突然、お母さんが声をあげて
『いいこと思い付いちゃった。』
って言って一人で楽しそうに何やら始めて
『じゃあ、一旦私出てるから
着替えておいてね。』
と、出ていった。
着るともなんとも言ってないのに……
参ったな…………
綺麗なドレス。
30年前のものだと思うけど
染みもなく、大切に保管してあったんだろうことがわかる。
翔君のお嫁さんに着てほしくて
大事に、大事に仕舞ってたんだろうな。
お母さんの気持ちが押し寄せてくる。
ウェディングドレスをじーっと眺め…………
「まっ、いいか。
俺達のことを許してくれた人の願いぐらい
聞いてあげても…………」って
軽い気持ちで着替え始めた。
ここはどうなってるんだ?
あれ?これはなんだ?
一人で格闘中。
暫くして、ドアが叩かれ
お母さんが戻ってきて、着替えた俺をみるなり
『やっぱり似合うじゃない。
可愛い………
思ってた通りだったわね。
………ちょっとだけお化粧もしましょうよ。』
って、近づいてきた。
『あっ。』
背中を見られちゃう……
そう思って、後退りしようとしたのに
ドレスの裾を踏んじゃってつんのめった。
『もう………
どんなに可愛いからって
食べないから安心して頂戴。』
そう言ってクスクス笑う。
『あっ。……じゃなくて
………………えっと………』
『そうそう。
これこれ。』
って、俺の肩に真っ白なレースのストールを掛けてくれた。
それによって俺の背中は覆われ
醜い背中は隠された。
それは、多分お母さんの優しさだ。
知っていて何も言わないし聞かないんだ……。
俺の目頭が熱くなって、今にも涙が溢れそうになった。
『ほーら。
顔あげて。』
俺が顔を上げると、お母さんが口紅を持って待っていた。
『マジで?』
『そうよ。
これだけはしましょうよ。』
そう言うと、俺の顎を手で押さえて
口紅と、グロスを塗ってくれた。
たった其だけなのに………
自分でも女の子みたいだ。
頭にベールを被せられて…………
その頃からもう鏡を見ないようにしてた。
『本当は、生花がいいんだけど。
思い立ったのが、さっきなもんで造花でごめんね。』
と言って、青色の花束を持たされた。
造花って言うけど本物みたい。
花の名前なんて知らないし、
なんで持たされてるかもわからないけど………
「もう、まな板の鯉だ。どうにでもしてくれ。」
的な感じ。
すると、お母さんが翔君を呼んだ。