こんにちは♫
嵐山の亀梨和也こと、あおやです!
さて、また昔の話をしよう。
池田はCBRというバイクに乗っていた。
たまたま、池田の部屋に白いヘルメットと、たまたま、黒のペイントマーカーが置いてあったので、
池田の一つ上の先輩である僕たちは、悪ノリをした。
池田が部屋を出ている間に、白のヘルメットに、池田がフラれた女の名前を大きく書いた。
ヨシコ。
そして僕らは、その文字を見えないようにヘルメットを置き、その日は帰った。
次の日の月曜。
池田は伏見高校にバイク通学をしていた。
必ず近くのバス停を通る。そのバス停には、同じ時間帯に通学する同級生や後輩がたくさんいた。
池田のヘルメットの落書きヨシコは、前方を向いて左側。
池田は朝、落書きを見て、やられた!と思ったらしいが、もうそれを被って通学するしかない。
けど落書きヨシコは見られたくないし、ヨシコ本人やヨシコの同級生が何人もバス停にいる。
未練たらしい男だと思われてもイヤだし、ヘルメットに名前を書いてる女々しい男だとも思われたくない。
さて、池田がバス停を通る時の事。左の落書きのヨシコが見えないように、池田は工夫をした。
ノートを切ってヨシコに貼り、セロテープで止めて家を出た。
百メートルで、ノートは飛んで行った。丸見えのヨシコ。
もうすぐバス停だ。
池田は左に並ぶ同級生の列を、ものすごくガン見して、左の落書きヨシコが見えぬよう、
首を同級生の列に向けて、バス停を通りすぎた。この光景を思い出してほしい。
通りすぎても、すぐに前を向いたら落書きヨシコが見えるので、首が痛くなるほどバス停を見て、通りすぎてから首をシュッと前にした。
バス停のヨシコや同級生たちは、池田君は誰を見てるの?と思った。
まさか、まだヨシコ本人を見てるの?
また次の日。
池田も消せばよいものを、ついつい消さずにヘルメットのヨシコを放置していた。
ヘルメットのヨシコと言っても、トイレの花子とは全然ちがう。
朝、池田はまたヘルメットのヨシコと共に、バイクにまたがった。
そしてバス停では、また謎のガン見。バス停の女の子たちは、池田は何を見てるのか、騒ぎ出した。
僕らの学校は綴喜郡の田舎で、電車も通ってない町なので、バス停には学生がいっぱいで、みんな顔見知りなのだ。
3日目の朝、池田がまたガン見でバス停を通る。変態みたいに。
見てもヨシコ本人がいるし、まっすぐ通ればヘルメットにヨシコがいるし。
池田、踏んだり蹴ったりだ。
その夜、友人の女の子から僕に連絡が来た。
『朝なぁ、池田君、バス停をめっちゃ見て通らはるねけど、あれ何?通り過ぎてからでも、ずっとバス停見てはるねん!気持ち悪いて噂やで!』
池田、すまん。僕たちがヘルメットに書いたせいで、お前は気持ち悪いとまで言われてるのか。
4日目の朝のこと。
池田のヘルメットにヨシコの文字はなく、白のヘルメットが黒で塗りつぶされていた。
池田は、まっすぐ前を見て、バス停を涼やかに通り過ぎて行った。
嵐山あおや
追記
池田は今、一級建築士としてがんばっている。