『ヘルメットの変態』 | 優勝

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天然と言われますが、人生楽しく、ちょっとアホでいい♪

昔、週刊SPA!てコラムを連載していましたー☆

とぼけたブログですが、よろしくお願いします♪

こんにちは♫
嵐山の亀梨和也こと、あおやです!


さて、また昔の話をしよう。





僕らが19歳の頃、池田という名の後輩の家に集まって遊んでいた。


池田はCBRというバイクに乗っていた。


たまたま、池田の部屋に白いヘルメットと、たまたま、黒のペイントマーカーが置いてあったので、


池田の一つ上の先輩である僕たちは、悪ノリをした。


池田が部屋を出ている間に、白のヘルメットに、池田がフラれた女の名前を大きく書いた。


ヨシコ。


そして僕らは、その文字を見えないようにヘルメットを置き、その日は帰った。


次の日の月曜。
池田は伏見高校にバイク通学をしていた。


必ず近くのバス停を通る。そのバス停には、同じ時間帯に通学する同級生や後輩がたくさんいた。


池田のヘルメットの落書きヨシコは、前方を向いて左側。


池田は朝、落書きを見て、やられた!と思ったらしいが、もうそれを被って通学するしかない。


けど落書きヨシコは見られたくないし、ヨシコ本人やヨシコの同級生が何人もバス停にいる。


未練たらしい男だと思われてもイヤだし、ヘルメットに名前を書いてる女々しい男だとも思われたくない。





さて、池田がバス停を通る時の事。左の落書きのヨシコが見えないように、池田は工夫をした。


ノートを切ってヨシコに貼り、セロテープで止めて家を出た。


百メートルで、ノートは飛んで行った。丸見えのヨシコ。


もうすぐバス停だ。


池田は左に並ぶ同級生の列を、ものすごくガン見して、左の落書きヨシコが見えぬよう、


首を同級生の列に向けて、バス停を通りすぎた。この光景を思い出してほしい。


通りすぎても、すぐに前を向いたら落書きヨシコが見えるので、首が痛くなるほどバス停を見て、通りすぎてから首をシュッと前にした。


バス停のヨシコや同級生たちは、池田君は誰を見てるの?と思った。


まさか、まだヨシコ本人を見てるの?







また次の日。
池田も消せばよいものを、ついつい消さずにヘルメットのヨシコを放置していた。


ヘルメットのヨシコと言っても、トイレの花子とは全然ちがう。


朝、池田はまたヘルメットのヨシコと共に、バイクにまたがった。


そしてバス停では、また謎のガン見。バス停の女の子たちは、池田は何を見てるのか、騒ぎ出した。


僕らの学校は綴喜郡の田舎で、電車も通ってない町なので、バス停には学生がいっぱいで、みんな顔見知りなのだ。


3日目の朝、池田がまたガン見でバス停を通る。変態みたいに。


見てもヨシコ本人がいるし、まっすぐ通ればヘルメットにヨシコがいるし。


池田、踏んだり蹴ったりだ。



その夜、友人の女の子から僕に連絡が来た。

『朝なぁ、池田君、バス停をめっちゃ見て通らはるねけど、あれ何?通り過ぎてからでも、ずっとバス停見てはるねん!気持ち悪いて噂やで!』


池田、すまん。僕たちがヘルメットに書いたせいで、お前は気持ち悪いとまで言われてるのか。





4日目の朝のこと。
池田のヘルメットにヨシコの文字はなく、白のヘルメットが黒で塗りつぶされていた。


池田は、まっすぐ前を見て、バス停を涼やかに通り過ぎて行った。



嵐山あおや


追記
池田は今、一級建築士としてがんばっている。