『じゃあ………
オーディション受けるの?』
『う~ん。
俺さ、智あっての俺だったから
自分の将来に対する明確なビジョンがなくてさ。
兎に角、早く大人になって智の支えになりたいって
そればっかで………』
『………………………』
『だから、和が、作曲家になりたいって
将来の夢を話してくれたときに
夢を語れるってすげーなって思った。』
『それは…………俺はゲームが好きだから…………
その流れだよ。』
『…………俺は、自分がどこまでのもんか試してみたい。
受かるかどうかわからないけど、
いいチャンスを貰ったと思う。』
『そっか。
受かるといいね。』
『…………はははっ
どっちだろう………
受かりたいのか受かりたくないのか……
わかんねー。』
俺たちの話は、昼休みの終わりを告げるチャイムによって終った。
結局、雅紀と話す時間もないまま
野球部の試合の日がきた。
公式試合でもないのに多くの人が応援に来ていて
グランドには人だかり
雅紀がどこにいるのか見えやしない。
まして、雅紀にも俺たちが見えないよな。
和と二人で試合の行方を見守りながら
雅紀に、なんて言おうか考えていた。
多分、和もなんだろうね。
言葉数が少ない。
人混みの中
人に気付かれないようにそっと和の手を握った。
試合は3対4で我が校の勝ち。
雅紀は代打で出たけど一塁でアウトになって終った。
人が引けてゆき
数人がグランド整備を始め
その中に雅紀がいないかと探してた。
『見に来てくれたんだ。』
と後ろから声がして振り向くと
そこには雅紀が立っていた。
『あれ?
グランド整備は?』
と、俺が聞くと
『これから、
俺トイレ行ってたの。
じゃあ………』
と、走り出した。
『あっ。雅紀。
ここで待ってるからさ
3人で一緒に帰ろう。』
そう言うと
『わかった。』
と、手を振った。
和とグランド脇の階段に座って
雅紀が来るのを緊張しながら待っていた。
雅紀にちゃんと話せるだろうか………