億万長者の不都合な終末
81点
2024年にスペイン・チリ・アメリカ3ヵ国合作で製作、2026年6月に日本で公開。何とも奇妙なブラックユーモアの作品。
富裕層だけが死ぬという謎の感染症「リッチフルエンザ」が世界を混乱に陥れる展開。
コロナ禍を意識したであろうウィルス系のストーリー。しかし意外と映像は本格的で、『ドーン・オブ・ザ・デッド』『28週後』などのゾンビ映画をオマージュしたと思われるシーンもチラホラ。
ただ死んでいくのはお金持ちだけ。感染すると歯が真っ白になるという謎の症状。しかし富裕層は最後までお金で解決しようとするあさましさを上手く描いている。
主演は『ファイナル・デッドコースター』『デス・プルーフ』『遊星からの物体Xファースト・コンタクト』のヒロイン、あるいは『ダイ・ハード4.0』でブルース・ウィリスの娘役でもあったメアリー・エリザベス・ウィンステッド。わりと好きな女優だったけど、まぁ年取ったなぁという印象。
とにかくお金と人間の関係性を痛烈に風刺している。終末という雰囲気も上手く描かれており、今のところあまりヒットしていないようだがなかなか面白い映画。これはおすすめ。
監督:ガルデル・ガステル=ウルティア
出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド、レイフ・スポール、ロレイン・ブラッコ、ディキシー・エジャリック
2024年 107分
原題:Rich Flu
Michael/マイケル
92点
マイケル・ジャクソンの伝記映画。『ボヘミアン・ラプソディ』の制作陣が手掛けているらしい。主演はマイケルの甥にあたるジャファー・ジャクソン。
物語はマイケルの父親・ジョセフが5人の息子たちを集めてジャクソン5を結成させるところから始まる。結論から言うとこの映画は、父ジョセフを悪として描き、半ば勧善懲悪のような手法を取っている。
ジャクソン5、そしてVICTRYツアーのくだりがやたら長いが、ようやくソロになってチンパンジーのバブルスが登場したあたりからは個人的にはツボ。スリラーのMV場面などはもう何度見ても飽きないと思う。
事実と違う部分が多く、ダイアナ・ロスは出てこないしジャネット・ジャクソンも産まれていない。ひたすらマイケルが完全に美化されているものの、そこは映画として割り切るべし。
そしてやはりライブシーンの迫力は満点。というわけでこれはもう完全にファン、あるいはそれなりにマイケル好きな人のための作品になっている。それでいいと思う。
実は撮影終了後に法的トラブルが発覚。その結果マイケルのネガティブな面は全てカットされたため、このような内容になったわけ。
ラストには「彼の物語はまだ続く」のテロップが出る。そして既に続編の製作が進んでいるとのこと。その続編でマイケルの闇の部分を描く可能性もあるが、少なくとも本作に関しては、スーパースターとしてのマイケル・ジャクソンが堪能できる。
監督:アントワーン・フークア
出演:ジャファー・ジャクソン、ニア・ロング、ジュリアーノ・ヴァルディ、ローラ・ハリアー
2026年 127分
原題:Michael
シラート
81点
スペインとフランスの合作。なぜか各国の映画賞で旋風を巻き起こした作品。ただ内容は映画賞に似つかわしくない痛烈さ。
父と幼い息子が失踪した娘を探すために、モロッコの砂漠地帯で開催されているレイヴパーティ(薬物をしながらクラブミュージックを大音量でかけるイベント)を訪れるストーリー。
一見して『マッドマックス/怒りのデスロード』を思い切り地味にした印象。ただ先が読めないという点でこちらも負けていない面白さ。
パーティを警察に中止させられ、ならず者たちと旅をすることになる父子。いつしか交流が生まれ、何とも言えない不思議なロードムービーかと思いきや、終盤に待っている意外な展開。
派手な映像はハリウッドに一歩劣るも、予想不可能というか意味不明というか、レイヴミュージックの奇妙な盛り上がりに乗せて、実に欧州の土臭い映画らしい奇想天外なストーリーを見せる。
