翔くんが食べないから無理して
二個のカップヌードルを食べて
お腹がいっぱいになった俺は
そのお腹を撫でながらフーって息をついた。
『…うわああ~………
お、お前…………』
と、翔くんが飛んできて空のカップを覗いて
『俺の分は?
俺のカップヌードル………』
と言って、
俺の顔と空のカップを交互にみる。
『え?
翔くん………いるかったの?』
「俺、ちゃんと聞いたよ。
"食べないの"って………
なのに無視したの翔くんじゃん。」
カップヌードルは確か最後のひとつがあったはず
翔くんの事だから
自分で作って食べるだろうと
翔くんの脇をすり抜けてソファーに座った俺。
『はあああ~』
翔くんのあきれた声が静かな部屋に響く。
『だって、
全然食べないんだもん(麺、延びちゃうじゃん)。
要らないかと思って(怒ってるし)
俺、無理して食べたんだよ(ちょっと延びてたし)。
もう、お腹いっぱいなんだから。』
と言うと、小さなげっぷが出ちゃった。
TVを着けてみると
朝の情報番組の時間で
丁度、エンタメコーナーをやっていた。
女の子が何十人もいるアイドルグループの話題や
結成何十年のバンドが記念ライブをドームで行ったとか
映画の話にドラマの話と続くなか
突然、
[最近、活動停止のバンド
"Bad Boys"のことなんですが………]
と、俺達の写真が映し出された。
「え?
なに?
活動停止?」
突然の事に驚いてると
[Bad Boysのボーカルのサミーさんが
体調不良のため母国に一時帰国しているそうです。
病気療養中のため………
治療に専念させるために
一時的に活動停止を決めたとのことです。]
と、告げた。
「俺のこと、
病気って事にしてあるんだ………。
俺………こんなに元気なのに………」
「彼らは………
俺が戻ってくるのを待ってるんだ。
…………………
こんなに迷惑かけてるのに……
迷惑しかかけてないのに………
………………どうして?
………………
どうしよう…………
……………………
どうしたらいいんだろう…………
………………………
俺……………
また、サミーに戻れるのかなあ………
戻ってもいいなかなあ……………
……………
サミーは……………このまま引退して………
存在を消した方がいいんじゃないかな……
いつまでも世間を欺けないよ。
でも………
大野智に戻ってピアニストになる?
それって……………
また………
あいつの元に戻ることと一緒だ。」
「俺は……………
何がしたいんだろう………
どこに行きたいんだろう…………
どうすればいいんだろう……………
…………………
考えても、考えても
答えなんて……………
見つからない………
………俺って………
………………ダメだな……………
つくづく俺が嫌になる。」
って、思っていると
後ろで阿部の声が聞こえてきて振り返った。
そこには、大きな荷物を持った翔くんが
阿部に首根っこを摘ままれたみたいに立っていた。
『……………あれ?
翔くん………
そんな荷物持ってどこいくの?』
『お、俺………
…あ、……あ…しゃ……めし……
買いに行こうと………思って………』
と、翔くんが珍しく咬んでる。
カップヌードルなら、後一つ残っていたはずだよ。
朝飯買いに行くだけなのに
そんな荷物もいらないよね。
翔くん………
出て行こうとしてたんでしょ…………
油断も隙もないんだから…………