映画三昧 #2632 ⭐️⭐️➕ あなたの名前を呼べたなら(18) | juntana325 趣味三昧

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二本立てで観た。もう一本は「第三夫人と髪飾り」だ。共通するのは理不尽な女性への差別だ。「第三夫人」の方は、19世紀の話だが、こちらは現代インド。カースト制度が頭に浮かんでくる階級社会だが、まさか今でもその制度が生きているとは思わなかった。それもと、映画制作のためのデフォルメだろうか。




アメリカ帰りのアシュヴィンと、彼の家のメイド ラトナの微妙な関係を描いていく。許婚の浮気で失意のうちに過ごすアシュヴィンと、同情するラトナ、このシチュエーションに、ドラマが発展する予感がする。ところが、そこに横たわるのが階級制度だ。アメリカ帰りのアシュヴィンは、そんな事はお構いなしだが、ラトナは困惑する。インドはアメリカ社会でないことを、彼女はよく分かっているからだ。




ラトナは、余命半年の男と結婚した。それは、理解に苦しむ。女性は一度未亡人になると、夫の家族の許しがなければ、一生未亡人で再婚できない。信じがたい因習に絶句。そういう理不尽なルールの中で、自立しようとするラトナ。彼女の願いは、ファッションデザイナーだ。その第一歩として、メイド仕事の空いた時間に、裁縫を習いたいとアシュヴィンに話すと、快く許可される。彼にとってみれば、空いた時間に彼女が何をしようが自由だからだ。




夢を追いかけるラトナにアシュヴィンは引かれていくが、彼女はもう一本踏み出せない。物語の後半は、この彼女の態度にジレンマに陥る。しかしハッピーエンドを信じて、我慢していると、転機が訪れる。彼女が、アシュヴィンとの微妙な関係を避けるために、メイドを辞めて出ていくと言い出す。そして、彼女は妹のうちに転がり込み、仕事を探す。そんな彼女に一本の電話が入る。何と服飾デザイナーの仕事だ。天にも登るような気持ちのラトナ。




実はそれは、アシュヴィンが、彼女のために斡旋 した仕事だった。ここまで来ると、ロマンスのお膳立ては揃った。ハッピーエンドと行きたいところだ。しかし、アシュヴィンは、また渡米してしまう。彼女は、自分の可能性を信じて、彼を追いかげずに、インドに残る。どちらも大国だが、女性にとって、どちらの大国が生きやすいだろうか?




解説

助監督や脚本家としてヨーロッパでも活躍するムンバイ出身の女性監督ロヘナ・ゲラの長編デビュー作。経済の発展が著しいインドのムンバイで農村出身のラトナはファッションデザイナーを夢見ながら、メイドとして働いていた。夫を亡くしたラトナは建設会社の御曹司アシュヴィンの新婚家庭で住み込みで働く予定だった。しかし、婚約者の浮気が発覚して直前で破談となってしまい、広すぎる高級マンションに1人で暮らすことになった傷心のアシュヴィンを気遣いながら、ラトナは彼の身の回りの世話をしていた。ある日、ラトナはアシュヴィンにあるお願いごとをする。そのことから2人の距離が徐々に近くなっていくが……。主人公・ラトナ役を「モンスーン・ウェディング」のティロタマ・ショーム、御曹司のアシュヴィン役を「裁き」のビベーク・ゴーンバルがそれぞれ演じる。