仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

仏蘭西歌謡曲「Chanson Populaire」ロゴ
 
2026年1月6日号

 

2026年1月2日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Love You - Nono La Grinta

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Bloqué - Maître Gims, L2B

 9 Soleil Bleu - Bleu Soleil, Luiza

 10 Zou Bisou - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 Mega BBL - Théodora

 3 TP sur TP - JuL

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 La fuite en avant - Orelsan

 6 Pyramide 2 - Werernoi

 7 On s'en rappellera pas - Disiz

 8 Et si j'échoue - Bouss

 9 Hélé - Helena

 10 Recommence-moi - SANTA

 

 2026年、あけましておめでとうございます。本年で7年目になる「仏蘭西歌謡曲」をよろしくお願いします。

 新年最初のチャートのシングル1位は年が明けてもDisizとThéodoraの「Melodrama」でした。Théodora(セオドラ)はシングルトップ10では1位、10位、12位、23位に入り、アルバムトップ10でも2位で、2月のヴィクトワール音楽賞が楽しみです。8位にMaître GimsとL2Bの「Bloqué」が浮上。英語から日本語化した「ブロック」と同じ意味です。

 年末のフランスのチャートを「ビルボード化」させたクリスマスソングですが、マライア・キャリーもワム!もブレンダ・リーもあっさり圏外へ去りました。年末にまたお会いしましょう。1月6日はクリスマス飾りをしまってお菓子の「ガレット・デ・ロワ(Galette des Rois)」を食べる「公現祭(L'Épiphanie/レピファニー)」です。

 

Werenoi

 アルバムチャートは6位にWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」(2024年10月リリース)、8位にBouss(ブース)の「Et si j'échoue」(2024年11月リリース)が再浮上した以外は年末最終週と同じ顔ぶれでした。この2作は年越し連続1位のMaître Gims(メイトル・ギムス)先生の「Le Nord se souvient(L'Odyssée)」(2024年9月リリース)とともに、足掛け3年のトップ10入り。フランスのヒップホップシーンの「ロングランアルバム三羽ガラス」でしょうか?  

 

Les Enfoirés 2026(レザンフォワレ 2026)


Les Enfoirés

 フランスのポピュラー音楽界の新年の恒例イベント「Les Enfoirés(レザンフォワレ)」が来週、1月13日から19日まで、パリ12区のベルシー(Bercy)公園内に建つ「アコー・アレナ(Accor Arena)」で開催されます。パリでの開催は6年ぶりになります。

Les Enfoirésの公式サイト:https://www.enfoires.fr/

 アコー・アレナ(アコーホテルズ・アレナ)は、日本でもよく知られている9区の「オランピア劇場(L'Olympia)」、2015年11月のテロで世界的に有名になってしまった11区の「バラクラン劇場(Bataclan)」、19区のラ・ヴィレット公園内に建つジャック・ラング(Jack Lang)の文化政策の象徴的存在とも言える「ゼニス・パリ(Le Zénith Paris)」、モンマルトルの丘に近い歓楽街ピガール(Pigalle)地区の18区ロシュシュアール大通り(Boulevard de Rochechouart)に面した「ラ・シガール(La Cigale)」「ル・トリアノン(Le Trianon)」と並んで、海外アーティストの公演も行われる首都を代表する音楽コンサートホールです。それ以上の収容人数を求めるなら16区の「パルク・デ・プランス」やサン=ドニの「スタッド・ド・フランス」でのスタジアム・ライブになります。

 レザンフォワレ2026の公演日程は7日間ですが、13日にはゲネプロ(ドレスリハーサル/通し稽古)があり、17、18日の土曜、日曜がメインステージ。日曜日は2回公演です。チケットはすでに完売。3月上旬にはTF1でテレビ放送され、YouTubeでも公開されます。3月の同時期にはDVDやCDアルバムも発売され、アルバムは毎年、発売直後にSNEPアルバムチャートで首位になっています。

 このブログでは何度もご説明してきましたが、日本で言えば萩本欽一さん的な存在の有名コメディアンにして俳優のコリューシュ(Coluche)、ミュージシャンのジャン=ジャック・ゴールドマン(Jean-Jacques Goldman)、サッカーの名選手で「将軍」ことミシェル・プラティニ(Michel Platini/2014年には歌手(!)として公演に参加)が発起人で、コリューシュは1986年に交通事故で亡くなりますが、1989年にゼニス・パリで第1回公演が実現しました。

 毎年、ステージでは音楽ライブだけでなくミュージシャン自らが演じるコミカルな寸劇もあり、著名な俳優やスポーツ選手などのゲストも顔を出します。ベンゼマ選手やエムバペ選手も来ました。エンディングは毎回お約束で、ステージのコリューシュの大きな写真の前に出演者全員が勢揃いし、ジャン=ジャック・ゴールドマン作曲「La chanson des restos」を合唱して締めくくります。

 チケット、DVD、CD、記念グッズの販売収益や放送権料、広告収入、ネット収入は、コリューシュが1985年に設立し、昨年、日本の片山さつき財務・金融担当大臣も言及していた生活困窮者に食事を提供する団体「Les Restaurants du cœur(心のレストラン)」に寄付されます。現在、ダイニングカーも含めてフランス全土、ベルギー、ドイツの2000か所以上で食事を提供していますが、最近は世界的なインフレによる食材、光熱費の高騰で、運営が厳しくなっています。

 レザンフォワレはチャリティーイベントですが、日本の某テレビ局が夏の終わりに行って毎年批判が渦巻く某イベントと違って出演者は全員ノーギャラ貫徹。ポップス、ロックのミュージシャンが中心で、ラッパーは排除しているわけではないですが数は少ないです。

 昨年は計53組だった出演者リストは原則事前非公開ですが、出演したらハクがつくからなのか、近年は「レザンフォワレに出ますよ」と自らバラすのが流行っており、2026年はすでにフレンチポップスの大御所フローラン・パニー(Florent Pagny/今週アルバム12位)、6年ぶりに出る56歳のシンガーソングライター、ベナバール(Bénabar)、「スター・アカデミー」出身の若手からエレナ(Helena/今週アルバム9位)が、出演すると明らかにしています。

 SANTA(サンタ/今週アルバム10位)が「Les Enfoirés 2026」のL'hymne(アンセム)「Tout se casse」を作詞・作曲し、YouTubeで1月5日に公開されました。ということは、サンタも出演は確実でしょう。

 Les Enfoirés(レザンフォワレ) - Tout se casse (Visualizer)

 レザンフォワレの原点、発起人の皆さん他による1986年の「La chanson des restos」もお聴きください。

Les Enfoirés(レザンフォワレ) - La chanson des restos (clip officiel HD) (86)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス歌謡曲 Chanson Populaire
 
2025年12月30日号

 

2025年12月26日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 All I Want For Christmas Is You - Mariah Carey

 3 Mon bébé - RnBOi

 4 Last Chirtmas - WHAM!

 5 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 6 Love You - Nono La Grinta

 7 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 8 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 9 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 10 Rockin' Around The Christmas Tree - Brenda Lee

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 TP sur TP - JuL

 3 Mega BBL - Théodora

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 La fuite en avant - Orelsan

 6 Grandeur nature - Florent Pagny

 7 Recommence-moi - SANTA

 8 Lux - Rosalía

 9 Hélé - Helena

 10 On s'en rappellera pas - Disiz

 

 今週は2025年最後のチャートですが、DisizとThéodoraの「Melodrama(メロドラマ)」のシングルチャート1位がこれで11週連続になりました。トップ10では2位にマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」、4位にワム!の「Last Christmas」、10位にブレンダ・リーの「Rockin' Around The Christmas Tree」が入り、以下13位にアンディ・ウィリアムズ、16位にザ・ロネッツ、17位にマイケル・ブーブレ、19位にエド・シーランとエルトン・ジョンのクリスマス・ソングがチャートインして「ビルボードチャート化」しています。

 アルバムチャート1位にMaître Gimsの「Le Nord se souvient(L'Odyssée)」が返り咲き。2024年9月13日リリースで、実に1年3カ月もチャート上位にいます。

 

