本来ならばGW公開だったはずの映画『一度も撃ってません』(阪本順治・監督作品/丸山昇一・脚本)が、ようやく公開された。気になっていた作品でもあり足を運んだ。東宝シネマズ錦糸町オリナスでは、朝からの一回しか公開していないのでそれに合わせていかなくてはいけない。会場内は10人いないかなという状況だったので密は避けられた。
石橋蓮司主演で、過去一度だけちょっと売れたことのある、今は売れない老作家と元エリート検事で今は闇世界の情報を握って暗躍している岸部一徳。それに、元ミュージカルスターで今は、立ち喰い蕎麦屋のバイトでしのぎながら過去の栄光にすがっている桃井かおり。さらに老作家を支え続けた妻の大楠道代は元学校の先生として、ヒモみたいな売れない作家を支えてきた。この4人がメインで昭和の名残を感じさせてくれる味わいのちょっとしたサスペンスストーリーだ。
どこかで、「昔はよかった」的な匂いを感じさせつつも、それでも今を生きていこうと、ちょっとカッコつけてイキがって見せたりしている。そんなジジイと老女が悩んだり嫉妬したり…、そんな青春っぽいところも感じさせつつという作品でもあった。
いうならば、ちょっと小じゃれた怪作という印象。その昔に見た、和田誠監督作品で小泉今日子(キョン×2)主演の『怪盗ルビイ』にも似た心地よさがあった。その老年版といってもいいであろうか(苦笑)。
何かを企てたいと思いながら自らの過去を語り合っている人たち。そんな自分の近過去を振り返ってみたくなる年齢の間もなく後期高齢者に達さんという人たち。歳を重ねた男と女が昭和を引きずりながらも令和をちゃんと楽しく生きようとしている。
そんなメッセージが、ラストシーンにはちりばめられていたような気がする。
有楽町(ガード下界隈)だと思われるような佇まいもなんだかとても味わい深かった。
定年を迎えるベテラン編集長の佐藤浩市、実は臆病な中国マフィアのスナイパー、街の鉄工所の作業所で一人こもりながら仕事をする一方で、実は“伝説のヒットマン”の実行者でもあるという、もう一つの顔を持つ男が妻夫木聡。これが、普段はいかにもフツーっぽくてまたいい。
TOHOシネマズ錦糸町オリナスの案内掲示板
また、作品のちょっとした遊びというか、楽しみとしては佐藤浩市と寛一郎、柄本明と柄本佑。この二組の親子がそれぞれで共演しているところだ。特に、ベテラン編集長としての佐藤浩市と、その部下としての寛一郎。「それ、パワハラになりますよ」なんていう、今風の言葉が散りばめられていて、そういうところも楽しい。それに、打ち合わせの場所として、昭和っぽい喫茶店でやっていいるところもいいね。
館内を見回してみても、時間的なこともあったのかもしれないけれども、ほとんどがボクと同じくらいかそれ以上かなという年齢層。それも、コロナの影響もあってかほんのわずか…。それでも、それぞれが、それぞれの中で、自分なりの味わいは持てた作品だったのではないだろうかと、そんな気がしていた。
それにしても、人が少ない。いつもはもっと賑わっていてもいいはずの館内は閑散としていて、何だかそのことが寂しいなぁと思ってしまった。、


