映画三昧 #1772 ⭐︎⭐︎☆ エレファント・マン(80) | juntana325 趣味三昧

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19世紀末のロンドンを舞台に、実在した奇形の青年ジョン・メリックの悲劇の人生を、「イレーザーヘッド」の鬼才デビッド・リンチ監督が映画化。見世物小屋で“エレファント・マン”として暮らしていた青年ジョンの元に、ある日外科医のトリーブスという男が現れる。ジョンの特異な容姿に興味を持ったトリーブスは、彼を研究材料にするため、自分が勤める病院に連れ帰ることに。こうしてジョンとトリーブスの交流が始まるが……。日本初公開は1981年。作品誕生25周年を記念した2004年には、ニュープリント版でリバイバル公開もされた。


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初めて観たときは、ショッキングだった。当時どんな気持ちで観終えかも覚えていない。劇場で観るのは、その初公開以来だ。たかが映画だが、胸騒ぎがする。しかし、これは実在の話なのだ。


人の善悪、あるいは善意と悪意が、振り子のように揺れる。人は根っからの悪人も、根っからの善人もいないと思う。同じように、人の行動全てが、善意と悪意に別れるわけでもない。このドラマは、同じ人の行為を、そんな単純な尺度で測れない事を暗に語る。


サーカスのバイツは、さしずめ、悪意と打算の象徴だろう。ジョンを虐げ、金にする最低の男だ。もし、その対極を挙げるなら、医師のフレデリックということになるが、それは、結果的にジョンにサーカスよりも良い待遇を与えたに過ぎない。彼も、見方によっては、ジョンで売名行為し、立身出世の踏み台にした。また、女優ケンドール夫人にしても、果たして、外見に関係なくジョンの内面を見ていたのだろうか。のこのように、社会の中で、真の善意、善良を探すなんて、到底困難だし、不可能に近いだろう。


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一番の奇想天外の人生は、ジョンだ。天国と地獄を行き来する。彼は、翻弄される人生の中で、本当に望んだことは何だったのだろうか。それは、普通の人が、普通に求める、愛されることだったのではないか。人に利用されようが、虐げられようが、愛されれば、ジョンは人生を楽しめたかもしれない。誰もが受ける母からの愛、それが彼の最低限の希望だった。最後、ジョンは、翻弄される人生に疲れてしまったのか、あるいは、運命のいたずらに右往左往したくなかったのか、自分で死を選ぶ。それは、自殺とは言いたくない、ポジティブな生き方と思いたい。


今まで、ジョンが作っていた大聖堂に、意味を感じていなかった。しかし、今日観て、その完璧な出来映えに、完全なものへの憧憬が感じられる。不完全な自分にない「完全」が、彼には必要だったに違いない。彼は、それを完成させ、人生を全うした。彼の存念が、大聖堂に秘められ、それが神々しく輝いていた。これで良かったのだと、納得させるラストだった。


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