さて、『大甲子園』で大会11日目について書いていました。第1試合終了後、組み合わせ抽選がありました。
抽選の結果
西海ー花巻と六甲山の勝者
明訓と巨人学園の勝者ー光
青田ー西武学園と群馬二の勝者
紫義塾ー北海大三
と決定した。そして第2試合(西武学園vs群馬二)が始まった。
群馬二は1回戦大逆転の立役者中村がこの試合も先発した。(群馬二については、添付のような見立てをしている)
ただ、もともとエースではなかった中村である。3試合目となると疲れも出てきた。西武学園にじりっじりっと追い上げられる。
8−4となったところで、出発前の明訓ナインがテレビを見ているシーンに繋がるわけだ。
その後も西武学園は反撃、8−6となるが中村はなんとかしのぎ、群馬二が準々決勝進出を決めた。
「次の相手は群馬二に決まったぞ」
練習しているグラウンドで、シゲ監督の声が響いた。
「関係ねえ、いくぞえーじ」
「くるじゃん」
実際、球道が本調子を取り戻せば、投手力に不安のある群馬二は敵ではないだろう。そんな感覚は青田の全員にあった。
「スピードは出てきたな」
さて、第3試合(花巻ー六甲山)を追う前に、この試合中からリアルタイムで明訓および巨人学園に動きが見られます。そこでこの後は
①堀田をめぐる動き
②巨人学園の動き
③岩鬼の動き
④花巻ー六甲山戦
⑤明訓の動き
の順で書いていきます。つまり、より過去に遡る必要のある話から書いていくことになります。
堀田については
という流れで話を進めていました。これを踏まえ、話を展開しましょう。
巨人学園にとって有力選手の失踪は初めてではない。かつてのエース大友が失踪した際は、のんべ横丁で飲んだくれている姿を住吉理事長が見つけ、一球が連れ戻した。しかし今回はどこに行ったのか、住吉理事長にも見つけることはできなかった。
かつての一球ならば自分が探し回ったかもしれない。しかし今の一球は監督としてチームを束ねている立場がある。
「ほとぼり覚めたら戻ってくるさ」
という希望的観測に従うよりなかった。
そんな中、堀田の不在を気にかけるライバルがいた。神宮高校の五味連次郎である。
夏の大会前から、一球は五味に堀田の不在理由を打ち明けていた。五味は打倒明訓の思いを一球に託すと共に、堀田捜索をかって出てくれた。
「あいつが野球をやめるはずがない」
このような形になった以上、大阪に帰ったとは考えにくい。東京だ、東京の草野球かその周辺にいるはずだ。
そしてようやく手に入れた情報が、茜という喫茶店に堀田がよく現れるというものだった。
堀田はここ数ヶ月について、はっきりとは覚えていない。巨人学園を飛び出し、ひたすら歩いた。歩いて歩いて、疲れたところで寝た。
目覚めたらそこは草野球場だった。
「くそっ」
野球から離れられない自分、野球しかない自分が改めて思い返された。するとどうしても巨人学園のことが思い出される。
堀田は忘れたかった。忘れるには飲むしかなかった。
こうして草野球の代打屋で稼いでは酒に化けるという生活に陥っていった。
(続く)