきたい」と前向きな希望を持って生きるようになっていく。
だけど、不治の病の運命は変えられないまま、時間が過ぎていくのだ。
その、時間の経過を四季の描写でスクリーンに映し出していく。その映像が美しければ美しいほど、ヒロインの残りの時間がなくなっていくことを著していて切ない気持ちにもさせられる。そんな映像手法は、『ヤクザと家族 The Family』などでも表していたが、藤井道人監督の上手さとも言えようか。
「余命10年って笑えるよね。長いんだか短いんだか、どっちなんだっていう感じ」
そう敢えて明るく言う、ヒロインの姿が限りある命の切なさを表していた。そんな自己煩悶をする中で、限られた人生をどう充実させていくのか、ということで彼女自身はその生きてきた証を小説として残すことになる。そして、それを大学時代の友人が、出版社に就職して、編集者としての思いをぶつけながら本にして書店に並べていくのだった。
難病物の作品は、どうかするとお涙頂戴になってしまうところもあるのだけれども、そんな押し付けた演出がなかったのはよかった。このところいい作品に恵まれていると感じているヒロイン役の小松菜奈も、必ずしもアイドルフェイスでもないけれども、『糸』(瀬々敬久監督)など作品にも恵まれて、スクリーンの中で輝ける女優になっていっているのではないだろうか。