KPop Demon Hunters

 アルバム4位は「KPop Demon Hunters」(邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)。6月20日発売で、8月8日にSNEPアルバムチャートのトップ10に初登場して以来のロングラン。アメリカのミュージカル・アニメ映画『KPop Demon Hunters』(ソニー・ピクチャーズ製作/Netflix配給)のサウンドトラック盤で、映画はK-POPガールズグループHUNTR/X(ハントリックス)が、悪霊の化身であるK-POPボーイズグループSaja Boys(サジャ・ボーイズ)と戦って成敗するというストーリーです。女は強い。写真は歌唱を担当するRumi(ルミ)役のEJAE(イジェ)、Mira(ミラ)役のAudrey Nuna(オードリー・ヌナ)、ゾーイ(Zoe)役のREI AMI(レイ・アミ)。今週のシングル7位には彼女たちの「Golden」が入っています。

 9位にHelena(エレナ)、10位にDisiz(ディズ)のアルバムが再浮上しました。 

 

Disiz(ディズ)


Disiz

 今週のアルバム10位にDisiz(ディズ)の14枚目のスタジオアルバム「On s'en rappellera pas」(「僕らはそれを思い出すことはないだろう」というような意味)が再浮上しました。20曲入りで11月21日リリース。11月28日付チャートではAya Nakamuraの「Destinée」に次ぐ2位まで上昇しています。ちなみにその週の3位はシングルのデュエットの相方、Théodora(セオドラ)の「Mega BBL」(今週もアルバム3位)でした。

 ディズは1978年3月にソンム(Somme/80)県アミアン(Amiens)で生まれ、パリ郊外のエソンヌ(Essonne/91)県エブリー(Évry)で育った47歳のラッパーです。セネガル系で本名はSérigne M'Baye Gueye。Disiz la Pesteというステージネームで2000年にデビューしましたが、名義はそれとDisizを併用しています。

 デビューシングル「J'pète les plombs」(「自分のヒューズが飛んだ」転じて「理性を失った」「キレた」というような意味)は最高6位、デビューアルバムの「Le poisson rouge」(金魚)は最高5位と、キャリアは上々のスタート。アルバムでは2012年の「Extra-Lucide」(最高6位)、2017年の「Pacifique」(最高8位)、2022年の「L'Amour」(最高4位)が、シングルでは2022年にDamso(ダムソ)をフィーチャーした「Recontre」(最高1位)がトップ10入りした実績があります。

 ミュージシャンとしての活躍以外に、俳優として映画や演劇やテレビドラマに出演したり、ラジオパーソナリティーとして自分の番組を持ったりもしています。27歳の時にはDenis Thybaud(デニス・ティボー)監督の映画『Dans tes rêves』(2005年)で主演を務めました。ヒップホップの世界でスターになる夢を持った若きラッパーの役です。デビューアルバム「Le poisson rouge」はジョエル・シュマッカー監督のサイコスリラー映画『フォーリング・ダウン』(1993年)にインスパイアを受けて制作したそうで、彼には映画マニアの一面もあるようです。

 2000年代には父親の故郷のセネガルをたびたび訪問して現地で独自制作のカセットテープ(スマホがまだ普及していない当時のアフリカでは重要な音楽媒体)を出したり、曲の中で「ティアロワイ虐殺事件」(1944年12月)をとりあげてフランス政府のアフリカ政策を批判したり、セネガル生まれで社会党から出馬したフランス大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)氏を応援したり、弁護士になろうと「DAEU」(バカロレアに代わる大学入学資格。日本の「高卒認定試験(旧・大検)」のようなもの)に合格して法科大学院に入学したりしています。2010年以降は音楽活動に専念しますが、エレクトロポップやパンクロックに接近したこともあります。「いろいろやってみたい人」のようですね。

 2025年はThéodora(2025年6月17日号参照)とのデュエット・チューン「Melodrama(メロドラマ)」が10月からシングルチャート首位を独走中。2月に授賞式があるヴィクトワール音楽賞の有力候補でしょう。今回は新作アルバム「On s'en rappellera pas」から、ロック名曲メドレー「Rockollection」(1977年)で知られる77歳のポップスター、ローラン・ヴルジー(Laurent Voulzy)との異色のコラボチューン「Surfeur」(サーファー)をお聴きください。お前サラサラ、サーファー・ガールと、女性をいとおしんでいる曲です。

 

※新年早々、2026年1月13日から19日まで、日本の片山さつき財務大臣も言及した団体「Restos du cœur」を支援する毎年恒例の音楽イベント「Les Enfoirés」が、パリ12区ベルシー公園内のアコー・アレナ(Accor Arena)で開催されます。

※本ブログの2025年の配信は今回が最終です。この一年、お世話になりました。来年2026年、良いお年をお迎えください。「仏蘭西歌謡曲」もよろしくお願いします。なお、2025年の年間チャートは2026年1月13日号または1月20日号で掲載する予定です。 

 

Disiz - Surfeur feat. Laurent Voulzy

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスのシャンソン人気チャート
 
2025年12月23日号

 

2025年12月19日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 6 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Bloqué - Maître Gims, L2B

 9 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 TP sur TP - JuL

 2 La fuite en avant - Orelsan

 3 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Grandeur nature - Florent Pagny

 7 Recommence-moi - SANTA

 8 Lux - Rosalía

 9 Il faut que tu saches - Slimane

 10 Cœur maladroit - Maline

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama(メロドラマ)」のシングルチャート1位はこれで10週連続と2ケタに到達。シングルトップ10を見れば前週と比べて5位と6位、8位と9位が入れ替わっただけでした。クリスマス直前なので、11位にマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」が迫っていて、ワム!の「Last Christmas」も15位です。JuL(ジュール)は単独ではシングル最上位が「Nostalgique」の21位にとどまり、アルバムとは好対照です。

 

JuL

 アルバムチャート1位は前週に続いてJuLの「TP sur TP」でした。12月5日の発売後の3日間で11万6783枚を売り上げ、しかもデジタル配信全盛のこの時代に、その94%がアナログ盤またはCDという「形あるもの(physique)」のセールスでした。もちろんそれはパリ、マルセイユでの彼のコンサートのチケット購入権がついているからでした。

 2位には前週は13位だったOrelsan(オレールサン)の「La fuite en avant」がトップ10に再浮上。タイトルは日本語で言えば「やぶれかぶれ」「向こう見ず」というような意味です。8位にスペインの歌姫、Rosalía(ロザリア)の生涯最高のヒット作になった「Lux」が再浮上しました。クリスマス・イヴの夜、静かに聴きたいアルバム、ですか? 

 

Florent Pagny(フローラン・パニー)


Florent Pagny

 フレンチポップスの大御所、というより本ブログでは「The Voice(フランス版)」「Star Academy」のようなオーディション番組の審査員(兼任コーチ)として頻繁にその名が出てくるFlorent Pagny(フローラン・パニー)ですが、9月12日にリリースされた2年ぶりの17曲入りの新作「Grandeur nature」(9月19日付最高1位)が今週、6位に再浮上しました。自身名義のアルバムでは29枚目、スタジオアルバムに限れば22枚目になり、そのうち10枚がSNEPアルバムチャートで1位になっています。

 本ブログでは2020年3月31日号、2023年9月5日号で彼のプロフィールをくわしくご紹介していますが、1961年11月6日、ブルゴーニュ地方のソーヌ=エ=ロワール(Saône-et-Loire/71)県シャロン=シュル=ソーヌ(Chalon-sur-Saône)生まれの64歳。シングル1位になった大ヒット曲には、1988年のデビュー曲「N'importe quoi(邦題:無用な愛)」、1997年の「Savoir aimer(邦題:希望)」、2003年の「Ma Liberté de penser(邦題:考える自由)」があります。

