神保町シアター「異端の美学」→大映・成田三樹夫特集 | 週刊テヅカジン

週刊テヅカジン

手束仁が語る、週刊webエッセイ

 神保町シアターのプログラムというのは、ボクのような昭和映画オヤジにとっては時に非常に楽しい。たまらないプログラムが組まれることがある。11月になって、1週目から組まれている「異端の美学~大映・成田三樹夫特集」もその一つだ。

 『野良犬』(1966年・井上芳夫監督作品)と『出獄の盃』(1966年・井上梅次監督作品)を相次いで見た。いずれも田宮二郎が主演で、成田三樹夫は渋いサブという存在だ。

 『野良犬』は田宮二郎主演の恒例となっていた「犬シリーズ」の7作目で、田宮二郎の扮する一匹狼のガンマンというか軽快なアウトロー鴨井大輔の軽妙な関西弁も好調。これに対して、成田三樹夫は珍しく、妹思いの前科者で、何とか妹のためにも足を洗いたいのだが…、そのガンの腕は悪の組織が放ってはおかない。という苦悩の中で田宮二郎とのガンアクションなんかも見どころとなる。

 最後は、二人で競合して悪と戦っていくというストーリーとなるのだが、爽快感はあるアクション映画だった。

 『出獄の盃』は、歌手のアイジョージも出演しているが、田宮二郎とともに刑務所を出たら堅気になろうと約束するが、娑婆に出てみたら、しがらみからお互いに足を洗えないまま再会するする。そして、成田三樹夫は登場の仕方からして、謎の存在だったが、やがて、実は麻薬捜査官だったことがわかる。

 最後は、何となく麻薬組織を貶めたという形で護送車の中のシーンでジ・エンド。

 ボクは、個人的には大映時代は『ある殺し屋』が最も光っていたと思っている。

 もっとも、成田三樹夫に関して言えば、ボクとしては大映時代よりも、その後の東映実録映画での役どころのインパクトが非常に強い。その最たるものが、『仁義なき戦い』シリーズで第2~3作で登場する松永弘という役どころだ。

 さらにはその後、『県警対組織暴力』では市議会議員と癒着する川手組組長、『新仁義なき戦い・組長の首』、『北陸代理戦争』といった深作欣二監督の実録物で多くのサブを務めている。他にも『京阪神殺しの軍団』(1975年・山下耕作・監督作品)、『実録外伝・大阪電撃作戦』(1976年・中島貞夫・監督作品)、『新宿酔いどれ番地』(1977年・小平裕・監督作品)などでも印象的だった。

 そして極めつけとして、『やくざ戦争日本の首領』(1977年・中島貞夫・監督作品)に出演して、相手を脅しながらまんじゅうをパクっと口にするシーンなんかは忘れ難い。大映時代の様にバンバンとガンアクションをするというよりも、常に組織のナンバー2かナンバー3くらいの位置で、上手に駆け引きして、絵図を描くという立場。その一つひとつの動作やセリフの出方が、いかにも…、「こういう人おるのだろうな。こんな人に言われたら、そりゃ~怖いなぁ」と思わせる存在感だった。

 そういう意味でも、日本映画には欠かせないバイプレーヤーだった。

 55歳という若さで亡くなっている。山形県酒田市出身で酒田東から東京大に入学するも中退。再度、山形大に入学し、その後俳優養成所に入所(同期に中村敦夫ら)して、その後に大映ニューフェイスとして大映入社しているという、言うならばインテリ崩れ的なところも異色だ。