映画三昧 #2070 ⭐️⭐️* ヴァージン・スーサイズ(99) | juntana325 趣味三昧

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ヘビトンボが郊外の街の上空を覆う6月。リズボン家の美しい年子の5人姉妹は、近所の少年たちの一番の興味の的だった。姉妹の厳格な母親ミセス・リズボンは、娘たちの外出を殆ど禁じ、野暮ったくて慎み深い格好を強制していた。ある日13歳の末娘セシリアが手首を切って自殺を図る。なんとか一命は取り止めるが、精神科医から彼女の外界との接触の少なさが原因と指摘されたミスター・リズボンは妻を説得し、ホームパーティを開いて男の子たちを招待する。




Bunkamuraル・シネマで、若者たちの愛のゆくえを描く名作映画を集めた特集上映企画<すべて恋しき若者たち>の一本。ソフィア・コッポラ初監督作品


タイトルからも分かる通り、ガールズムービーと言い難い凄惨なラストだ。小さい町では、10代の5人姉妹というたけで、特別な存在に感じられる。まるでミューズのような輝きを放つ。しかし、彼女たちは、籠の鳥で自由にさえずることはできない。その神秘性が、同じ10代の少年たちには、たまらない存在なのだ。語り口は、この少年たちの視点で、彼女たちが、凶行に及ぶ経緯は釈然としない。それが、また残酷さを残しながらも、何となく美しい。あるいは、彼らが、青春の思い出を美化してしまったのかもしれない。




男の子との交流で、社会性を身につけた方がいいということで、ホームパーティを開く。しかし、結果は自殺して末っ子が命を散らす。自殺の原因は何だったのか?青春の儚さを感じさせる印象的なプロットだ。ホームパーティなのに、一人寂しそうに部屋に戻っていく彼女の後姿は目に焼きつく。




その後の残された4人の姉妹は、体の一部を失ったかのように、どこかに陰りが見える。10代といえば、青春真っ只中で、彼女たちも、人並みに異性交遊したい年だ。それを親のエゴで、飛び立とうとする鳥に鎖をつけてしまう。抑圧された4人の青春。一部屋に集まりフツフツとした感情が湧いてくると4姉妹は、どんな行動に出るのか?


ラストは、皆こぞって同じ行動をとる。心中のようでもあり、同じ方向に強い力が働く群集心理のようでもある。いずれにしても、彼女らを呪縛するものに対するささやかな反抗あるいは、それらからの解放は、衝動的なものだ。青春のイノセントとイグノランスに、只々空虚な気持ちになる。




主人公は、5人の姉妹のようだが、物語の主導権は、それを取り巻く少年達だ。彼らは、最初、直接彼女達とコンタクトが取れないから、様々な噂話で、妄想を膨らます。彼らにとっては、憧憬の対象だった。ところが、後半になると、毎晩屋根の上でセックスするラックスを、彼らは望遠鏡で眺める。それは、憧憬というより羨望に近い。彼らにとって、姉妹はミューズではなく、手短な存在になった。しかし、死によって、それが断絶され、彼らは、まるで魂が抜かれたような冴えない表情を見せる。彼女達の自殺は、親達からの解放だけでなく、思春期の面倒な男子達からも解放されたかったのかもしれない。