 フローラン・パニーは俳優としても活躍。26歳の時にはフレンチ・ロリータの代表選手ヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis/今週アルバムが24位)当時15歳と浮名を流して(おまわりさん、この人です)芸能メディアに「おいしい話題」を提供しながら、彼らに自作曲「Presse qui roule」で反撃することも忘れませんでした。最近は肺がんを患っていますが、南米アルゼンチン・パタゴニア地方の荒野に建てた自宅兼スタジオには、パスカル・オビスポ(Pascal Obispo)やケンジ・ジラク(Kendji Girac)ら後輩のミュージシャンがはるばる訪れています。2025年にはフランス政府から芸術文化勲章オフィシエ(Officier de l'ordre des Arts et des Lettres)を受章しています。

 さて、新作アルバム「Grandeur nature」のタイトルはフランス語では「雄大な大自然」「ありのままに」「原寸大」「等身大」など複数のニュアンスをはらんでいますが、ヴィアネ(Vianney)やマルク・ラヴォワーヌ(Marc Lavoine)らが曲を提供し、吹きすさぶ風の音を聞きながらパタゴニアの大自然の中でレコーディングをした、という解釈がこの人には最もふさわしいでしょうか。9月18日のラジオ局France Bleu改め「Ici」の番組内では「私の役割はメッセンジャーであること」「すべての人にも、私自身にも響くような普遍的なメッセージを見つけたい」「希望、愛、明るい未来を語るポジティブなメッセージを発信している」と語っています(拙訳)。

 収録曲からタイトルチューン「Grandeur nature」をお聴きください。年を重ねても、がん闘病生活を経験しても、そのポップロック路線はしっかり健在。本人は「タバコをやめたからね」と言ってますが、歌声は艶を失っていません。

 

Florent Pagny(フローラン・パニー) - Grandeur Nature (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲チャート
 
2025年12月16日号

 

2025年12月12日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 9 Bloqué - Maître Gims, L2B

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 TP sur TP - JuL

 2 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 3 Il faut que tu saches - Slimane

 4 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 5 Cœur maladroit - Maline

 6 Mega BBL - Théodora

 7 Grandeur nature - Florent Pagny

 8 Bitume Caviar (Vol. 2) - Isha & Limsa D'Aulnay

 9 Memento Mori:Mexico City - Depeche Mode

 10 Recommence-moi - SANTA

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」のシングルチャート1位はこれで9週連続です。記録をどこまで伸ばすのか。9位にMaître GimsとL2Bの「Bloqué」(ブロック)が浮上。これは企画盤GP Explorerの「The Last Race」(今週アルバム11位)に便乗した曲とも言えます。JuL(ジュール)の新作アルバム収録曲がシングル11位、22位、24位、26位、29位、34位に入りましたが、1曲もトップ10に届かなかったのは人気に陰り?

 そのフレンチラップ(ラップフランセ)マルセイユ・コネクションの首領(ドン)、JuLの新作アルバム「TP sur TP」が、12月5日の発売後3日間でフランス音楽史上最高の売上記録を更新してSNEPアルバムチャート1位。この32曲入りダブルCDを購入すれば来年4月のパリとマルセイユのジュールの公演チケット購入権が得られるというAKB48顔負けの抱き合わせ商法を展開したことでいまフランスでは賛否を呼んでおり、SNEPも問題視しています。

 反対派は「支配的地位を乱用した不公正な取引でEU競争法違反だ」と主張しますが、賛成派は「コンサートではCD購入を条件としない座席も用意されている」「アヤ・ナカムラも同じことをやっていた」と反論。CD購入が条件の座席の割合はアヤ・ナカムラ3割に対し、ジュールのほうは8割もあるそうですが、欧州委員会競争総局の判断は、いかに?

 ちなみに日本の公正取引委員会は「CD握手券商法」について、「ファンが自発的に購入しているとみなされれば独占禁止法違反の抱き合わせ販売とは断定しにくい」という見解を出しています。

 5位にMarine(マリーヌ)の6月27日発売「Cœur maladroit」(不器用な心)が再浮上しました。7月に最高2位。マリーヌは2月にTF1「スター アカデミー」のシーズン12で優勝した25歳の女性シンガーソングライター。フランス最北部パ=ド=カレー(Pas-de-Calais/62)県アラス(Arras)の生まれで、2025年7月8日号でくわしくご紹介しています。

 

Isha &Limsa D’Aulnay

 今週アルバム8位にIsha & Limsa D'Aulnay(イシャ&リムサ・ダルネー)の「Bitume Caviar (Vol. 2)」がチャートインしました。タイトルは「アスファルトのキャビア」という意味で12月1日リリース。Ishaはベルギーのヴォリュウェ=サン=ランベール(Woluwe-Saint-Lambert)出身、Limsa D'Aulnayはフランスのセーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県オルネー=スー=ボワ(Aulnay-sous-Bois)出身で、ともに39歳の中堅ラッパー。タリス改めユーロスター・デュオの13曲入りコラボ盤のコンセプトは「更生したチンピラの憂鬱と30代の人生が交錯する世界」だそうです。

 9位は1980年から活動し2020年に「ロックの殿堂」入りしたUKニューウェイヴの泰斗、Depeche Mode(デペッシュ・モード)のメキシコシティ公演のライブアルバム「Memento Mori:Mexico City」(12月5日発売)。11月2日はメキシコの「死者の日(Día de Muertos)」でした。Memento Mori(メメント・モリ)はラテン語で「死を想え」という意味。インドで撮られた「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」というキャプションがついた衝撃の一枚が今なお「伝説」として語られる同名の藤原新也氏の写真集が発刊されたのは1983年でした。当時「インドに行ったら人生が変わる」と盛んに言われましたが、私はその後、インドには計3回も行ったのに、人生、なんにも変わりませんでした(苦笑)。

 YOASOBIの幾田りらさんも参加したOrelsan(オレールサン)の「La fuite en avant」は今週13位で、トップ10から滑り落ちました。盛者必衰の理。

 

Slimane(スリマン)


Slinmane

 12月5日リリースの「Il faut que tu saches」(「君は知る必要がある」という意味)が今週のアルバムチャートで3位に初登場したフレンチポップスのシンガーソングライター、Slimane(スリマン)は、2022年9月13日号と、ユーロヴィジョン・ソングコンテストで4位になった後の2024年5月21日号でくわしく解説していますが、おそらく大ヒットした2019年のVitaa(ヴィタ)とのデュエット曲「Je te le donne」(最高12位)で彼を知った人も少なくないことでしょう。

 1989年10月、セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県シェル(Chelles)生まれの36歳。本名はSlimane Nebchiといいアルジェリア系です。少年時代は教会でゴスペルを歌い、学生時代はパリ9区と18区にまたがる盛り場ピガール(Pigalle)地区の酒場でピアノを弾きながら曲を書いていました。2016年、フランス版「The Voice」第5シーズンに出場してフローラン・パニーら審査員全員が推薦し一般投票でも首位という完全優勝を遂げ、26歳でメジャーデビューしています。

 2016年のデビューアルバム「À bout de rêves」は最高1位、2018年のセカンドアルバム「Solune」は最高2位、2019年のVitaaとの共作アルバム「VersuS」は最高1位、2022年のアルバム「Chroniques d'un Cupidon」は最高1位でした。3年ぶりに出した「Il faut que tu saches」は5枚目のアルバムになります。2023年リリースのユーロヴィジョン・ソングコンテスト出場曲「Mon amour」はシングル最高2位というヒットを飛ばしています。

 さて、12曲入りの新作アルバムはアーバンポップ、R&B、ヒップホップなど、さまざまな音楽要素を取り入れていますが、収録曲からMVが11月7日に先行公開された「Mieux que moi」をお聴きください。最後は次のようなリフレインで締めくくっています。

Oh mon dieu dis moi c'que j'fais là. Trop souvent j'me d'mande pourquoi moi. Oh j'espère mon dieu que tu m'pardonneras. Ce monde est fou mon dieu mais tu l'sais mieux que moi. 

