『…………抱いてよ。』
って和が言う。
波の音でかき消されそうなほど弱々しい声で………
『潤が遠くにいかないように………
俺が繋ぎ止めておく。』
って。
『バカだな………何処にも行かないよ。
心配しなくても………
俺は和のもんだよ。』
俺の囁きは、和に聞こえたかな…………
ほんの数日前に俺はこの部屋を出た。
今じゃ、合宿所で10人以上の人間と暮らしてる。
そりゃあもう賑やかで
男ばっかりだからむさ苦しい。
「俺のパンツがねえ。」とか
「俺のプリン食ったなあ…………………ぶっ殺す。」とか
「あそこでコケるって…………ないわあ。」とか
ぎゃははって………兎に角…煩い。
アイドル目指してるだけあって
どの子もかっこいいし
可愛いって思う子もいる
けど、和に抱くような感情は持たないんだよね。
だって、俺は元々ホモじゃねえもん。
和だから………
和也だから…………こんな気持ちになんだよ。
主を失った部屋は
智がちゃんと掃除をしてくれてたみたいで
埃すらない。
机も椅子もベットもそのまんま
いつ帰って来てもいいようにしてあった。
俺の部屋に和を残して
キッチンで麦茶を注ぎ持っていく。
『ほら。
喉乾いただろ。』
ベットを背凭れにして座っている
和の前のテーブルにコップを乗せ
俺はそのベットに座った。
『サンキュー』
冷たく汗を掻いているコップは
テーブルの上に円を描く。
コクコクって喉を上下させて飲み干す姿がかわいいなって思った。
コップを持つ和の手って
ちっちゃくってかわいい……
俺は足をずらして
足の間に和を挟む形にして
後ろから抱きついた。
『…………汗…………かいてたから………臭くない?』
って、恥ずかしそうに下を向いて言うから
『それを言うならおんなじでしょ。
…………一緒にシャワー浴びようか。』
俺は、和の返事も待たずに
手を引っ張って階段を下りた。