カンヌ映画祭で上映されたときは、ネタバレ厳禁の誓約書に一筆書かされたらしいが、実はそれほどわかりやすいオチがあるわけではない。ただクライマックスに向けて疾走するある意味ホラーな出来事。令和の今の時代でも、世の中色んな映画があるもんだと改めて敬服。
監督:オリベル・ラシェ
出演:セルジ・ロペス、ブルーノ・ヌニェス・アルホナ、ステファニア・ガッダ
2025年 115分
原題:Sirāt
箱の中の羊
50点
『海街diary』『万引き家族』でお馴染み是枝裕和監督作品。
電車事故によって幼い息子を亡くした夫婦が、息子そっくりのヒューマノイド(アンドロイド)を家に迎い入れる話。当初は本当の親子のように振る舞うヒューマノイドだが、徐々にはっきりとした壁が見え隠れていく。
映画が進むうちに問題が徐々に明らかになる、実に是枝監督らしい作品。子役がいい味出してるのもいつも通り。
ただこの映画の致命的欠陥は、漫才師/芸人の千鳥・大悟を主演に使ったこと。監督の意図するところは知らないが、個人的にはテレビでお笑いしているタレントにしか見えなかったし、どこか偉そうなその傲慢っぽい演技にどうしても感情移入できなかった。主演が別な俳優だったらまた違った印象になったかもしれない。
大悟以外のキャストは逆にかなりいい味出している魅力的俳優ばかり。特に寛一郎、角田晃広、柊木陽太、中島歩あたりは最近の連続ドラマでも活躍していた面々で、安心して見ることができた。
物語自体は、SFっぽい題材でスピルバーグの『AI』を彷彿させるも、取ってつけたような家族愛への問題提起が少し薄っぺらく感じられてしまったのも事実。是枝監督はもっと身近な題材を描かせた方が本領発揮できたと思う。
さて先日のカンヌ映画祭コンペティション部門に本作も出品され、ワイドショーでも大きく取り上げられたが、現地で酷評されたようでパルムドール(最高賞)も逃し、ワイドショーもそこは全局でスルーしていたのは笑えた(笑)。
監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、大悟、桒木里夢、清野菜名、寛一郎、柊木陽太、角田晃広、野呂佳代、星野真里、中島歩、余貴美子、田中泯
2026年 125分

スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー
84点
2019年に『スカイウォーカーの夜明け』で完結したはずのスター・ウォーズだが、新たな映画製作が発表され、まずはその前に2020年からテレビ放送された『マンダロリアン』の劇場版が公開となった。
時系列は『スター・ウォーズエピソード4/ジェダイの帰還』の数年後という設定。マンダロリアンとは特徴的なマスクと鎧を身に着けたボバフェットみたいな民族(正確に言うとボバフェットはマンダロリアンとは違うらしい)。グローグ―はヨーダと同じ種族。この2人の予測不可能な冒険を描いている。
ジョン・ファヴロー監督によると「一度も観たことがない人でも楽しめる冒険映画」を目指したそうで、つまりテレビシリーズどころか、スター・ウォーズを一切知らない人でも楽しめるという触れ込み。ただ当然だがテレビシリーズを見ておいた方が細部まで楽しめる。
さてここまでものすごいCGを使ったSWシリーズを見てきていると、主人公のグローグーやマンダロリアンのデイン・ジャリンの見た目がなんともショボすぎるのが不安点だったが、お馴染みジャバ・ザ・ハットの息子やいとこが出てくる時点でオールドファン歓喜。宇宙を舞台にしたドンパチはほぼないが、その分デイン・ジャリン大活躍。900歳まで生きる種族のグローグーもこの時まだ50歳で、「巣立ち」の要素が描かれているのも興味深い。
雰囲気はわりと旧3部作(エピソード4~6)に似ているものの、音響や質感は明らかに現代の高いレベル。これ1作だけだと逆に内容は物足りないかもしれない。
スター・ウォーズは『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』とスピンオフも面白いが、本作も期待を裏切らないクオリティ。