(拙訳)「ああ、私の神様、私がここで何をしているのか教えてください。何度も何度も、私はなぜここにいるのかを考えています。ああ、私の神様、私を許してください。この世界は狂っています、神様。とはいえど、あなたはそのことを私よりもよくご存知です」

 まるで告解(confession)のような歌詞(paroles)ですが、おそらく、彼が原点回帰してみたいのは、少年時代に親しんだゴスペルなのでしょう。

 

Slimane(スリマン) - Mieux que moi (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

仏蘭西歌謡曲 Chanson Populaire en France
 
2025年12月9日号

 

2025年12月5日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 9 +971 - Ninho

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 Hélé - Helena

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Adrénaline - M.Pokora

 5 La fuite en avant - Orelsan

 6 Grandeur nature - Florent Pagny

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Destinée - Aya Nakamura

 9 On s'en rappellera pas - Disiz

 10 IV Saisons - Keen'V

 

「Melodrama」のシングル1位はこれで8週連続。9位にNinhoの「+971」が登場しました。国際電話ならアラブ首長国連邦 (UAE) の国番号ですが、リリックの中身はUAEとは無関係な、やさぐれたラップ・フランセです。下を見ると16位にMariah Carey(マライア・キャリー)の「All I Want For Christmas Is You」、28位にWham!(ワム!)の「Last Christmas」が浮上してきて「ああ、もう12月なんだなぁ」と感じさせます。マライア、ワム!、山下達郎さんで音楽業界の「歳末季節商品御三家」ですね。

 今週はなぜか再浮上組が多いアルバムチャート。1位はMaître Gims先生の「Le Nord se souvient(L'Odyssée)」。初回ヴァージョンのリリースは2024年9月13日で、日本は甘く見てはいけないチュニジアの守備並みの粘り。2位のHelena(エレナ)の「Hélé」は3月14日発売で、3月21日付では1位でした。2025年3月25日号でくわしくご紹介しましたがベルギーの女性シンガーソングライターで、2023年にTF1「Star Academy」第11シーズンに出場し、準決勝でピエール・ガルニエに敗れましたがメジャーデビューを果たしています。ベスト8の壁を破ったのが評価された? 日本もあやかりたい。

 

M.Pokora

 アルバム4位に、M.Pokora(M・ポコラ/Matt Pokora)が2025年3月21日にリリースし、3月28日付で1位になった通算10枚目の「Adrénaline」が再浮上しました。2025年4月1日号でくわしくご紹介しましたが、ストラスブール(Strasbourg)生まれの40歳のシンガーソングライターで、少年時代から故マイケル・ジャクソンの信奉者でした。現在ヨーロッパツアー中で11月28日に出身地ストラスブールのZénith(ゼニス)で凱旋公演を行っています。

 彼の父親は70-80年代にリーグ・アンのメスやトロワなどに在籍して通算46ゴールをあげたストライカーAndré Tota(アンドレ・トタ)で、ナンシーやサンテティエンヌにいた「涅槃で待ってる」ミシェル・プラティニとほぼ同世代。息子はポーランド系なのでPokoraと名乗っています。

 6位のフレンチポップスの大御所Florent Pagny(フローラン・パニー)の22枚目のアルバム「Grandeur nature」も再浮上組。9月12日リリース。アフロビートの女将軍Aya Nakamura(アヤ・ナカムラ)の前週1位「Destinée」は、再浮上組の群れに押し出され今週、順位を8位まで下げました。このまま引き下がるとは思えませんが、逆襲はあるでしょうか?

 

Keen'V(キーン・ヴェー)


Keen'V

 今週のアルバムチャート10位に11月28日発売の12曲入り新作アルバム「IV Saisons」が登場したKeen'V(キーン・ヴェー)は、レゲエ起源のダンス・ミュージック「ラガ(Ragga)」にかけてはフランスを代表するミュージシャンです。2021年5月18日号でとりあげていますが、それから4年半も経過したので、改めてプロフィールをご紹介します。

 1983年1月、ジャンヌ・ダルクが広場で火あぶりになった町、ノルマンディー地方のセーヌ=マリティーム(Seine-Maritime/76)県ルーアン(Rouen)生まれの42歳。本名はKevin Bonnetで、Keen'Vは「キーン・ヴェー」またはV=5とみなして「キーン・サンク」と読みます。

 カリビアン・ミュージックが大好きな消防団員がルーアンのクラブでたまたまDJを任されたその夜、お客さんに大ウケしたことがプロのミュージシャンになるきっかけでした。DJとして全仏のクラブを回り、「レゲエ」や「ラガ」の定番曲に交じって自作曲もちゃっかり披露。それが認められて25歳だった2008年、「Phenom'N」でアルバムデビューします。

 2011年、シングル「J'aimerais trop」が最高3位、セカンドアルバム「Carpe Diem」が最高9位になり、その名を広く知られます。2012年のアルバム「La vie est belle」が最高2位、2013年のアルバム「Ange ou démon」で初の最高1位になって以降、「Saltimbanque」(2014年)、「Là oú le vent me mène」(2015年)「7」(2017年)が3作連続で最高1位を記録します。2019年の「Thérapie」、2021年の「Rêver」は最高2位でしたが、2022年のアルバム「Diamant」で再び最高1位になっています。シングルでは2013年の「La vie du bon côté」が最高6位とヒットを飛ばしました。

 Keen'Vの音楽の特徴はもともと「歌詞(paroles)はちょっとエッチだけど、曲はダンサブルでノレる」というもの。ラガ、レゲトン、メレンゲ、アフロビートなどがクロスオーバーして、リゾート気分で聴ける「夏男」路線でした。3年ぶりに出したスタジオアルバム「IV Saisons」はどうでしょうか?

 収録曲から、9月にMVが先行公開された「Regarde-moi」(僕を見て)をお聴きください。「エッチ路線」を封印したまじめな歌詞をストレートに訴えかけるような曲調。40歳を過ぎて、イメージチェンジを図っているような感じもしますが……。

 

Keen'V(キーン・ヴェー) - Regarde-moi

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

イベント仕置人

                            寺尾淳

 

其ノ一  国際花と緑の博覧会(花の万博)の巻

 

花と緑でお化粧されたハイテク都市よりも「田園都市」を見たかった

 

 大阪の鶴見緑地で4月1日から開かれていた「国際花と緑の博覧会(花の万博)」は、先日、9月30日をもって閉幕した。入場者は約2300万人を数え、協会では目標入場者数2000万人を達成して黒字決算の見通しもつき、「花の万博」は成功であったと発表している。しかし、実際にこの博覧会の会場を歩いてみると、「都市」と「自然」とがエリア別にはっきりと隔離させられたレイアウトには旧態依然たる都市思想しか感じられず、この博覧会は最初のマスタープランの段階で、時代を先取りした企画の先進性という面では、すでに勝負がついていたのではないかと思わざるを得ない。

 

 140ヘクタールに及ぶ広大な会場は「街のエリア」「山のエリア」「野原のエリア」の3ブロックに分かれている。「山のエリア」は、なだらかな小高い丘を中心に花壇や林があしらわれた庭園であり、散策には絶好の場所といえる。日本全国や世界中の花を見ながら歩くのは気持ちがいい。

 ところが、山から「街のエリア」に下りていくといささか興ざめする。パビリオン群が林立したその区域は「都市」に見立てられているのであるが、その「人工美の競演」だけを写真に撮り、花博未体験の人に見せて「これはつくば博です」「横浜博です」と紹介しても、必ず信じてもらえるだろう。ひょっとすると「70年の大阪万博です」と言っても、だませるのではないか。

 そう、この「街のエリア」に限っては、10年、20年経とうと変化のない博覧会の「究極のワンパターン」ぶりを、再び露呈しているのである。パビリオンの中身といえば、企業が持てるハイテクを駆使して、観客を「いいだろう、すごいだろう」と圧倒する「未来産業見本市」や「勧業博覧会」ばかりだ。

 

 口の悪い人間はそれを「子供だまし」と呼ぶ。

 私は「またか」と思った。

 

 それでも見せ物好きの人間は絶えない。どのパビリオンにも長い行列ができ、「街」の通りは「巡礼」の「善男善女」でごった返していた。たぶん、帰れば皆、ハイテクのありがたい「霊験」や「功徳」を語り広めるのであろう。

 

