『もういい。
翔くんを解放してあげるよ。
バイバイ。』
と、車から降りていった大野。
一人で何も出来ないくせに
バイバイって言われたって
俺、行くところがないわ。
あいつは勝手なんだから………
俺は、大野が歩いていった方に向かって走った。
「なにもわかってないよ。」
と、大野の声が俺の頭の中でこだまする。
小さい頃からずっとピアノ漬けだったんだよな。
友達と遊んだことがないって言ってたな。
じゃあ……友達もいないのかもな……
なにも出来ない………じゃないんだ。
なにもさせてもらえなかったってことだ。
全ては、ピアノのために
大野は、"俺は、あいつに飼われてる。"
"あいつの所有物"
"あいつの物だ"
って、言ってた。
それだけ、お父さんの支配が大きかったんだ。
俺は……………
本当に大野の事…………
なにも考えてあげてなかった。
大野が、親元から逃げたくなるほどのものがあったんだ。
「…………なにもわかってないのは……
……俺の方だ。」
大野を見つけて謝らなければ………
と、一心に探したけど
見つからない。
「あっ。GPS!!」
と、気付いて
大野を探し出そうとしたときに
前の歩道をトボトボ歩いてる姿が見えた。
走っていって後ろから腕を掴むと
驚いた顔して振り向いて
俺を見て泣き出した。
『ばか。
こんな知らない土地で迷子にでもなったら……
どうするつもりだったの?』
『……ひっくん……また、誰かに………ひっくん…
拾って…………もらう……もん。
翔くん…………じゃない人……に………』
って俺に、強がり言ったところで
本当は、心細かったんだろうに…………
『ばか。』
俺が大野の頭をコツンと叩いて手を握った。
抵抗することなく、
大野も俺に手を握らせたまま
『……………翔くんだって………』
と、俯いた。
『ああ。ごめん。
お前の事、考えてなかったな。
ごめん。
ほら。泣くなよ。
化粧が剥げて男がばれるぞ。』
と、頬を掴んで顔を上させた。
『………………翔くんの……
…いじわる……』
そんな大野の頬に流れる涙を
ハンカチで拭いてやった。
『お前が………
お前がどんな覚悟をもってこうしてるか
俺は何も知らないで
勝手な事を言った。
ごめんな。
許してくれるか?』
と、覗きこむと
『翔くんの言うことは………
わかってるよ。
わかってるから…………』
と、俺から視線を合わせない。
『うん。
そうだよな。
そうだ。』
って、頷いた。
すると、クスってちょっと笑った声がして
『翔くん。
優しすぎ………』
って抱きついてきた。
まあ………
側から見たら恋人同士が喧嘩して
道端で仲直りしてるって見えるだろうな。
本当は…………男同士だけど………
……………まあ………いいか。