2024年9月20日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Sois pas timide - Maître Gims
2 Spider - Maître Gims, Dystinct
3 Manon B - Tiakola
4 Monaco - Guy2Bezbar
5 J'crois qu'ils ont pas compris - Leto
6 Toka - SDM
7 Imagine - Carbonne
8 Dolse Camara - Booba
9 Coco - Ninho & Niska
10 Alibi (With Pabllo Vitter & Yseult) - Sevdalia
【アルバムチャート】
1 Babel Babel - Indochine
2 Le Nord se souvient - Maître Gims
3 Le dernier rayon de soleil - HOUDI
4 Depuis le temps - Bouss
5 C Amir - Amir
6 Luck and Storange - David Gilmour
7 La vie continue - Maes
8 HIT ME HARD AND SOFT - Billie Eilish
9 Short N'Sweet - Sabrina Carpenter
10 The Death of Slim Shady (Coup de Grâce) - Eminem
シングルチャート1位は今週もMaître Gims「Sois pas timide」(恥ずかしがらないでください)。これと今週2位の「Spider」を収録した新作アルバムも2位に入っています。SDMの「Toka」が6位でシングルトップ10入り。スワヒリ語で「出ていけ!」という意味。歌詞の冒頭で「Le bruit du(うるさい)」を連発しています。HamzaとコラボしているBoobaの「Dolce Camara」がトップ10に再浮上しました。
アルバムチャートの1位は今週もIndochine(アンドシーヌ)の新作が売れていました。2、3、5位に秋の新作が登場。2位は今やフレンチラップ界の「大先生」格、コンゴ民主共和国の首都キンシャサ生まれで38歳のMaître Gims(メイトル・ギムス)の「Le Nord se souvient」(北は覚えている)で、9月13日リリース。意外にもEPとしては2枚目で、アルバム収録曲「Vent du Nord」(北風)もシングル発売されています。
5位にAmir(アミール)が9月13日に出した4年ぶり4枚目のニューアルバム「C Amir」が入りました。アミールについては2020年11月3日号でくわしくご紹介していますが、2015年に歯医者さんから転向してポップシンガーとしてデビューした当時のさわやか系お兄さんも、すでに40歳。「C(セー)」とは、2023年4月に亡くなった彼の母親のCarmi(カルミ)さんのことです。タイトルはその名前のアナグラムで、アミールは積もる思いを込めて曲を書いたという話です。
アメリカの著名ラッパー、Eminem(エミネム)の7月12日発売の12枚目のスタジオアルバム「The Death of Slim Shady (Coup de Grâce)」が10位にチャートイン。Slim Shadyとはエミネム自身の分身名です。フランス語の「coup de grâce」は、中世の戦場で瀕死の重傷を負った戦友や敵をこれ以上、苦しませることなくその魂を天国へ送るために、魚の活け締めのようにとどめを刺す「慈悲の一撃」が語源です。それを前にして騎士は「終油の秘蹟」(第二バチカン公会議以後は「病者の塗油」)の代わりに死の直前の告解を聴いてあげたといい、それも騎士道精神の慈悲の心のあらわれだったとされています。
HOUDI(ウーディ)
HOUDI(ウーディ)のニューアルバム「Le dernier rayon de soleil」が9月13日にリリースされました。「最後の太陽の光」という意味で、Guy-Gavriel Kayというカナダの作家がフランス語で同名のファンタジー小説を刊行していますが、これは中世にカナダのニューファンドランド島まで行った北欧のバイキングの話で、特に関係はなさそうです。
HOUDI(ウーディ)については、2024年1月5日にアルバム「Hood Volume 1」がアルバムチャートで5位に入った直後の2024年1月16日号で一度、ご紹介しています。2002年3月生まれ、22歳のラッパーで、セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県出身。2022年、毎週金曜日に新作を披露するハイペースで曲を量産するプロジェクト「WOKA」でデビューしました。
首から上はフードでおおって素顔を見せないので、ステージネームは「HOODI」(ウーディ/フーディ)で、人呼んで「Rappeur au masque de ski」(スキーマスクをかぶったラッパー)。さらにゴーグルまでつけていて、「ストリートをアルプスのスキーリゾートのシャモニー(Chamonix)と間違えていませんか」「夏は暑くないですか」と言いたくなるようなルックスです。リリックは、パロディとユーモアと批判精神をもって権力者、フランス社会、ヒップホップ界から自分の日常まで、自虐も交えながら笑い飛ばすおふざけラップが特色です。
2年前のデビュー時からDosseh、Georgio、Favé、Guy2Bezbar、Ziak、Lesramら中堅、若手のラッパーたちとのコラボを重ねてその名前と顔ならぬ覆面を売って、2024年4月6日にはパリのオランピア劇場でのステージも成功させていますから「期待の若手」とは言えそうです。今回は新作アルバムからタイトルチューンをお聴きください。歌詞(paroles)は意外にもマジメ路線で。イメージチェンジを図っている?
HOUDI(ウーディ) - Le dernier rayon de soleil(最後の太陽の光)
では、また来週
À la semaine prochaine!