 もちろん、この「街のエリア」にも花壇や街路樹はある。しかし、それはあくまでも「都市緑化」の範囲にとどまっている。自然をいったん破壊した後に、樹木や花を植えて都市を緑化しようというこの行為は、都市文明が古代メソポタミアで始まって以来何千年もの間、人類が代々受け継いできた一種の「贖罪(しょくざい)行為」に他ならない。それでもなお都市住民たちは「街には自然がない」と嘆きながら、「手つかずの自然」を求めて郊外に足を伸ばした。200年前、現在の東京よりもはるかに緑が多かった「江戸」の都市住民たちさえも、上野の山に花見に「行き」、日光や江ノ島に物見遊山に「行った」。

 花の万博も、その古典的な「都市緑化」のパターンを踏襲しており、ポリシーの点で新味はない。もし「街のエリア」に住民がいるとしたら、本当に自然に親しみたければ「山のエリア」やに「行け」ということらしい。それでは今の東京や大阪の状態と、何ら変わるところがないではないか。

 

 日本には以前から、自然を残しながら都市機能を整備していこうという「田園都市」という構想がある。花の万博に当てはめるなら、「山のエリア」も、「野原のエリア」も、「街のエリア」も全部ごちゃ混ぜにしたような都市を建設しようという構想だ。手つかずの自然に親しみたいと思ったら、すぐそばにそれがあるから、わざわざ電車やクルマで郊外に足を伸ばさなくてもいい。この「田園都市」構想は、これまでの「自然破壊→緑化」というワンパターンの「贖罪(しょくざい)の構造」とは全く異なった、「都市と自然の関わり方」の新発想を示すものではないかと私は思う。

 

「田園都市」に近い形の都市計画を、私は今年6月、オーストラリアで見た。

 

 オーストラリアの南部にアデレードという都市がある。人口はちょうど100万人。訪れた時、南半球では冬の始まりの季節だったが、街はみずみずしい緑にあふれていた。砂漠に近いこの地方では、夏は40度を超えるすさまじい暑さと干ばつに襲われ、植物は一斉に枯れてしまう。だから、雨期の始まる秋は草木が芽ぶく新緑の季節なのである。

 この街は二重都市である。中心部の1キロ四方は「旧市街」で、行政地区や商業地区となっている。それを丸く取り囲むように幅500メートルほどの緑地帯があり、その外側に南欧風のコテージが立ち並ぶ住宅地区の「新市街」がずっと郊外まで広がっている。

 昔は市街地は旧市街の区域だけで、周囲には森が広がっていたそうだが、人口の膨張に伴って、旧市街の周囲の森を伐採して住宅地を作ろうという話が持ちあがった。この時、市議会で自然保護の論議が高まり「旧市街の周囲に森を残し、その外側に住宅地を作るように」という議決が通った。こうして、他の大都市では類を見ない都心の大グリーンベルトが生まれたのである。

 その緑の都市計画ゆえに、アデレードはオーストラリア西海岸のパースとともに「ガーデン・シティ(庭園都市)」と呼ばれている。

 自然の森や沼地をそのまま残したアデレードの緑地帯は動植物の宝庫である。住宅地の間を横切ってリスが走り、ユーカリの木の上には渡り鳥が巣を作る。この街では、自然と親しむのに遠くへ行く必要はない。手つかずの自然が、手の届く範囲にあるからだ。これこそまさに「田園都市」ではないか。

 

 花の万博協会発行の公式ガイドブックには、博覧会の「ねらい」とは「花と緑と人間生活のかかわりをとらえ、21世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす」ことであると書いてある。ならば、都市での「花と緑と人間生活のかかわり」とは、花や緑をわざわざ「見に行く」ことではなく、日常生活の手の届く範囲内で「見る」ことではないのか。しかも、その花や緑は人工のものでなく、ありのままの自然であればベストであるはずだ。それを博覧会ならではの目に見えるやり方で、はっきりと具体的に示していただきたかった。

 

 花の万博には、人工物の匂いが、あまりにも多すぎた。

 

 

                          仕 置 控 帖

 

 行きやすい度

 

★★★

 

渋滞ない地下鉄で行ける点は評価していい

 

デラックスだ度

 

★★★

 

70年の大阪万博並みには金をかけている

 

  体が楽だ度

 

 

やたらに広い場内は自分の足だけが頼りだ

 

女の子きれい度

 

★★

 

いい女は大阪には残らないのかと思った

 

 雰囲気いい度

 

★★

 

お祭りムードを盛り上げる演出がイマイチ

 

   遊べる度

 

★★

 

ありきたりの遊園地だけではつまらない

 

  おいしい度

 

 

外食チェーンばかり食いだおれの名が泣く

 

    安い度

 

 

むちゃくちゃボるえげつない大阪商法も

 

   エコロ度

 

★★★

 

透水性の新型舗装は評価できるが不徹底

 

 繁盛してる度

 

★★★

 

猛暑で不入りだが9月は激しく追い込んだ

 

   総合採点

 

★★

 

全般に辛目の採点をせざるを得ないようだ

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスのシャンソン ポピュレール
 
2025年12月2日号

 

2025年11月28日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 SKZ IT TAPE 'DO iT' - Stray Kids

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Love You - Nono La Grinta

 7 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 8 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 9 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Destinée - Aya Nakamura

 2 On s'en rappellera pas - Disiz

 3 Mega BBL - Théodora

 4 La fuite en avant - Orelsan

 5 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 6 Recommence-moi - SANTA

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Nouveau souffle - Claudio Capéo

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Lux - Rosalía

 

「Melodrama」のシングル1位は今週でなんと7週連続です。3位に韓流8人組ボーイズStray Kids(SKZ/ストレイキッズ)の「SKZ IT TAPE 'DO iT'」が入り、以下前週比で順位1ランクずつ繰り下がりというトップ10でした。この曲は全米ビルボードチャートで1位になっています。10位の「ZOU BISOU」は、60年代にジリアン・ヒルズ、ソフィア・ローレン、森山加代子さんが歌ったイエイエ(Yé-yé)チューン「Zou Bisou Bisou(ズビズビズー)」とは別物の曲でした。

 

Aya Nakamura

 今週のアルバムチャート1位は、今や大物の貫禄あり。マリ出身のAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)のニューアルバム「Destinée」(運命)が登場。18曲入りで11月21日リリース。2023年の「DNK」以来2年ぶり5枚目のスタジオアルバム。収録曲の「No Stress」も今週シングル13位です。

 2位はDisiz(ディズ)の4枚目のスタジオアルバム「On s'en rappellera pas」(「僕らはそれを思い出すことはないだろう」という意味)。20曲入りで11月21日に出ました。ディズはアミアン(Amiens)出身の47歳のセネガル系のラッパーで、2022年にアルバム「L'Amour」が最高4位になった実績があります。Théodoraとのデュエット・チューン「Melodrama」がシングルチャート首位を独走中。

 2週連続1位だったOrelsan(オレールサン)の新作アルバム「La fuite en avant」は4位に後退しました。6位に入ったのが2024年5月24日発売のSANTA(サンタ)のアルバム「Recommence-moi」で約1年半ぶりの再浮上。サンタはニース(Nice)出身の34歳の女性シンガーソングライターで、2024年1月9日号でくわしくご紹介しています。ロックバンドのHyphen Hyphen(ハイフン・ハイフン)にいました。

 

Claudio Capéo(クラウディオ・カペオ)

 

Claudio Capéo

 今週、アルバム8位に3年ぶりの新作「Nouveau souffle」(11月21日リリース、15曲入り)がチャートインしたClaudio Capéo(クラウディオ・カペオ)は、アコーディオンを抱えた姿がトレードマークのフレンチポップスのシンガーソングライターです。1985年1月、アルザス地方南部、オー=ラン(Haut-Rhin/68)県セルネー(Cernay/アルザス語ではSanna/ドイツ語ではSennheim)生まれの40歳。本名はClaudio Ruccolo(クラウディオ・ルッコロ)といいイタリア系です。2020年12月15日号でくわしくとりあげていますが、久しぶりの登場なので音楽歴を改めてご紹介します。

 アコーディオンとの出会いは6歳の時でした。大工さんをしながらバンドを組んで路上や酒場で歌っていましたが、パリの地下鉄の駅でライブをしていたら(交通公団RATPから許可を受ければできます)、TF1のオーディション番組「The Voice:La Plus Belle Voix」の番組スタッフに声をかけられ2016年の第5シーズンに出場。「フレンチポップス三大ミシェル」の一人、ミシェル・デルペッシュの「Chez Laurette」を歌って審査員のフローラン・パニーに高く評価され、上位進出はできなくても異例のメジャーデビューを果たします。31歳でした。

 あのZAZを発掘した大物プロデューサーが関わったので「男性版ZAZ」とも呼ばれ、2016年のアルバム「Claudio Capéo」は5週連続1位。誇り高きホームレスを歌ったシングル「Un homme debout」は最高6位のヒットを記録。彗星のように現れたシンデレラボーイならぬ「シンデレラ中年男」でした。

 かつてドイツ領だったアルザス生まれでしかもイタリア系という「異邦人」視されがちな出自の苦労人が、フランス人が大好きな楽器アコーディオンを操って、人生のほろ苦さがにじみ出るようなフランス語の歌詞を乗せる弾き語りが、酸いも苦いも知る年上世代に好まれました。ジョン・レノンがよく言っていた「Working Class Hero」(曲はNoir Désirがカヴァーしていました)のフランス版とも言えるでしょうか?

