すると、中学1年の女の子が二人、僕に手紙を渡しに来てくれた。
友達からです、と1通の手紙を。
同級生のヒトシが目ざとく、それを見つけ、僕への手紙を開いた。
ヒトシ『おい、あおや!これは、あっ子ちゃんからのラブレターやぞ!』
あっ子ちゃんとは、かわいくて有名な女の子だった。
僕は、内心、ものすごく喜んでいたが、あっ子ちゃんの事はあまり知らなかったので、手紙をもらった事にウキウキしていた。
その夜、僕は仲の良い同級生タケツの家に、友達と泊まった。
僕はラブレターを持って行き、二人に見せた。二人も喜んでくれて、3人で何度も何度も、
松田聖子の『制服』を、電気を暗くして聴いた。6回目くらい聴いた頃だろうか。
僕ら3人は泣いていた。
なぜか熱い涙を流していた。
そして僕は、歌詞にあっ子ちゃんを重ね、10回目の卒業が終わる頃には、あっ子ちゃんを好きになっていた。
単純な男だ。
四月からは都会に
行ってしまうあなたに
打ち明けたい気持ちが
でもこのままでいいの
この歌詞の『都会』に、僕の行く高校を重ねた。この高校は、ただの隣町の城陽高校なのに。
しかも通いで行く僕。
そして僕らは次の日から、付き合い始めた。
僕は何度かデートをしたが、触れる事は出来なかった。触れたくもなかった。
僕はとにかく話し、笑わそうと、楽しませようと、いつも喋っていた。
けれど、半年が過ぎ、あっ子ちゃんが電話で別れを切り出して来た。
『私、話し上手より、聴き上手な人のほうがいいの。それと、先輩は私に興味がないの?』
そんな理由であったと思う。
僕の純情は、この時、音を立てて壊れた。
あっ子ちゃん、僕が君に興味ない訳がないやん。
話、聴いてあげられなくてごめん。
ずっと喋っていて、ごめん。
僕は心を言葉にせず、別れを受け止める返事だけをして、電話を切った。
その時、かすかに、こう想った記憶がある。
『これも青春なんやなぁ』
僕は当時、やたら青春という言葉が好きだったし、竹本孝之も大好きだった。
そして、それから3ヶ月後、僕はあっ子ちゃんに、復縁の告白をしに行く。
卒業した維孝館中学の校庭で、あっ子ちゃんに会った。あの手紙をもらった校庭で。
僕『もう1回、付き合ってくれへんか?』
あっ子『ごめんなさい。』
僕は頷き、すぐに校庭に背を向けた。たまたまあったサッカーボールを蹴飛ばして。
僕の純情は、また、風船のように破裂した。
寒い冬の雲が、いつもと変わらず、ゆっくりと流れていた。
嵐山あおや