映画三昧 #1334 もぐら横丁(53)⭐️⭐️* | juntana325 趣味三昧

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尾崎一雄の修業時代を描いた原作を元に、「もぐら横丁」と呼ばれる長屋で暮らす作家と新妻の貧しくも愉しい生活を描く。当時の清水にとっては珍しいセット撮影、「紺屋高尾」の吉村公三郎、「大仏さまと子供たち」の清水宏(1)が共同脚色にあたった。監督は十数年ぶりにセットに入る清水宏(1)。「一等社員」の鈴木博が撮影を担当している。「関白マダム」の佐野周二、「愛の砂丘」の島崎雪子、「次男坊」の笠智衆、「安五郎出世」の森繁久彌、若山セツ子などが出演し、他に丹羽文雄、壇一雄、尾崎士郎、等現役作家が芥川賞受賞祝賀会シーンに特別出演する。

昭和20年代の日本、国民みんなが貧乏だった。貧しさは、人を荒んだ気持ちにさせるが、それは、嘘なのだろう。この作品を見る限り、人々は、みんな生き生きとしている。佐野周二演じる主人公緒方は、貧乏作家。もちろん、裕福な友人などいない。借金生活しながらも、毎日を楽しそうに暮らしている。飄々とした彼ら家族を見つめていると、貧しさを嘆く必要など、どこにあるのだろう。お金のあるなしに関係なく、人は豊かな生活を送れる。この作品には、アイロニーやペーソスなど微塵も感じさせず、人間への本質的なまなざしを感じさせる。

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そして、緒方の芥川賞の受賞。一気に、歓喜の渦に巻き込まれるかと思ったが、そうではなかった。喜びを噛み締めるという気持ちが、こういうものなのかと、初めて感じた。今までの苦労を噛み締めながら、その歓喜に浸る、そんな姿に、心に熱いものがこみ上げる。

義理人情をあえて主張しなくても、それが日常だった時代、ゆとりと豊かさが、横丁には溢れている。それは心地よいほどに美しい