他愛のないコメディ映画かなというつもりで見ていたのだけれども、あまりにも今のコロナ禍の時代を予測したかのようなシチュエーションに驚いた。本来は3月の春休みに公開予定だったのが、遅れて現在公開中の作品。
浜崎慎治監督作品(澤本嘉光・脚本)『一度死んでみた』である。
映画としては、コロナ騒動なんか予測も出来ていない昨年の撮影だろうけれども、まさに、先を読んだかのようでもあった。というか、結果としてそうなったのかもしれないけれども、セリフにもそんなところが示されていた。
広瀬すずと製薬会社の社長の堤真一が親子で、娘は父親のことが大嫌いで逆らい中。まさに「反抗期こじらせ中のデスメタル女子」という設定だ。
彼女は、売れないデスメタルバンドのボーカルで、父親に対して「一度死んでくれ!」とばかり「♬デス death♪」と叫び続ける。
ところが、製薬会社で偶然発明された「2日間だけ死ぬ薬」を自ら試して仮死状態になる。
実はこれはライバル会社の陰謀で、本当に火葬されてしまいそうになるのだが、それをめぐってのドタバタ劇。そんなストーリーに、親と子の本当の思いや亡き妻への思いなども巧みに描かれている。


何より面白かったのは、親と娘の家庭内ソーシャルディスタンスを示す動線分け。ことあるごとに今の消毒薬のように、親父に消臭剤をシューする娘。さらには郷ひろみのディナーショーが突然中止になったりという出来事。存在感の薄い社員が、実は重要な役割だとわかったり…。
まるで、今のコロナ騒動の中での出来事のようでもある。
そして何より、2日後に何とか無事生還してきた親父・堤真一のセリフが効いていた。
「一度死んでみて分かったんだけれども、普通に生きていたことがどれだけ大事だったことか分かった」
「見えていることよりも、見えないものに大事なことがあるのだということが分かった」
まさに、今のコロナ禍で炙り出されてきた現実にも等しい。これで、登場人物の多くがマスクでもしていたら、恐ろしい映画になっていたのではないかとさえ思いながら見ていた。
そんなこんなで、見終わった感は、悪いものではなかった。
93分という上映時間で、決して大作ではない。その割にリリーフランキーや竹中直人、妻夫木聡、大友康平と脇役も意外に豪華。さらにはJAXAの宇宙飛行士・野口聡一氏まで出演していたのもちょっとしたウィット。