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ペドロ・パスカル、シガニー・ウィーバー、ジョニー・コイン、デイヴ・フィローニ
2026年 132分
原題:Star Wars: The Mandalorian and Grogu
君のクイズ
30点
2022年に発売されたベストセラー小説の映画化。すでに漫画化、舞台化がされており、今回は実写映画化。まぁしかし映画を見た時点で言わせてもらうと、そこまで引っ張りだこの題材には思えなかった。
生放送のクイズ番組で、回答者が一文字も問題が読まれないうちに正解するという珍事が起こり、これはヤラセなのか、それとも何か理由があるのかを検証するという展開。
話は思いのほか人生にまで踏み込み、意外と深めに描かれていく。冒頭はミステリー風だが、次第に人間ドラマへとシフトチェンジ。今風のSNS炎上も盛り込み、人気若手俳優も起用した洗練された作品・・・と言えば外面はいいが、まぁとにかく絶望的にストーリーがくだらない。クイズにのめり込むあまり恋人と破綻するなど、登場人物に合わせたエピソードをいくつか挿入するも、それ強引だろと思える部分がちらほら。邦画特有の幼稚さをひしひしと感じてしまった。
演出はわりと淡々としており、その辺はともすれば睡魔を誘う。ならばとエンディングに期待していたが、さしたるどんでん返しもなければ感動もなし。そして何よりまたムロツヨシかよとそこはもうウンザリ。ムロツヨシ、佐藤二朗、大泉洋の3人はもういい加減にしてほしい。
じゃあ最初から見るなと言われそうだが、内容やキャストを事前にあえて確認しないで映画を見るのが好きなので、本作にムロがガッツリ出ていたのが個人的に一番のサプライズだった(笑)。
監督:吉野耕平
出演:中村倫也、神木隆之介、森川葵、水沢林太郎、福澤重文、阿部亮平、大西利空、ユースケ・サンタマリア、堀田真由、ムロツヨシ
2026年 118分
サンキュー、チャック
80点
スティーヴン・キングの短編小説を映画化。
カリフォルニアに大地震が襲い、津波や山火事で通信手段が落ち、世界が終ろうとして人々が絶望に陥る中、街の至る所に「素晴らしい39年間をありがとうチャック!」という謎のメッセージが掲げられる。映画はそのチャックの人生を第3章から遡る形で進む。
個人的にはブラピの『ベンジャミン・バトン』、ジム・キャリーの『トゥルーマン・ショー』あたりの雰囲気に通じるものを感じた。
序盤では明かされていない部分が徐々に明らかになっていく。大災害が起きた理由がなんともファンタジーというか奇想天外というか、そこはぜひ見て確認してほしい。
宇宙の歴史を138億年とすると、人類が誕生してからは12月31日の最後の10分にしか過ぎない。ましてや人間1人の人生など小さなものでしかないというこの作品のメッセージ。
時折り魅せるダンスシーンなど、軽快な演出も随所にまぶしてある。そしてチャックを演じるのは『アベンジャーズ』のロキでお馴染みトム・ヒドルストン。日本ではトムヒの愛称で人気を博し、朝のテレビ番組「スッキリ」にも生出演したことがある。白状してしまうと、この役者がそんなに人気あるとは知らなかった(笑)。
監督:マイク・フラナガン
出演:トム・ヒドルストン、ジェイコブ・トレンブレイ、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン、マーク・ハミル
2026年 111分
原題:The Life of Chuck
SAKAMOTO DAYS
77点
Snow Man目黒蓮主演のアクションコメディ。原作は週刊少年ジャンプに連載中の漫画。現在27巻まで発売されており1500万部の発行数を誇る人気作。
そして監督は独特の間やシュールなコントが特徴の福田雄一。この監督作品では毎回書いてるが、この人の独特なお笑いが受け入れられないと、本作は見る意味がない。
伝説の殺し屋・坂本(目黒蓮)はある女性(上戸彩)に恋をして結婚し殺し屋を引退、中年太りとなる。そこへかつてのボスや敵が次々と襲いかかってくる展開。
