『お兄ちゃんの家に入ったの久しぶりだけど
ちゃんと綺麗にしてるじゃない。』
と、あちらこちらと見回してソファーに座った母。
俺は、紅茶を入れて母の前に出す。
『あーあ。昨日掃除したからね。
で、本当に何の用だよ。』
と、隣のソファーに腰かけた。
熱い紅茶をフーフーしながら
『子どもの所に来るのに
用がなきゃ来ちゃいけないの?
たまに、どうしてるかと思って来てみただけよ。』
と、ちょっといじけた。
『そうなの。
紛らわしいな。
用があるって書いてあったからさ……』
『そうでも言わないと
お兄ちゃん、すぐはぐらかすじゃない。』
「確かにね。」
「用がある」なんて言われなかったら
俺もスルーしてたよな。
久しぶりに面と向かって話ていたら
若作りしてるけど、母も年食ったなって思って
『…………母さんは元気にしてるの?
父さんは?』
と、聞いてみた。
『私?元気よ。
お父さんも相変わらず忙しいけど……ね…』
と、言って笑った。
『和と、うまくやってるの?』
『そうね。
それより、お兄ちゃんこそ彼女いないの?
もう30でしょ。』
やっぱりその話になるか……
智のことちゃんと言わないと………
『………………いるよ。』
『え?』
『今度、ちゃんと紹介する。』
『ほんとに………
やだ………
もう、プロポーズしたの?』
母が嬉しそうにはしゃいでる
『…………したよ。』
『で。お返事は?』
『……うん…………まあ……………OK…』
「相手は男だけどね。」って言いたかったのに
母のはしゃぎっぷりにとても言えなかった。
『やだっ。ほんとに…………
もう………本当…………どうしましょ。
どこに住んでるかた?
お仕事は?
親御さんは?
どんな娘さん?
あー。早く会いたいわ………。』
「…………………」
『本当はね。
母さん、これを持ってきたのよ。』
と、袋からお見合い写真を出した。
『お父さんの知り合いの娘さんで
一度会わせてみたらどうだってお父さんが………』
『………………』
『じゃあ、これお返しするわね。
もう、必要ないものね。
お父さんにも教えていい?
それで、いつ会わせてくれるの?』
捲し立てるように質問責め
俺に彼女が出来たのがそんなに嬉しいの?
『…………………母さん!』
思わず声が大きくなっていた。
『…………なに?
突然大きな声出して』
と、母はキョトンとしている。
母がこのまま誤解して帰ったら話が拗れる。
それに俺は、智に指輪を嵌めてやったときに
決意したんだ。
二人で歩いていくって…………
だから、ちゃんと言わなきゃね。
智のためにも………
『母さん……………
俺の恋人は………………
大野智さんだよ。』
『…………智さん?
あら、男みたいな名前ね。
最近流行りなの?』
『違うよ。
男だよ。』
『そうよね。
最近、リョウって言う女の人がいたり
はるなって言う男の人がいたり
名前だけではわからないものね。』
母さんは、何を言ってるんだ?
『母さん…………
話がずれてる。』
『え?
どう言うこと?』
『母さん、ごめん。
俺の付き合ってる人は
中学の時に車の事故で会えなくなっていた
大野智さんだよ。』
『え?』
母さんが驚いていた。
その顔は、今までに見たことのない顔だった。