智にそっくりなその男は
俺に、自分を「買わないか?」ともちかけてきた。
俺が………
男を………
買う………
なんて…………
………………
でも、このままバイバイしたくなくて
「………持ち合わせないんだけど………」
と、言ってみた。
「…………じゃあ、
泊めてよ。」
彼は、あっさりと俺の後に着いてくる。
智に似てるような…………
でも、やっぱり違う…ような………
『君はいくつなの?』
童顔な顔はまだ学生にも見える。
『いくつだと思う?』
俺が聞いてるのに質問返ししてくるし………
『俺と同じ位?』
そう答えると
『正解。』
と言う。
「正解」って、結局わかんないじゃないか。
『いつも売りなんてやってるの?』
『いつもじゃないよ。
今日のねぐらがほしかったの
ねえ。コンビニ寄っていい?』
彼は、そう言うとコンビニに走っていく。
『え?
ちょっと…………
家ないの?』
俺は慌てて後に着いていく。
『あるよ。
あるに決まってるだろ。』
と言いながら
歯ブラシや、パンツ。
カップヌードルにポテトチップスなんかを籠に入れて
俺にその籠を「はい。」とよこした。
「俺が支払うのかよ。」
と、思ったけど
彼がニコニコ俺を見てるのが
智といるみたいで嬉しくて
『2,482円です。』
の声に「はい。」と"ナナコ"を出してた。
コンビニの袋を引っ提げて
『俺、今……
ぷち家出中なんだよね。
かーちゃんが口煩くて………
で、お金と寝床が無くなって
ネットで呟いたらさ
抱かせてくれたら
金とねぐらを与えるって言うから………
いいっかって思って………』
と、さらーっと言う彼に
『お前…………
バカ?
もし、何かあったらどうすんだよ。』
と、諭す。
『ふふっ…………
なんもなかったじゃん。
あんたが助けに来た。』
そう言って笑ってる。
『俺が悪もんだったらどうするよ。』
『あんた、悪もん?』
『じゃないけどさっ』
なんかおかしな会話だ。
彼は、掴めそうで掴めない。
スルッと俺の懐に入ってきたと思った瞬間
捕まえようとすると
また、スルッと逃げられる。
彼は、夜空を見上げながら
『俺…………どっかがおかしいんだと思う。
死ぬのなんて怖くないんだ。
むしろ、「殺してくれ」って感じなんだよね。』
と言う。
『な、なんだよ。
そんな物騒なこと言うなよ。』
『ははは………
冗談冗談。
そんな顔すんなよ。
で、まだ?
あんたんち?』
『あっ、もうすぐだよ。
それより"あんた"って
俺は "櫻井 翔" って言うんだ。
君は?』
『俺?
俺は…………
名無しのゴンベイさん。
あんた………櫻井さんの好きな名前でいいよ。
俺に似てる人がいたんでしょ
その名前でもいいし………』
『なんで?』
『なんで?
って、ただのセックス相手じゃん。
2、3日泊めてくれたらの関係でしょ。
そんな名前で呼び会う程でもないし。』
ほらまた………
スルッと交わされた。
『わかった。
じゃあ。智と呼んでいい?』
『さとし…………
うん。いいよ。
今日から俺の名前は"さとし"だ。』
と、笑ってた。