 その後の活躍ですが、アルバムは2018年の「Tant que rien ne m'arrête」が最高6位、2020年の「Penso a te」が最高3位、2022年の「Rose des vents」が最高3位で、今回の新作まで5作連続でトップ10に入りするという手堅い人気です。2024年にはPatrick Fiori(パトリック・フィオーリ)のアルバム「Le chant est libre」にアメル・ベント、スリマン、ソプラーノらと参加しています。

 さて、新作アルバムのタイトル「Nouveau souffle」は直訳すれば「新たな息吹」ですが、「深呼吸」や「心機一転」という意味になることもあります。ラストチューンは「Je suis un accordéon」で、ポップスターになっても自らを「一介のアコーディオン弾き」と称する謙虚さは健在。その収録曲から10月に先行配信された「Madame」をお聴きください。

「Je suis un fou madame, fou de la reine, je suis un pitre(僕は狂っています、マダム。女王様に首ったけな、僕は一人のピエロです)」「Et si tu m'aimes plus,j'achèterai tous les cœurs du monde à nouveau(そしてもし、あなたが僕を愛してくれたら、僕は改めて、世界じゅうのハートを買ってきて差し上げます)」といった歌詞(paroles)のラブソングです。

※現在、フランスでの女性への敬称、呼びかけは婚姻歴、年齢に関係なく全てMadameです。Mademoiselle(マドモアゼル)は2012年、サルコジ政権下で「好ましくない」とされ、公文書での使用が禁止されました。お気をつけください。

 

Claudio Capéo(クラウディオ・カペオ) - Madame

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗とChanson Populaireの文字
 
2025年11月25日号

 

2025年11月21日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 Love You - Nono La Grinta

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 9 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 10 Un monde à l'autre - GP Explorer, Maître Gims, La mano1.9, SCH

 

【アルバムチャート】

 1 La fuite en avant - Orelsan

 2 Survival Mode - Rilés

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 Capitale du crime radio Vol.2 - La Fouine

 6 LUX - Rosalía

 7 Marjolaine - Gaëtan Roussel

 8 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Studio Saint-Germain(avec Ours & Pierre Souchon) - Alain Souchon

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」(メロドラマ)のシングルチャート1位は今週で6週連続です。シングル5位に「Love You」が入ったNono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)はパリ19区出身のコンゴ系ラッパー。夏に「Paris」がヒットし、2025年8月19日号でくわしくご紹介しました。

 6位に人気ラッパーのFranglishとKeBlackによる「Génération impolie」(無礼な世代)が再浮上。7位はテイラーちゃんがトップ10に復帰。9位のThéodoraとJuLの「ZOU BISOU」はフランス語で「早くキスして」という意味。1962年に英国人女優のジリアン・ヒルズ(Gillian Hills)がフランス語で歌ってヒットした「Zou Bisou Bisou(ズビズビズー)」というナツメロの換骨奪胎カヴァー。イタリアではソフィア・ローレン、日本では森山加代子さんが歌ったラブ・チューンでした。10位にGP Explorerの企画盤収録曲が再浮上しました。

 YOASOBIの幾田りらさんをフィーチャーした曲「Plus rien」が収録されていることで日本でも話題のOrelsan(オレールサン)の「La fuite en avant」(やぶれかぶれ)は、今週もSNEPアルバムチャート1位です。

 2025年1月17日付のチャートで初登場1位だった「Survival Mode」がアルバム2位に再浮上したRilès(リレス)は1996年1月、ノルマンディー地方の中心都市、セーヌ=マリティーム(Seine-Maritime/76)県ルーアン(Rouen)生まれの29歳のラッパー。本名はリル・カシミ(Rilès Kacimi)といいアルジェリア国籍です。2025年1月21日号でくわしくご紹介しましたが、ルーアン大学で英文学を修め、英語が得意。リリックもその大部分を英語で書いています。

 5位のLa Fouine(ラ・フーイン)の「Capitale du crime radio Vol.2」(犯罪の首都ラジオ2)も再浮上組。2025年9月25日にリリースされ、2025年10月3日付のアルバムチャートで1位になっています。2024年11月に出した「Capitale du crime radio Vol.1」の続編。ラ・フーインはイヴリーヌ(Yvelines/78)県トラップ(Trappes)の出身で43歳のモロッコ系ラッパー。2024年12月3日号でくわしくご紹介しています。

 

Gaëtan Roussel

 アルバム7位に11月14日発売の「Marjolaine」が入ったGaëtan Roussel(ガエタン・ルセール)は、ロックバンドのLouise Attaque(ルイーズ・アタック)のリードヴォーカルを務めていた人です。1972年10月に南仏オクシタニー地方、アヴェロン(Aveyron/12)県の県庁所在地ロデーズ(Rodez)で生まれた53歳。2021年3月30日号でくわしくご紹介しました。アルバムタイトルのMarjolaineとはフランス菓子の「ガトー・マルジョレーヌ」のこと。風貌はゴツいですが彼の趣味はお菓子づくりで、パティシエのように、エスプリのきいた詩的な歌詞と繊細な曲を送り出せる才人です。

 

Alain Souchon(アラン・スーション)

 

Alain Souchon

 Alain Souchon(アラン・スーション)は、フレンチポップスの超ベテランのシンガーソングライター。1944年5月に旧仏領モロッコのカサブランカで生まれ、現在81歳です。ヴィクトワール音楽賞を9回受賞。当ブログでは2020年5月5日号で最初にとりあげました。

 父親は英米文学の教師、母親は小説家というインテリ家庭に育ち、高校時代に第一次ブリティッシュ・インヴェイジョン全盛期のロンドンに留学。それが貴重な音楽体験になります。帰国後は作詞・作曲しながらパリ13区の酒場で歌っていました。1971年、27歳でレコードデビューしますが鳴かず飛ばずで、結婚して子どももいたので金銭的に苦労しました。

 フレデリック・フランソワ(Frédéric François)に提供した曲が好評だったことでようやく音楽で食べていくメドが立ち、1974年のシングル「J'ai 10 ans」(僕は10歳)と同名のアルバムが出世作になりました。1977年の「Jamais content」が初のアルバム1位になります。彼の代表曲といえば、何と言っても1993年にシングルチャート1位になった「Foule Sentementale(センチメンタルな大衆)」で決まりでしょう。これまでに出したスタジオアルバムが最高1位になること7回で、2019年の「Âme fifties」も最高2位になっています。

 俳優としてもクロード・ベリ監督の『ジュ・ヴ・ゼーム(Je vous aime)』(1980年)ではジャン=ルイ・トランティニャン、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、セルジュ・ゲンズブールと共演。アニエス・ヴァルダ監督の『アニエス・vによるジェーン・b(Jane B.sur Agnès V.)』(1988年)ではジェーン・バーキン、フィリップ・レオタール、シャルロット・ゲンズブールと共演しています。すごい面々ですね。

 ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠フランソワ・トリュフォー監督のジャン=ピエール・レオ(Jean-Pierre Léaud)が主演する「アントワーヌ・ドワネル君の冒険もの」連作映画の第5作(最終作)『逃げ去る恋(L'Amour en fuite)』(1979年)では、ロック名曲メドレー「Rockollection」で知られる生涯の盟友、ローラン・ヴルジー(Laurent Voulzy)とともに音楽を担当し、同名の主題歌を歌っています。

 さて、今週10位の新作アルバム「Studio Saint-Germain(avec Ours & Pierre Souchon)」は11月14日リリース。Ours(ウルス/写真左)とはアラン・スーション(写真中)の次男シャルル(Charles/47歳)のあだ名で「熊」という意味。人を食べないように。Pierre(ピエール/写真右)は彼の長男(53歳)で、交通事故死した実父の名前を受け継ぎました。この親子3人がパリ6区のセーヌ左岸にある「スタジオ・サンジェルマン」でレコーディングした共作アルバムです。このサンジェルマンはPSGのルーツの「アン=レー(en-Laye)」ではなく「デ=プレ(des-Prés)」のほうですね。アンドレ・ブルトンやサルトルがカフェで語っていたほう。

 収録曲には往年のヒット曲「Foule Sentementale」や「La ballade de Jim」「Et si en plus y'a personne」、映画の主題歌「L'amour en fuite(逃げ去る恋)」なども収録されていますが、今回は1976年につくった曲を3人で歌う「S'asseoir par terre」(「地べたに座れ」という意味)をお聴きください。「君が人生に疲れたら、いったん地べたに座って休んでもいいんだよ」という、アラン・スーションらしい知的で優しいポップスです。

 

 Alain Souchon(アラン・スーション),Ours & Pierre Souchon(ウルス&ピエール・スーション) - S'asseoir par terre

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲チャート
 
2025年11月18日号

 

2025年11月14日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 Soleil Levant - Orelsan & SDM

 6 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 7 Ailleurs - Orelsan

 8 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 9 Boss - Orelsan

 10 Encore une fois - Orelsan & Yamê

 

【アルバムチャート】

 1 La fuite en avant - Orelsan

 2 LUX - Rosalía

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 6 Jeune prince - Rsko

 7 Et si j'échoue? - Bouss

 8 The Last Race - GP Explorer

 9 Thug ceremony - Leto

 10 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」(メロドラマ)のシングルチャート1位は今週で5週連続です。

 アルバムチャートの新たな1位はOrelsan(オレールサン)の新作。大物の貫禄で、Maître Gims先生の「Le Nord se souvient:L'Odyssée」は4位に後退させられました。シングルチャートでもOrelsanはニューアルバム収録曲から4曲がチャートインし、5位の「Soleil Levant」はコンゴ系ラッパーのSDM、10位の「Encore une fois」はカメルーン系ラッパーのYamêをフィーチャーしています。

 

Rosalía

 アルバム2位はスペイン・カタルーニャ自治州生まれ、33歳のアーバン・フラメンコの歌姫Rosalía(ロザリア)が11月7日に出した4枚目のスタジオアルバム「LUX」です。2022年秋から2023年初めにかけて「Despechá」がフランスでもシングルチャートでトップ10入りした彼女は、スペイン伝統のフラメンコにポップス、R&B、EDMなどが融合したスタイルが持ち味ですが、新作はうって変わってロンドン交響楽団が全面協力し、4楽章構成でクラシックの要素を強く押し出した実験作。アルバムのテーマはカトリックの「女性の聖人たち」で、ジャンヌ・ダルクもちゃんと入っています。

 ウクライナ生まれのユダヤ人で、一家がポグロム(大虐殺)を避けてブラジルに亡命した作家クラリス・リスペクター、フランス生まれのユダヤ人でナチス占領下を脱出し英国で客死した哲学者シモーヌ・ヴェイユ(政治家とは別人)の著書にインスピレーションを受け、制作ではアイスランドの才女ビョークが参加しました。なんだか難しそうです。

 アルバム6位に11月7日リリースの2年ぶり3枚目のスタジオアルバム「Jeune prince」(若き王子)が入ったRsko(ルスコ)は、年齢不詳の若手ラッパー。私小説的なリリックが人気です。ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ボワ・ラベ(Bois-l'Abbé)出身で、コンゴ系。2023年11月14日号でくわしくご紹介しました。2020年にシングル「Porsche」(ポルシェ)でデビューし、2021年にEP「En chemin」を出し、スタジオアルバムは2022年に「LMDB」、2023年に「Memory」を出しています。メンバーがみんな同じ町の出身のL2Bは大の親友で、Rskoが加入する話もあったそうです。

 9位に11月7日リリースの新作アルバム「Thug ceremony」(「凶悪犯の儀式」という怖い意味)が登場したLeto(レト)は、2022年3月1日号でくわしくご紹介していますが、パリ17区出身、コンゴ系で27歳のラッパー。今年2月にアルバム「Life」が最高7位になっています。LetoはAéroとヒップホップデュオ「PSO Thug」を組んでいますが、PSOとは彼らの地元にあった旧城壁(ティエールの城壁)の「Porte de Saint-Ouen(サン=トゥアン門)」の略で、同名の地下鉄13号線の駅、21世紀になってからパリ五輪の足となるべく環状道路(Périphérique/ペリフェリック)に沿って建設されたトラム(路面電車)3b線の駅があります。

 

Orelsan(オレールサン)


Orelsan

 今週のSNEPアルバムチャートで、堂々の貫禄でニューリリースの「La fuite en avant」(11月7日リリース)が1位に登場したのが、今やフランスを代表する国民的ミュージシャンとなったOrelsan(オレールサン)です。ヒップホップから出発しながら、ジャンルを超越したアーティストとしてヴィクトワール音楽賞を合計12回受賞の最多記録を保持。2022年に行われたツアーでは49公演で累計60万人のオーディエンスを集めました。

 オレールサンは1982年8月、ノルマンディー地域圏オルヌ(Orne/61)県の県庁所在地アランソン (Alençon)の生まれで43歳。本名はオレリアン・コタンティン(Aurélien Cotentin)といい、「オレリ」に日本語の「さん」をつけてステージネームにしたそうです。明治末の宮武外骨の「滑稽新聞」を彷彿とさせる「過激にして愛嬌あり」なその音楽スタイルから「フランスのエミネム」とも称され、当ブログでは2020年11月24日号で最初にご紹介しました。

 1999年から音楽活動を始め、2009年にファーストアルバム「Perdu d'avance」(最高64位)を出すや、さっそくリリックの言葉づかいが政治家にかみつかれるなど本領を発揮。2011年のセカンドアルバム「Le chant des sirènes」(最高3位)で翌年2月、初のヴィクトワール音楽賞(アーバンミュージック最優秀アルバム賞)を受賞します。ラッパーのGringeとのコンビのヒップホップデュオ「Casseurs Flowters」でも2013年と2015年に2枚のアルバムを出しています。2017年のサードアルバム「La fête est finie」(最高1位)はミリオンセラーになり、2021年の4枚目「Civilization」(最高1位)は2021年、2022年と連続でフランス国内トップセールス。2022年、2023年のヴィクトワール音楽賞では主要3部門で賞を獲得しています。

 移民、格差、孤立など重たいテーマを選んでも、マジ一本にならずアイロニーとユーモアをまぶして軽妙に仕上げるところがいかにもフランス人ウケし、それによってヒップホップの領域にとどまらない国民的な人気を得ています。

 さて、17曲入りの「La fuite en avant」(「後先を考えない無謀で行き当たりばったりの行動」を指す熟語。『論語』述而篇の「暴虎馮河」に相当)は4年ぶり5枚目のスタジオアルバムで、楽曲でコラボレーションしているアーティストは、Yamê、SDM、2021年の解散までDaft Punk(ダフト・パンク)を28年間率いたエレクトロ・ミュージックの第一人者Thomas Bangalter(トマ・バンガルテル)、韓国のK-POP女性グループ「FIFTY FIFTY」に加え、「Plus rien」(今週シングル14位)では大みそかの紅白単独出場の「YOASOBI」の幾田りらさん(Lilas)をゲストボーカルに迎えたという、ユニークなラインナップです。

 アルバム発売に先立って10月、戦国武将のような甲冑をつけた彼を主人公に日本で撮ったデビッド・トマシェフスキ監督の映画『Yoroï(鎧)』が、フランスやベルギー、スイスで公開されました。

 アルバム収録曲から、映画撮影のかたわら東京のドン・キホーテやカラオケ店、富士山麓をめぐったビデオクリップが11月10日に先行公開されている「Ailleurs」(「よそ」「他の場所」という意味)をお聴きください。今週シングルチャート7位です。なお、新作アルバムには「Osaka」(今週シングル17位)という曲もあり、リリックビデオに大阪・道頓堀のコテコテ看板が登場します。「ワンパンマン」「鬼滅の刃」「ドラゴンボール」「鋼の錬金術師」など日本のアニメのファンだと公言するオレールサンですが、ニッポンの旅は楽しかったでしょうか?

