思い出は切なくも美しく、カッコ悪くもありと再認識させてくれた『くれなずめ』 | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 知人の結婚式というのは、学生時代の友だちや仲間も集まって、プチ同窓会的にもなる。おおよそ、10~15年くらい前のことで話は盛り上がる。集まる仲間連中も30歳前後だから、ちょっと大人になった気分で「あの頃」を振り返ってみたりもする。

 映画🎥『くれなずめ』(松居大悟・監督脚本)は、知人の結婚式披露宴に集まったそんな高校時代の仲間が、二次会へ向かうかどうかとうだうだ過ごす3時間を描いた作品だ。そのうだうだの要因は、余興で高校時代の文化祭でやって受けたつもりだった赤フン踊りを披露して、大すべりしたことに起因していた。そして映画は、そこからその時間の中で過去の思い出をフィードバックしていき、12年を遡り振り返りながらストーリーは進んでいく。

 そんな中で実は、誰もがどこかで受け入れようとしていなかった、仲間の死を受け入れていく覚悟をしていくというのが話の根幹となっている。というのも、この中の一人が実は亡くなっていたということが途中でわかる。

 肉体は5年前に突然亡くなってしまったけれども、その魂はみんなの中に生きている。だから、今は5人なのに6人でいるような気分になっている。そして、そんな仲間をいじりながら、茶化しながら、やがて徐々に現実を受け入れていかなくてはならないという気持ちにもなっていくのである。

 とはいえ、ストーリー全体の流れとしては軽妙で決して暗いものでもなく、じめじめしたものでもなかった。だから、そんなに深刻にならずに観ていられたし、時に笑いも誘ってくれる。

 主演で、実は亡くなっていたという設定の成田凌と高良健吾、同級生の前田敦子以外はほとんど知らん役者ばかりだった。だけど、そのことで却ってボクなんかはリアルに、今時の若いヤツらを味わうことが出来た。

 そう、ここに登場するメインの連中はみんな30歳前後なんだけれど、ボクからすれば「まだ、人生オレの半分も生きとらんやろ」という若造でもある。だけど、自分もそうだったけれども、30歳前後の頃って、何となく自分の十代をちょっと大人っぽく振り返りたくもなっちゃうんだよね。そして、「あの頃は、若かったなぁ」とか、「バカだったなぁ」とか、「情けなかったなぁ」なんて気分でね…。

 だけど、そんなものは、その倍も生きてきたら、「みんな過去の思い出」としてひとくくりにもなってしまうのだ。まあ、それだからいいということもあるんだけれどもね。

 現実にボクなんかも、高校時代に関しては卒業して30年、ほとんど疎遠だったんだけれどもね…。それが、48歳の時にある出来事がきっかけでグッと寄ってきてくれた。そして今や、ずっぼり浸り切ったりもしているのだから人生はわからん(苦笑)。

 そういえば、この『くれなずめ』と同じような意図で、この2月に公開された映画で、松阪桃李主演の『あの頃。』(今泉力哉・監督)なんていう作品もあった。これも、30歳前後のヤツらが「あの頃」を振り返りながら、自分たちの今を見つめていく。「あの時はあの時で面白かった」という振り返りと、仲間の死が絡んできているというものだった。

 今、タイムスリップモノとともに、こうした自己の近過去振り返りモノも比較的多くみられる企画でもある。それは、それだけ、今、生きている今の時間に閉塞感や何らかの不満があるからなのかもしれないなぁ…、なんていうことも思っていた。