店主とも仲良くなり、友人も数名、そのラーメン屋に行き出した。
このラーメン屋は台湾ラーメン店で、京都に2、3店舗あった。
お酒も置いてあったので、夜はビールやプレーンを飲んだりもした。
ある夜の事、友人の友人が彼女とラーメンを食べにやって来た。
そのカップルと僕は以前、話した事はあったが、挨拶だけして僕の二つ隣のテーブルに座った。
その彼女は20歳すぎで歌手志望で、いちお自費でCDも出していた。
かの有名なエイベックスという会社に、いちお所属はしていた。
彼女たちがラーメンをすすってる時、僕は店主にそっと、
『あの子、いちおエイベックスで、CDも出してるし、サイン下さいって言ってあげて♫』
と喜ばせようとした。
真面目な店主はすぐに色紙を持って行って、サインを頼んだ。
彼女は一瞬、驚いたが、快くサインをしてくれた。
店主はその場でサインを、『土建屋よしゆき』のサインの隣に飾った。
そこから彼女は豹変した。
台湾ラーメンをすすってる最中なのに、大きなオニヤンマみたいなサングラスを取り出し、かけた。
浜崎あゆみとよく似たモデルのサングラスだ。全然似てないけど。
夜、台湾ラーメンを食べながら途中でサングラス。
夜、台湾ラーメンを食べながら途中でサングラス。
なぜか2回言う。
そして、気分がよくなったのか、彼女は自費のCDを、ラメ色の鞄から取り出し、
大将に渡して、こう言った。
『普通千円なんですがー、800円でいいですわー!』
いいですわて!
みたいな顔を大将と僕はしたが、彼女は気付かず、2枚出した。
大将は仕方なく2枚買った。1600円だ。彼女たちのラーメン代は1500円だった。
彼女が100円勝ち!
大将は自慢の台湾ラーメンを2杯、聴きたくもないCD2枚と交換した。100円払って。
そのあとまだ、彼女がこう、のたまわれたのだ。
『これは内緒なんですがーー、、、』
語尾が長い!
↑これは、粗品の言い方で!
彼女は続ける。
『これは内緒なんですがーー、愛を込めて花束を、って歌知ってますぅー?』
もちろん知っていた。うん、うん、と答える僕たちに彼女は、
『あの歌、私が作ったんですよぉー。それで社長が気に入ってー、この曲をぜひフライに歌わせて、て。
だから私、お金握らされて、フライさんに曲あげましたー!アハッ♫』
フライさんて、天ぷらかアジフライのように言っているが、あのSuperflyの事だ。
スーパーのフライではない。あの安売りの80円のやつ。
紅しょうがのやつ、美味しいよねー♫
話を戻す。
だいたい、彼女の話は本当だろうか。
お金握らされてー、のクダリなんかは、いかにも芸能界みたいな感じだが、なんか嘘くさい。
しかも、内緒話を台湾ラーメン屋で、大きな声で言ってるオニヤンマが信用出来ない。
店主と僕は、モヤモヤして仕方なかった。
オニヤンマが帰ったあと、店主は、ボソッと言った。
『あれは何?』
嵐山あおや

