そこは住民プールと呼ばれる所で、まだ出来て間もなく綺麗なプールだった。
友達のタケジとタニデとで、夜中12時くらいに網を乗り越えて入った。
プールサイドで真っ裸になり、冷たいプールで泳ぐ。まるで石油王のような快感だ。
ある夜、3人で泳いでいたら、懐中電灯の光が僕らを照らした。
『誰かいるのか!?』
一人の警備員が来たのだ。
でも警備員の声も恐る恐るといった感じだ。
カッパでもいるのか疑っているのかもしれない。カッパじゃなくても、そんな夜中にプールに誰かいたら怖いはずだ。
僕らも怖かった。そして、3人は声をひそめ、水に潜った。
警備員は戻って行った。その隙に僕らサッと服を着て、急いでプールから去った。
去る時、タニデが網から落ちた。タケジも僕も、あせっていた。
そして走った。
少し離れた自動販売機の前で、タニデが言った。
タニデ『パンツ忘れた!』
僕『パンツを忘れる?』
タケジ『どんだけあせってんねん!』
タニデ『どうしよ?』
僕『朝、プールサイドにパンツ置いたったら、おかしいやん!』
タケジ『取りに行こ!』
その日はパンツを取りに行き、帰って僕の家で寝た。
また別の日。
忍び込んで泳いでいたら、キレイな星が流れた。
3人はプールサイドに寝転んで、流れ星を数えた。何かを祈りながら。
流れ星は50や60を超えた。僕らは興奮した。きっと、なんとか流星群の日だったのかもしれない。
プールから180度見渡せるとして、160度を超える長さを流れた☆もあった。
今まで見た人生の流れ星の中で、それは抜群であった。
先日、田舎へ帰った時、そのプールはまだ同じ場所にあって、そのプールの横を通った時、
僕は35年前を思いだし、あの時と同じように、大きな空を見上げた。
嵐山あおや