映画三昧 #1902 ⭐︎⭐︎* ロスト・ハイウェイ(97) | juntana325 趣味三昧

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鬼才デビッド・リンチ監督が「ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間」以来5年ぶりに手掛けたサスペンス作品。妻の浮気を疑う人気サックス奏者フレッド。彼はある日「ディック・ロランドは死んだ」という謎のメッセージを受け取る。そしてその翌日から、彼の元にビデオテープが届き始める。1本目には彼の家の玄関が、2本目には寝室が、そして最後に届けられたテープには、彼が妻を惨殺する様子が収録されていた……。


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デビッド・リンチのリマスター上映でもう一度観たいと思っていたのは、「マルホランド・ドライブ」、「エレファント・マン」そして、この作品だ。(「ツイン・ピークス」には思い出がありすぎて、今一歩観る気がしない。)人によっては、リンチの最高傑作を本作という人もいる。


「マルホランド・ドライブ」同様、細切れになったちぐはぐな物語の断片が、散りばめられていて、関連があるのかどうか、それすらもはっきりわからない。何度みても、謎は深まり、何度かみると、少しずつ謎は解ける


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どこまで現実で、どこまで幻想なのか、あるいは、全て現実なのかもしれない。それを、あえて規定しないのが、デビッド・リンチの作品だ。しかし、全て現実とするのは、無理がある。刑務所でフレッドとピートが夜中に入替るというトリックがどうも、現実的ではない。ただ、劇中「あの夜」とだけで、詳細は語られないため、なんとも言えない。ここは、永遠に解明されない謎になりそうだ。


フレッドが、妻レネエの過去を疑ったことから、この話は始まる。そして、自分を失いながら、倒錯していく世界の中で、レネエの過去アリスを追っていく。フレッドは、ピートの潜在意識の中に隠れながら(個人的憶測)、事実を追っていくが、時制はよく分からない。突き詰めるところは、妻の過去を許せない憤りと、そんな過去を背負わせた連中への復讐心が、彼を支配している。顔の白い男は、それを促すための悪意のシンボルなのかもしれない。この男は、謎の行動をとるが、結局は、フレッドの報復に加担する。


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そして、当然のことながら、最後は破滅的だ。理路整然としたストーリーではないから、釈然としない部分は多々あるが、パトカーに追跡され、発狂状態で逃亡する。しかし、これはパトカーに見立てた良心によって、追い込まれたようにも思える。彼にとって、苦しみから逃れるには、残された道は、死以外にないのかもしれない。


愛した女性に裏切られた思いに駆られて殺人を犯したこの作品の犯人と、「マルホランド・ドライブ」の愛するがゆえに苦しみ、狂気に陥るナオミ・ワッツが、両極端で、対称的に見える。そう考えると、後者を選ぶ。


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