 

Orelsan(オレールサン) - Ailleurs

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲チャート
 
2025年11月11日号

 

2025年11月7日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 Mon bébé - RnBOi

 5 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 6 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Skywalker Haze - A COLORS SHOW - Ninho

 9 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 10 Biff pas d'love - Bouss

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Dom Pérignon Crying - Josman

 3 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Et si j'échoue? - Bouss

 6 The Last Race - GP Explorer

 7 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 8 Ultraviolent - KYO

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Diamant noir - Werenoi

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」(メロドラマ)が4週連続のシングルチャート1位です。

 シングル8位にNinhoの「Skywalker Haze - A COLORS SHOW」が登場。大物ラッパーのNinhoが冒頭でいきなり「Binks Binks」と連呼するので「スカイウォーカーに(ジャージャー)ビンクスとくれば『スターウォーズ』かな?」と思うかもしれませんが、リリックの中身はそれとは無関係。荒廃、狂気、暴力、犯罪、無力感、自己嫌悪、拝金主義、社会批判が延々と続く、いつものラップフランセです。タイトルの「Skywalker」「(Amnesia)Haze」は大麻(cannabis)の品種名。「A COLORS SHOW」とはドイツの首都ベルリンにある音楽スタジオ「COLORS」がYouTubeで公開しているパフォーマンス動画で、Ninhoも出演しています。

 

Josman

 アルバムチャート2位に10月31日リリースの「Dom Pérignon Crying」が登場したJosman(ジョスマン)は、オルレアン(Orléans)に近い百年戦争、ユグノー戦争の激戦地、シェール(Cher/18)県ヴィエルゾン(Vierzon)で生まれた33歳のラッパー。両親はコンゴとアンゴラの出身です。2022年3月25日付で「M.A.N (Black roses & Lost feelings)」がアルバム1位になった実績があります。

「Dom Pérignon(ドン・ペリニヨン)」は、LVMH傘下のモエ・エ・シャンドン(Moët et Chandon)社が生産する最高級ヴィンテージ・シャンパン。メゾン(Maison/醸造所)はシャンパーニュ地方のマルヌ(Marne/51)県※のエペルネ(Épernay)にあります。ベネディクト会のオーヴィレール修道院の修道士ピエール・ペリニヨン(Pierre Pérignon)が太陽王ルイ14世治世下の1668年に発泡性ワインの醸造を任されたことが起源です。「Dom」は修道士の称号。日本で「ドンペリ」と略しているのは、ちょっと失礼です。

※イル=ド=フランス地域圏のヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県とは異なる地域です。お間違えなく。

 

KYO(キョー)


Kyo

 ロックファンの皆様。お待たせしました。今週のアルバムチャート8位に、KYO(キョー)が10月31日に出した4年ぶり7枚目の12曲入りスタジオアルバム「Ultraviolent」が登場しました。タイトルは英語で「超暴力的」という意味です。ちなみに「紫外線」は「Ultraviolet」で、1字違いで大違いです。

 KYOは4人組のポップロック・バンド。パリ郊外のイヴリーヌ(Yvelines/78)県ヴェルヌイユ=シュル=セーヌ(Verneuil-sur-Seine)にあるノートルダム・レ・ゾワゾー(Collège Notre-Dame Les Oiseaux)校に通っていたニコラ・シャサニュ(Nicolas Chassagne)、フローリアン・デュボ(Florian Dubos)、ファビアン・デュボ (Fabien Dubos)の兄弟とブノワ・ポエ (Benoît Poher)の4人が1994年に結成しました。彼らは好きなバンドがニルヴァーナ、サウンドガーデン、レディオヘッド、パール・ジャムという共通点があったそうです。

 バンド名は日本の格闘ゲーム「ザ・キング・オブ・ファイターズ」のキャラクターで、当時は高校生という設定の草薙京(Kyo Kusanagi)からきています。日本の古武術と独自の拳法でファイトする草薙京は、後にマンガ、アニメやその実写版もつくられ、格闘家でありながらクールなイケメンという設定なので女性に人気がありました。

 さて、ロックバンドのKYOはパリとその周辺でライブ活動を始めますが、当初は「高校生バンドに毛が生えた程度」と軽くみられて会場はガラガラ。それでも1997年にソニー・ミュージックと契約して、ジョニー・アリディとシルヴィ・ヴァルタンの間の息子、デヴィッド・アリディ(David Hallyday)のライブのオープニングアクト(早い話が「前座」)を務めたりしました。このデヴィッドが、KYOを励まして自身のミュージックビデオの中で演奏をさせ、メジャーシーンへと押し上げてくれた恩人の一人でした。

 2000年、初のスタジオアルバム「KYO」を出しますが、セールスは4万枚程度(最高71位)。しかし2003年、オランダの人気女性シンガーSita(シータ)をフィーチャーしたシングル「Le chemin」、セカンドアルバム「Le chemin」でブレイクします。アルバムはSNEPアルバムチャートで最高2位。翌年2月のヴィクトワール音楽賞(Les Victoires de la Musique)で最優秀アルバム賞、最優秀新人グループ・アーティスト賞、最優秀新人ライブグループ賞を受賞し、「NRJ Music Awards」でも4部門で賞を取っています。続いて全仏ツアーも成功させ、そのライブ盤もヒットしました。2004年のアルバム「300 lésions」では初のアルバム最高1位になり、2005年には父親のほうのジョニー・アリディや女性ポップシンガーのジェニフェール、さらにミュージカル「Le Roi Soleil(太陽王)」にも楽曲提供を行うほどの存在へと出世しました。

 そんなサクセス・ストーリーを実現させたKYOでしたが、2007年、活動を休止してメンバーはそれぞれにソロ活動を開始します。それでも「これは解散ではない」とアナウンスしていました。YMOではないですが軍隊の「散開」のようなものでしょうか?

 バンドあるあるで、ライブがガラガラだった無名時代以来のファンがある種の特権意識を匂わせながら「昔の方がよかった」などと言い出すのを避けるリスク分散という観点でも、戦略的な活動休止は効果がありそうです。

 2013年になってバンド活動を再開します。アルバムは2014年に10年ぶりの「L'Équilibre」(最高2位)を出し、2017年に「Dans la peau」(最高29位)、2021年に「La part des lions」(最高16位)をリリース。そして今作「Ultraviolent」で、11年ぶりにアルバムチャートのトップ10に戻ってきました。新しいファンも獲得できたでしょうか?

 新作アルバムは「仕上がりはよりロック的に」「リリック(paroles)はよりヒップホップ的に」「サウンドはよりアンドシーヌ(Indochine)的に」なっているのだそうです。後輩たちにバンド名を出されてニコラ・シルキス(Nicola Sirkis)は苦笑いしたかもしれません。

 その収録曲から「K17」をライブでお聴きください。その歌詞(paroles)では「Célébré la vie dans nos lits. Roboosté la natalité」(僕らのベッドライフを祝った。出生率が回復した)と「房事」をリフレイン。高市内閣の黄川田少子化担当大臣、結婚制度の外にPACS(連帯市民契約)があるフランスは、出生率向上政策立案の参考になりますか?

 

KYO(キョー) - K17 (Live at Francofolies, La Rochelle 10/07/2025)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!