2023年5月12日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Freestyle LVL UP 1 - Ninho
2 C'est carré le S - Naps
3 Demain - PLK
4 Bolide allemand - SDM
5 Flowers - Miley Cyrus
6 Jolie - Gaulois
7 Rush - Ayra Starr
8 Calm Down - Rema, Selena Gomez
9 La danse du roro - Naps
10 Secret - Louane
【アルバムチャート】
1 - (subtract) - Ed Sheeran
2 En temps réel - Naps
3 Carré - Werenoi
4 2069' - PLK
5 Guardians of the Galaxy Vol.3 - Multi-Interprètes
6 Liens du 100 - SDM
7 Alpha - Djadja & Dinaz
8 Diamant du bled - Zola
9 Mélo - Tiakola
10 Sincèrement - Hamza
「Les Flammes 2023」授賞式
フランスのヒップホップ・アワード「Les Flammes 2023」の授賞式が5月11日、パリ1区のセーヌ右岸に第二帝政時代の1862年に建てられた「シャトレ劇場(Théâtre du Châtelet)」で開催されました。Gazoの「KMT」が最高アルバム賞、Josmanのシングル「Intro」が作品賞を受賞。Dinos、Tiakola、Disiz、Dams、Dosseh、Hamza、Kalash、Maureen、Ronisia、Werenoi、Tarik Azzouz、Laylow、Aya Nakamuraが各賞を受賞しています。
今週はいつもの月曜配信に戻りました。
セーヌ=エ=マルヌ県(Seine-et-Marne/77)ヌムール(Nemours)出身のコンゴ系27歳、Ninho(ニノー)の「Freestyle LVL UP 1」がいきなりシングルチャート1位に登場。アルバムは2019年の「Destin」、2020年の「M.I.L.S 3」、2021年の「Jefe」で安定の連続最高1位。そろそろ次のアルバムが出る時期でしょうか?
10位のLouaneは映画『エール!(La Famille Bélier)』に主演したルアンヌ・エメラ(Louane Emera)26歳のこと。シングル「Secret」はアルバム「Sentiments」に収録されています。歌詞「Je vais te confier mon plus gros secret(あなたに私の最大の秘密を打ち明けたい)」って、どんな秘密?
UKのエド・シーラン(Ed Sheeran)が5月5日に出した6枚目のスタジオアルバム「-(subtract)」がフランスでもチャート1位に。「電卓シリーズ」前回は「=」、今回は引き算の「-」。では「%」や「√」を出した後、「AC」で過去を清算して新境地を開く? エドは9歳の時にエミネムのラップをマネして吃音が治ったそうです。音楽療法?
アルバム5位には5月3日発売のマーベル映画『Guardians of the Galaxy Vol.3』の2枚組サントラ盤が入りました。映画は同じ日に日本でも封切られています。収録曲はRadiohead、Heart、Rainbow、Earth,Wind & Fire、Alice Cooper、Beastie Boys、Bruce Springsteenなど大物ゾロゾロの競作です。
Cyril Mokaiesh(シリル・モカイシュ)
今週のSNEPチャートにはまだ上がっていませんが、今回は5月12日に6枚目のソロアルバム「Le temps de vivre」をリリースしたフランスのシンガーソングライター、Cyril Mokaiesh(シリル・モカイシュ)をご紹介します。新作はジョルジュ・ムスタキ(Georges Moustaki/1934年~2013年)の楽曲カヴァーで構成されたオマージュ(hommage)盤です。
シリル・モカイシュは1985年5月パリ生まれで現在38歳。レバノン系。少年時代はテニスの選手で、18歳でフランスのジュニアチャンピオンになるほどでしたが、2022年11月1日号でご紹介したヤニック・ノア(Yannick Noah/引退後に歌手に転身)のように全仏オープン王者になるまでには至りませんでした。
テニスの選手をやめて2007年、22歳の時にロックバンド「Mokaiesh(モカイシュ)」を結成してフロントマンとして活動後、2010年にシングル「Communiste(共産主義者)」でソロデビュー。2011年にEP「Du rouge et despassions(赤と情熱)」が左派系の雑誌「Les Inrockuptibles」の音楽評で絶賛され、以後、社会派の歌詞を弾き語りで歌うシンガーソングライターとして音楽界で地歩を築いていきます。2020年の前々作のアルバム「Paris-Beyrouth(パリ-ベイルート)」では、中東で「イスラム国」が猛威をふるった後、シリア情勢が混迷を深める中で、自らのルーツの地レバノンへの思いを歌ったシングル曲「Beyrouth(ベイルート)」が高く評価されました。
ジョルジュ・ムスタキはデビュー前からリスペクトしていたアーティストで、没後10年になる今年、念願のカヴァーアルバムを出すことができたそうです。1958年にエディット・ピアフに提供して大ヒットした「Milord(ミロ―ル)」をはじめムスタキの代表曲が独自のアレンジでほぼ網羅されていますが、G7広島サミット直前に発売しながら「Hiroshima」のカヴァーが収録されていなかったのは、日本人としてはちょっと残念でしょうか。
今回はタイトルチューンの「Le temps de vivre」をお聴きください。エジプト・アレキサンドリア生まれのギリシャ系ユダヤ人で自らを「地中海人」と称したコスモポリタン、ジョルジュ・ムスタキが歌った曲というと、日本では「異国の人(Le métèque)」や「私の孤独(Ma solitude)」がよく知られていますが、この「Le temps de vivre(邦題:生きる時代)」も、フランスでは今なお人気がある曲です。
もともとは1969年の映画『Le temps de vivre』のエンディングテーマだったのですが、「Viens, écoute ces mots qui vibrent sur les murs du mois de mai. Ils nous disent la certitude que tout peut changer un jour(拙訳:さあ、5月の壁に書かれた震えるような言葉を聞け。それは、全てはいつか変わることができると、確かに語ってくれるのだ)」という一節があるジョルジュ・ムスタキが書いた歌詞が1968年の五月革命(Mai 68)のスローガンを思わせるものだったため、現在では五月革命賛歌とみなされています。
どんなスローガンだったかは、次のブログ記事をご覧ください。55年も経過すると若い人から「五月革命って、何ですか?」と質問されたりするのですが……。
Cyril Mokaiesh(シリル・モカイシュ) - Le temps de vivre(生きる時代)
では、また来週
À la semaine prochaine!