歳を重ねていって、幸せだけが溜まっていくなら人生は言うことがない。幸せそうに見えたのは冒頭だけで、この主人公信は、後悔だけが募っていく。自分も、不幸でもないが、後悔し始めたらきりがない。そんな主人公に、自己投影してしまう。
バツイチ同士の結婚で、妻奈苗に二人の女の子の連れ子がいる。さらに、信の別れた妻には、自分の娘がいる。つぎはぎだらけの家族に、気疲れする現実だが、何もかもが身から出た錆で、誰のせいでもない。さかのぼれば、自分が生まれてきたこと自体後悔しそうだ。しかし、今こういう家族は珍しくないかもしれない。バツ2、バツ3なんていうのも、珍しくなくなった。
奈苗に子供ができたことから、家族に不協和音が立ち始める。普通、家族が増えると喜ばれるはずだが、つぎはぎ家族は、そう簡単にいかない。その結果、しきりに、後悔することになるが、それ以上に、家族とは何なのか、血のつながりとは何なのかを、こちらに問いかけてくる。
どんな家族も、寄り添い、いたわり合っている。しかし、それは、血が繋がっているからだろうか。それとも、それを理由に家族の絆を深めているのか。あるいは、血が繋がっていなくても、ただ同居しているからなのか。血が繋がっていても、沢田(宮藤官九郎)のように、家族失格者もいる。その混迷する家族の姿には、手をこまねいて見てるしかない。
最後、子供が生まれる。病室に入る信の娘二人。気まずい雰囲気の家族だが、赤ん坊の泣き声と、無垢な幼子の姿に、何か空気が変わった気がした。この子は、今までこの家族が背負ってきた わだかまりなどなく、真っ白に生まれてきた。この子が、この家族の苦しみを洗い流してくれそうな予感がする。この家族は、夫信、妻奈苗と娘たちの間に血縁はない。血縁にこだわらなかったとしても、生まれた子供は、間違いなく他の家族皆の橋渡しになるだろう。祈りたくなるような思いに駆られるラストだった。