「おいらを…………
もう一度…………生んで…………
…………お母さん……………
汚れのない状態で………
綺麗な体の…………
おいらを………………生んでください…………」
智さんの事件の話を聞いてから
おいらは…………
ちょっと変だ。
おかしな夢をよく見るし………
「あれ?
これってどこかで見たことがある。」
とか、
「ここに来たことがあるような気がする。」
「前にもこんなことがあった気がする。」
って………
それをデジャブーって言うらしいけど
おいらの失った記憶と関係があるのかな………
『…………健太?
どうした?
どこがわからない?』
と、突然声をかけられた。
そうだった。
今は、家庭教師の田子先生と勉強の最中だった。
おいらが、問題をわからないでいると思ったのか
俺を見て問いかけた。
『あっ。
ごめんなさい。
ちょっとボーッとしてた。』
と、おいらは、答える。
『ボーッとするのは
健太の得意だからな。
で?
どこがわからない?』
と、ノートを覗き
何も書いてないのを見て
『どうした?
何か悩みごとか?
それとも心配ごとか?
…本当に………変だぞ?
なにかあったのか?』
と、おいらの頭に手を置いて
俯くおいらを覗きこみ聞いてきた。
『一人で悩んでも
知恵なんて、たかが知れてるんだぞ。』
と、
大人の意見や、知恵が
助けになることもあるって教えてくれた。
おいらは、翔くんから聞いた
智さんの事件の事。
おいらが最近見る変な夢の事。
そして、おかしな違和感について
話して聞かせた。
しばらく黙って聞いていた先生が
『健太は、それで
何かを思い出したのか?』
『……思い…出す…?
……………なにを?』
『いや。
いい。
気にすんな。
多分、健太は翔くんの話に共鳴したんだな。』
『…………きょうめい?』
『そっ。
健太は、翔くんの話を聞いて
智くんに共鳴したんだ。』
『…………?』
『…………智くんの気持ちに
………なってみた………んだろ?
……で…………どう思った?
智くんのこと………』
「そうか………
おいら、智さんに共鳴してたんだ。
智さんになった気分でいたのか………」
『………おいら………
智さんが、かわいそうだと思った。
ずっと……………
苦しかっただろうなって…………
……………可哀想だなって。』
「怖かっただろうな…………
怖かったに………違いない…………
苦しくて、哀しくて………
屈辱と凌辱の日々に……………
必死で自分を殺して堪えていたんだ。
…………会いたかった……だろう……な………
お母さんに、お父さんに…………
翔……くん…に……
相葉ちゃんに…………
潤くんに、ニノに……………
会いたかった………だろうな………」
って、思ったら
自然と涙が溢れてた。
また、智さんに共鳴しちゃった。
『健太。
お前はどう思う?
自分が智くんの立場だったら………
もし、
健太が………智くんの様に………
拐われたら………』
と、先生が聞く。
『………おいら………………』
「おいら……が……」
って、考えだしたら
頭の中で
地べたを這うような
低い声が聞こえてきて
"あいしてるよ。
お前を……………あいしてる。"
と、言う。
おいらはその声に耳を塞いだ。
塞いだのに、その声は尚も
"お前の命は俺が握ってるんだよ。
生かすも殺すも俺次第ってことを
忘れるな。"
といって笑った。
「あー…………煩い…………
お前なんて…………あっちへ行け。
おいらに話しかけるな。」
と、願うのに
"ほら。
もっと脚………開けよ。
俺が入らないだろ…………"
と、また笑う。
「……………やめろ………」
"何度教えても
下手くそだな。
こんなんじゃ
俺が逝けないだろ………"
「…………うるさい……………」
"ちゃんとできなかったから
罰として
今日は飯なしな。"
「黙れ!!
黙れ。
黙れ。」
『黙れ!!』
『健太!!
どうした?』
先生が、おいらの肩を揺さぶった。
『あっ。
ごめんなさい。
ちょっと……………』
『悪い。
俺が変な質問したのが悪いんだ。
ごめん。』
『……………………』
あの声がやっと消えた。
『…………なあ………健太。
健太は、智くんを"穢らわしい"って思うか?
"汚い"って思うか?』
と、先生が言う。
おいらは、大きく首を振って
『智さんは、汚くない。
悪いのは智さんを誘拐して監禁した
犯人であって
智さんじゃない。
智さんは、汚くなんてないよ。』
と言った。
『そうだよ。
そうだとも。
健太…………
この事を絶対に忘れるなよ。
いいな。
絶対に………だぞ。』
と、先生が念を押す。
『ところで、
これはなに?』
おいらの机に置いてある
卓上カレンダーの8月28日の花丸を指差して先生が聞いてきた。
『あっ。
これはね。
花火大会の日なの
友達と見に行くんだ。』
と、おいらは先生に教えた。