映画三昧 #2038 ⭐︎ ⭐︎* 夜空はいつでも最高密度の青色だ(17) | juntana325 趣味三昧

juntana325 趣味三昧

自分の興味のあることを、自分本位に勝手に解釈するブログです。



舟を編む」の石井裕也監督が、注目の詩人・最果タヒの同名詩集をもとに、都会の片隅で孤独を抱えて生きる現代の若い男女の繊細な恋愛模様を描き出す。看護師をしながら夜はガールズバーで働く美香は、言葉にできない不安や孤独を抱えつつ毎日をやり過ごしている。一方、工事現場で日雇いの仕事をしている慎二は、常に死の気配を感じながらも希望を求めてひたむきに生きていた。排他的な東京での生活にそれぞれ居心地の悪さを感じていた2人は、ある日偶然出会い、心を通わせていく。ヒロイン・美香役には、石橋凌と原田美枝子の次女で本作が映画初主演となる石橋静河を抜擢。「ぼくたちの家族」でも石井監督と組んだ池松壮亮が慎二役を演じる。




東京を称して東京砂漠と言ったりするが、人によっては、ただ人口だけが多い殺伐とした街にしか映らないかもしれない。この作品の主人公二人も、そんな若者だ。


美香は母を自殺で失った看護師、慎二は日雇いの危険な現場仕事、二人が死を意識するのも、何となく理解できる。そこが、今時の若者とは少し違う。彼らの口癖は、嫌な予感がする、だ。漠然とした不安が彼らを包む。タイトル「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、その象徴のようだ。そして、「最高密度」という表現には、その苦悩の深さを感じさせる。




生きるベクトルの方向も、強さも見出せない若者たちの姿は、切ない。原作は、詩集だ。著者 最果タヒは、女性目線て詩を綴る。この作品に当てはめれば、美香の目線ということになるだろう。彼女の死生観は、若いくせに、一種の悟りのように確固たる信念がある。


そもそも二人の出会いは、偶然なのか。同じような価値観を持った二人が、大東京の中からお互いに匂いを嗅ぎつけて、巡り会ったような必然性を感じる。劇中、美香が雑踏を指して、慎二に話す。一千万人皆んなが恋をしてる。そして、いずれ死んでいく。慎二と出会い、彼女の恋は、これら始まろうとしている。そんな彼女が、未来を語るよりも、絶望感を抱かせるようなセリフを吐く。冒頭、東京に住むことは、自殺と同じだとつぶやく。その時から、彼女の心象風景は変化していない。




ラストは、これから一緒に歩んでいく二人を見送るように終わる。慎二の嫌な予感は、美香と出会って消えた。一方、美香の孤独感はまだ癒えない。その余韻は、同じ東京に住む者として、共感できる部分も多い。人は溢れかえるが、お互いは無関心で、敢えて関わろうとしない。それは、まるで、東京に生きる人達の作法でもあり、そうさせてしまうのが、東京のような気もする。