思いのほかアクションが本格的。壁を走ったり宙返りしたりするのは『るろうに剣心』で佐藤健が得意だった技だが、今ではこの手の映画では必要不可欠になってる印象。なるほど目黒蓮がやると映える。
過去の福田作品で言うと『アンダーニンジャ』が思い出されるが、個人的にはお寒いギャグは多少控えめになった感じがした。『今日から俺は』のようなドタバタ加減も抑え目で、福田監督が嫌いでも本格派アクション映画として十分楽しめそう。
キャストもそれなりに豪華だが塩野瑛久、八木勇征、渡邊圭祐あたりはオジサンオバサンの映画ファンだと誰これ?状態なんだろうな。ゴールデンウィークに何も考えずひたすら楽しみたいと思う人にはぴったりの映画。
なお太った坂本がスラムダンクの安西先生にそっくりだが、公式によると「似てるのは偶然」らしい。
監督:福田雄一
出演:目黒蓮、高橋文哉、上戸彩、横田真悠、塩野瑛久、桜井日奈子、戸塚純貴、北村匠海、生見愛瑠、八木勇征、渡邊圭祐、小手伸也、加藤浩次、津田健次郎
2026年 129分
ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー
71点
2023年『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の3年ぶりの続編。
今回は続編にふさわしく、前回よりもパワーアップ、というか色んな要素を加えている。
ベースになるのは2007年に発売されたWii用ゲームソフト「スーパーマリオギャラクシー」。名前の通り宇宙に飛び出し、いったん改心するクッパとまたも戦う。新キャラで謎の女性ロゼッタと星の子チコが登場。その辺はゲームをなぞっているが、上手く映画に転生させた印象。
そしてスターフォックスがメイン級で活躍、その他ゲームアンドウォッチやピクミンなどマリオとは無関係の任天堂キャラも多く出てきて映画を盛り上げる。
まぁ前作でも書いたが、やはり映画として見るよりどうしてもゲームをプレーしたくなる。ただ本作でより多くの可能性を感じたのも事実で、映画版マリオのファンからしたら充分満足できる出来では。そして最後まで見た限りでは高い確率で続編が予想される。他ゲームのキャラを起用させたことで選択肢も十分広がり、これは長期シリーズになる予感。
ただやっぱり個人的には、映画より初期スーパーマリオのような2D横スクロールのゲームを新作で出してほしいんだが。
監督:アーロン・ホーバス/マイケル・ジェレニック
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、ブリー・ラーソン
2026年 98分
原題:The Super Mario Galaxy Movie
真実の行方
91点
先週テレビ東京で放送されていた懐かしい、個人的にお気に入りの作品。なぜか感想が消えてしまっていたのでもう1回。
教会で大司教を惨殺し現行犯で逮捕された19歳の少年アーロン。弁護を担当したマーティン(リチャード・ギア)はアーロンと接見し「部屋にもう1人いた」という供述と、アーロンがおとなしい少年でとてもこんな事件を起こしそうにない事が気がかりだった。そして調査が進むうち、アーロンが二重人格者だということが判明する。
基本的に法廷サスペンス。わりと地味な一面もあるが、比較的わかりやすいストーリーもあって徐々に面白くなってくる。クライマックスの盛りあがりと意外なラストはまさに圧巻。
アーロンを演じるのは当時映画初出演のエドワード・ノートン。これが初めてとは思えない演技力の高さに引き込まれる。二重人格という非常に難しい役柄を見事に演じ、特にエンディング直前では寒気がするほどの名演。未見の方はぜひ。
なおアーロン役は当初レオナルド・ディカプリオも候補に挙がっていたそうで、それはそれで見てみたかった。
今日現在リチャード・ギア76歳、エドワード・ノートン56歳。時の流れは早いものです。
監督:グレゴリー・ホブリット
出演:リチャード・ギア、ローラ・リニー、ジョン・マホーニー、アルフレ・ウッダード、エドワード・ノートン
1996年 130分
原題:Primal Fear








