映画三昧 #2631 ⭐️⭐️* エンジェル、見えない恋人(16) | juntana325 趣味三昧

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御伽噺のような作品だが、これほど、理路整然として、哲学的な内容はないように思う。盲目の少女と透明な少年、設定は不自然だが、男女間のメタファーだとすると、よく考えられている。


健常者とはいえない二人の男女の出会いから、ストーリーは展開していく。盲目の少女マドレーヌにとって、透明なエンジェルは、まったく問題のない相手だし、エンジェルにとっても、自分の不遇を意識しなくて良い存在だ。「割れ鍋に綴じ蓋」のカップルだ。




前半は、出会いから関係が深まり、楽しい日々が続く二人の日常生活が映される。しかし、マドレーヌが、眼の手術を受けると言い出してから、二人の関係はギクシャクし始める。彼女の視力が戻ったら、二人の関係はどうなるのだろうか?すでに結末は、みえみえ。


それは、当然エンジェルも予想していて、彼女の前から姿を消す。透明なのを知らないマドレーヌは、退院した後、必死に彼を探す。そして、とうとう彼を見つける。しかし、顔を見たいと言っても、見せないエンジェル。その辺のやりとりが、いつ悲劇が訪れるのか分からない緊張感が張りつめる。




しかし、話は予期せぬ方向に行く。エンジェルは、ついにマドレーヌに透明である事を打ち明ける。彼女は、打ちひしがれるが、意外にも彼と一緒に生きていく決心をする。それは、手術後、手の感触だけで生きてきた世界と、現実世界との間に、ギャップを感じていたからだ。目を閉じて、視力のない世界に入ったら、エンジェルが透明だろうとなかろうと関係ない。だから、彼女は、彼が愛せたのだろう。



この特別に思われる関係は、果たして特別なのだろうか。普通の男女だって同じではないか。逆に、見える事で、本来の結びつきに先入観を挟んでいるかもしれない。この作品では、ある意味、本当のラブストーリーが描かれている。


後日譚が良い。エンジェルが黒子になり、マドレーヌは、マジシャンになった。彼が透明という事以外、何のタネもないマジック。愛さえあれば、一生お金には困らないだろう。




解説

目に見えない存在として生まれた青年と盲目の少女の愛の姿を描いたラブロマンス。パートナーの突然の失踪により、絶望を味わったルーズは精神病院に収容され、誰に知られることなく、1人の男の子を出産する。エンジェルと名づけられたその子どもは、目に見えない存在であるという、特別な特性をもっていた。そんなエンジェルを、ルイーズは世間との接触を絶ち、施設の中で育てていった。そしてある日、エンジェルは盲目のマドレーヌという少女と出会う。目が見えないマドレーヌはエンジェルの秘密に気がつくことはなく、2人は次第に惹かれあい、愛を育んでいくが、ある時、マドレーヌが視力を取り戻すため目の手術を受けることになり……。製作は「神様メール」「トト・ザ・ヒーロー」のジャコ・バン・ドルマル。監督は俳優としてドルマル作品などに出演し、多くのテレビシリーズなども手がけているハリー・クレフェン。