『智!!』
俺は慌てて智に近づく
なんで………?
何があったんだよ。
暗くてよく見えない………
ほんの
ほんの一瞬目を離しただけなのに………
なんで…………
少し先に目をやると
そこにあいつが立っていた。
『い・い・だ~!!』
渾身の力を込めてその名を叫んだ。
俺の声に気が付いたのか
周りから人が飛び出してきて
立ち尽くしてる飯田は取り押さえられた。
飯田は俺を見て何も語らず
ただ、にやにやと笑っていて
『くそ~っ』
あんなに注意してたのに……
智を抱き起こすと
銀色に光るナイフが脇腹に刺さっている。
『あ…………智。
智………大丈夫か?
今、いま……救急車……呼ぶから…………
待ってろ。
…………大丈夫だからな。』
俺は顔面蒼白で
涙がポロポロ溢れて
携帯で電話したいのに
上手く作動しない。
『………翔…………君、……慌てないで…………
…大丈夫……だから……
俺は、大丈夫だから……』
と、智の冷たい手が俺の頬を撫でる。
『俺の、俺の車で行こう。
なっ!
大丈夫だろ。
大丈夫だよな。』
俺は智の体を持ち上げて
助手席に乗せた。
『………ふふっ……
こんな……時に……
やっと……翔君の…………
車に乗れる…なんて……ね。』
って、智が気丈に笑って見せた。
ナイフが刺さったままだからなのか
どうにか出血が収まっているみたいで
微かに紅い染みがついてるだけに見える。
『大丈夫だから…………
大丈夫だから…………』
って、
俺は智になのか、自分になのかわからないけど
智の右手を握って呟いた。
智があんなに乗れなかった車に
今は、肩を揺らしながら乗っていた。
トラウマよりも今の痛みの方が勝ってるのか?
それとも、意識が混濁してるのか?
心配になって
声をかけてみると、
うっすら目を開けて俺に笑いかけてくれる。
どうか、
どうかお願い。
どうか、
智をお守りください。
智を助けてください。
神さま。
智が
どんな罪を犯したと言うんですか?
どんな罪だったとしても
もうたくさんなはずだ。
どれだけ苦しんで来たか知れないのに………
智の身に降り注ぐ苦しみを
俺が肩代わりするから
もう………
もう………
これ以上智を………
苦しめないで…………
俺から…………
智を……………
奪わないでくれ…………
頼むよ。
俺は、流れる涙を袖で拭いながら
急いで車を走らせて
昨日、智が運ばれた病院に着いた。