映画『リカ~自称28歳の純愛モンスター』は衝撃作か暴走作か?? | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 現実に、妄想癖や虚言壁の女というのは存在する。そして、そういう女は確かに厄介である。

 そんなことを強調していったのが『リカ~自称28歳の純愛モンスター』(松木創・監督/五十嵐貴久・原作/三浦希紗・脚本)ではないだろうかという気がする。、

 それを、まさに、“魔性の女”とも“美しき魔性”とも称せられる高岡早紀という女優(素材)がいたからこそ、具体化することが出来た映画だと言っていいだろう。ただ、高岡早紀の主演だからということで、ある程度の妖艶なシーンや絡みもあるのかなと期待すると、それはほとんどないのでそれを期待する向きにはややはぐらかされた感もあるかもしれない。

 

 主人公の雨宮リサは幼い頃から家族や周囲の愛に恵まれなかった。そのことで却って、少女のような純粋な恋愛観や家庭像を思い描いている。しかし、その一方で、現実に男性に出逢うと、その瞬間から愛情はどんどんと妄想によって膨らんでいく。そして、いつしかそれは“純愛モンスター”と化していってしまうのである。

 そんなラブ・ファンタジー、サイコサスペンスストーリー的な作品である。原作は第二回ホラーサスペンス大賞を受賞したという五十嵐貴久の同名作品シリーズの映像化である。

 ただ、途中からというか、謎のバラバラ殺人事件を追っていた刑事の市原隼人が囮で出逢いサイトでリカの理想の恋人として接近していくのだが、やがて訪れる悲劇。それを、同じ職場の婦警で婚約者だった内田理央が今度は追っていくという展開になってから、リカが空を飛んだり超スピードで走ったりという超人ぶりがちょっと誇張的表現となっていく。

 それを、映画的誇張というように捉えられればそれはそれでいいのかもしれないけれどもね。ボクとしては、途中までのリアル展開だったのが、赤いコートで登場してきてからは、暴走していったんじゃないかなという印象もなきにしもあらずだった。

 挿入歌としての弘田三枝子ではない「人形の家」(なかにし礼・作詞)は、じっくりと聞くと、この作品とのつながりの意味が伝わってくる。とは言うものの、ボクとしては、いくらか消化不良感もあった。

 内田理央の先輩女刑事として佐々木希が演じていたが、そこについても、客観的に観ていても、何だかしっくりいかなかった。多分、佐々木希に関するイメージも含めて、似合わないという前提があったからかもしれない。

 ということで、衝撃作かと思った期待感は、いくらかはぐらかされて暴走感の方が強かった。とはいえ、野球でも言われるからね。

「暴走と好走塁は紙一重」

 そんな作品だったかなぁという印象だった。