東京を称して東京砂漠と言ったりするが、人によっては、ただ人口だけが多い殺伐とした街にしか映らないかもしれない。この作品の主人公二人も、そんな若者だ。
美香は母を自殺で失った看護師、慎二は日雇いの危険な現場仕事、二人が死を意識するのも、何となく理解できる。そこが、今時の若者とは少し違う。彼らの口癖は、嫌な予感がする、だ。漠然とした不安が彼らを包む。タイトル「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、その象徴のようだ。そして、「最高密度」という表現には、その苦悩の深さを感じさせる。
生きるベクトルの方向も、強さも見出せない若者たちの姿は、切ない。原作は、詩集だ。著者 最果タヒは、女性目線て詩を綴る。この作品に当てはめれば、美香の目線ということになるだろう。彼女の死生観は、若いくせに、一種の悟りのように確固たる信念がある。
そもそも二人の出会いは、偶然なのか。同じような価値観を持った二人が、大東京の中からお互いに匂いを嗅ぎつけて、巡り会ったような必然性を感じる。劇中、美香が雑踏を指して、慎二に話す。一千万人皆んなが恋をしてる。そして、いずれ死んでいく。慎二と出会い、彼女の恋は、これら始まろうとしている。そんな彼女が、未来を語るよりも、絶望感を抱かせるようなセリフを吐く。冒頭、東京に住むことは、自殺と同じだとつぶやく。その時から、彼女の心象風景は変化していない。
ラストは、これから一緒に歩んでいく二人を見送るように終わる。慎二の嫌な予感は、美香と出会って消えた。一方、美香の孤独感はまだ癒えない。その余韻は、同じ東京に住む者として、共感できる部分も多い。人は溢れかえるが、お互いは無関心で、敢えて関わろうとしない。それは、まるで、東京に生きる人達の作法でもあり、そうさせてしまうのが、東京のような気もする。