ベットの脇にしゃがみこんで固まってる翔くんに
『お風呂ってさ
どうすんの?』
と、聞いてみる。
だって、変なことして爆発したら怖いじゃん。
翔くんはプンプン、ぶつぶつ言いながら
それでもちゃんと俺にお風呂の沸かし方を教えてくれた。
『はあああ~
気持ちよかった。
翔くんも入っておいでよ。』
バスタオルで髪を拭きながら
俺はキッチンにいる翔くんに声をかけた。
俺の声に一瞬肩が跳ねた翔くん。
「どうしたんだろう?
変な翔くん。
さっきから全然、目も合わせてくれないし………」
『………翔…………くん?』
「なにしてんの?」
と、覗き込むと
『…あっ……丁度、
カップヌードルも出来たとこだから
食べてから入るよ。』
って、気が利く翔くんは
朝ご飯の用意をしてくれていた。
俺がお腹すいてたの知っていて……
嬉しい…………
『なにか飲む?』(翔)
『うん。』(俺)
俺はニコニコしながらダイニングテーブルに座って
カップヌードルのにおいに感動してた。
食べたかったのに何度も機会を逃して
やっと巡り会えた……………
ひっくり返してしまわないようにって
蓋もちゃんと開けて俺の目の前にある。
うふふっ…………
早く食べたいな…………
と、体を揺らしてると
『昨日の残りのお茶があったじゃないか?』
と、翔くんが冷蔵庫に手を伸ばした。
『あっ。
それはだめ。』
俺は慌てて冷蔵庫の前に立ち塞がった。
『え?
なんで?』
と、翔くんが変な顔して俺を見る。
マズイ…………
俺のやったことがバレるじゃん。
『だ、だめ。
それは…………』
と、言葉を濁し下を向いた俺の行動に
『あ!!
さては…………お前…………
俺になにか盛っただろ。』
と、勘づいた。
『え?!
な、なんのこと?
俺………し、知らないよ。』
と、しらばっくれる俺。
『「なんのこと?」じゃねえ。』
翔くんの怒鳴り声に俺はビクッとして
言葉が出ない。
悪いことしたのは事実だから………
『お前、
俺に変な薬を飲ませたんだろ?
だから………
俺は無意識にお前を抱いたんだ。
そうだろ!!』
『……だ…………だく?
…………って、なに?
わかんないよ…………
翔くんに変な薬って………
……………睡眠導入剤………………
……入ってた………だけだよ。
翔くん………
絶対俺を無視して帰るって…………
いうだろうから………
だから…………』
と、ちょっとしおらしい態度で取り繕う俺。
『だからって
やっていいことと悪いことがある。
お前は勝手すぎる。』
そう言うと、翔くんはプンと顔を背けて
壁に凭れて腕組みをする。
『………うん。
ごめんなさい。』
「確かにやっていいことと悪いことがあるよね。
でも、それしか方法がなかったんだもん。」
シュンとしてる俺に向かって
『ごめん…………じゃねえ。』
と、翔くんはカンカンみたい。
『…………………ごめんなさい。』
俺がこんなに謝ってるのに
翔くんの怒りは冷めることなく
カップヌードルの方が冷めていく
『……………ねえ。
食べていい?
冷めちゃうよ。』
って、言っても返事がない。
とうとう俺に背を向けてしまった翔くん。
「チェッ」
テーブルには、今から食べようとしてたカップヌードルが二つ。
カップヌードルのにおいが堪らない。
「もういいや。
めんどくさい。
食べちゃえ。」
と、翔くんを無視して一口。
「わあ……美味しい……………」
啜り入れた麺がスープを掬い上げ
とっても美味しい。
俺は生まれて初めてカップヌードルってやつを食べた。
「こんなに美味しかったんだ。」
今まで凄く損した気分。
あっという間に自分の分を完食したのに
翔くんが食べる気配はない。
『翔くん?
食べないの?
延びちゃうよ?
俺、食べちゃうよ。
いいの?』
って聞いても無視された。
「そう。
じゃあ………いただきます。
ちゃんと、言ったもん。
食べないの?って
言ったもん。
俺、知らない。」
って二個目を食べ始めた。
最初のやつに比べると麺がフニャフニャだったけど
それはそれで美味しかったから
つい、
『あー。美味しかった。
ごちそうさま。』
って、声が出ちゃった。
カップヌードル二個はやっぱり食べ過ぎだ。
お腹がいっぱいでもう入らない。