「諦めなければ未来は変えられる」というメッセージの映画『劇場版シグナル』 | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 今を生きる人間が近過去と繋がって、その時代の未解決事件を解決していく。そんな設定がちょっと面白いのかなという気もしていた。映画『劇場版シグナル~長期未解決事件捜査班』(橋本一・監督/仁志光佑、林弘・脚本)である。

 劇場版と銘打っているということは、テレビでやっていたもので人気があったので映画化したというパターンでもあるが、元々は韓国ドラマだった。それが2018年に日本でリメイクされた。さらに、その劇場版ということである。製作には関西テレビ放送とフジテレビジョンが名を連ねていた。

 こうしたタイムスリップ゜的な作品の場合、現在と過去をどう繋いでないでいくのかということになる。その設定がポイントとなって来るであろうと思うが、それがバッテリー切れの通信機からだった。その繋がるはずない無線機を通じて時を超えて二人の刑事が繋がっていくことになるのだ。

 未解決事件を追う捜査班の班長は吉瀬美智子。キリッとした仕事出来る系女子の雰囲気を醸し出している。その部下としての坂口健太郎が、過去の吉瀬の先輩だった北村一輝と繋がって、過去の事故ということで処理されていた政府高官が亡くなった案件を追っていく。

 わずか12年、されど12年。干支で言えばちょうどひと回り。その時間差の中で繰り広げられる、政府と警察の現場とのせめぎ合い。そこに、過去の地下鉄サリン事件のようなテロ事件で妻と娘を失った元刑事が実は…、という展開で進んでいく。

 この過去のバイオテロと、それが現在にまで引きずられていくという背景は、なかなかの見せどころでもあろう。そして、そのキーワードとして、「諦めなければ、未来は変えられる」というもの。過去の事実を代えていくことで、未来の現象も自然と変わっていくのだる

 これは、過去の刑事の信念でもあった。個々のストーリー的なな骨組みががしっかりしていたので、多少の無理な展開や、設定であっても見ていて違和感はなかった。むしろ、ストーリーの中に入り込めてスリルとハラハラ感を味わうことは出来た。

 タイトルの「シグナル」とは、過去と現在を繋ぐ合図ということであり、その合図によって現在の悲劇(無差別殺人テロ)を救うことが出来るのだということなのだろうか。そして、そのメッセージとして、「諦めなければ、未来は変えられる」ということなのではないだろうかという理解でいた。

 それにしても、世の中に未解決事件というのはどれほどあるのだろうか。そういえば、あの「三億円強奪事件」だって、実は未解決なんだから…。ただ、あの事件が凄いのは一人の死者どころか負傷者も出ていないで、現金だけが奪われたということなのだけれどもね。

 また、映画の中では、時の流れということも感じさせてくれた。

 我々の日常生活の中でも、ついこの間のことと思っていたことでさえ、「えっ?  もうそんなに時間経っているんだ」なんて思うことはざらである。まして、こうして年齢を重ねてくると、遠いことの方がなぜか近くのことより、よく覚えているなんて言うこともある。

 まあ、これはそんな観点の話ではないのだけれども、過去と現在の整合性なんかを考えていると、そんなことも、ふと考えていた。