『和。』
まだ、随分遠くなのに俺を見つけて
潤が手を振りながら近づいて来る。
駅の改札の前で待ち合わせてた俺は
くるっと背中を向けた。
だって、ヤバイだろ。
あんなのヤバすぎだろ。
ちょっと見ないうちにすっかりアイドルじゃん。
すれ違う女の子が何人も振り向いてるよ。
恥ずかしい。
あんなキラキラしたやつと歩けないよ。
まだ、デビューしてないはずなのに
そのうちサイン求められそうじゃん。
って、思ってた俺の肩が捕まれて
振り向かされた。
『おい。俺に気づいといて
無視すんなよ。』
と、コツンと頭を叩かれた。
『あ………いや………
えっと……ひ…久しぶり…………ははは……
どこのアイドルが、来たかと思ってさ……ははは』
なんか、動揺してる俺?
ちょっと見ないうちに、本当にかっこよくなっていて
羨望の眼差しが痛いんですけど。
『なんだよそれ。』
俺の、愛想笑にちょっとムッとしている潤。
『いやさあ…………潤が……………まぶしすぎて………』
そう言って、両手で眩しさをアピールする。
『なんじゃそりゃ。
それより行くぞ。
時間がもったいない。』
潤は、俺の腕を掴んでスタスタと歩きだした。
『ちょ、……どこいくつもり?』
腕を掴まれた状態で俺が聞くと
『そりゃあ………ねえ…』
って、意味ありげな微笑み。
『なんだよ。…………気持ち悪いなあ。』
『和は、どこに行きたい?』
改札を抜けると、天井の案内標識を見る。
『俺?
俺は……………海に行きたい。』
『正解。
俺もそう思ってた。』
『ほんとかよ。』
『ふふん。』
日曜日の潤とのデートが始まった。
盛りを過ぎた海には
波打ち際で、はしゃぐ子供
犬の散歩をしている人
ランニングしたり、歩いてる人がいたり
其なりに賑やかで
ロマンチックとはかけ離れていた。
でも、寄せては返す波の音を聞いてると
穏やかな気持ちになる。
砂浜に腰を下ろして
瞼を閉じて眠くなってきた。
『和、寝るなよ。』
『うん、わかってる。』
って、言いながら意識が飛びそう………
『俺さ…………
今、ドラマの撮影してるんだけどさ………
デビューも決まったんだよね。』
潤が嬉しそうに
でも、言っちゃいけないことを言うみたいに
遠慮がちに言う。
『………………』
『聞いてる?』
俺の無反応に潤が、寝てるのかと思ったんだろう
背中に手を回して俺を覗きこんだ。
『……………うん。
聞いてる…よ…………』
目を開けることなく静かに答える。
『……………で、デビューしたら
こんなに堂々と出歩けなくなるから
今のうちに、行きたいところがあったら言って。』
って、そっと俺の手を握ってくれた。
「そっかあ…………」
『………………うん……………じゃあ………
潤の家に行こう。
……………智さんも、翔兄も今はいないっでしょ。
………行こう。』
『え?
俺んち?』
『うん。
潤の家で……
俺を………
……抱いてよ。』