『バイトしてやっと貯めたお金で京都に行って。
知らない場所を一人で歩いてみたよ。
智もこの知らない町に不安だったんだろうなって思って。
舞台を見たときには俺、圧倒された。
智が俺の知らない人に見えて
大勢の観客に手を振る姿に
俺の智はもう俺だけの智じゃないって気づいたんだ。
知ってるか?
お前に会えたって泣く人がいるんだぜ。
もう、住んでる世界が違うって思ったら
俺なんて邪魔じゃん。』
『そんな……
そんな理由?』
『そんな理由って………
そん時の俺はそれが最高の判断だって信じてたんだよ
智には凄い才能があるのに
俺のためとか言って簡単に捨てるんだ。
なんの執着もなく。
それが嫌だった。』
ニノの思いが溢れてくる。
あの時、そんなことを考えていたなんて思いもしなかった。
『俺が、こうしてこの世界にいるのは
ニノのお陰なのかもな。
ニノの言う通り、あの時の俺はなんの執着もなく
芸能界を捨てるつもりだった。』
『今じゃもう国民的アイドルだもんな』
『あはは……もう30近いけどな』
『あはは………
俺………
智に謝らなきゃいけないことがあるよな。』
笑っていた顔が急に神妙になって言うから身構えた。
『……なに?』
『最後の夜………
レイプに近いことしてごめん。』
ニノが俺に頭を下げた。
『そうでもしないと………
また流されそうで……
俺の決断が揺らぎそうで………
ごめん。
嫌な思いさせて、痛い思いさせて、
本当にごめん。』
色んな思いがあっての行為だったんだろうなって
今ならわかる気がする。
『もういいよ。
もう忘れた。』
俺はプイッと顔を背けた。
『智は………櫻井くんと付き合ってるの?』
『え?なんで?』
『だって………いくらメンバーだからって
一晩中付きっきりて……』
ニノに隠すこともないだろう
ニノは絶対ばらさない。
『うん。
そう。翔くんと付き合ってる』
『そっか。
俺も…………結婚するんだ。』
『え?嘘!』
『ほら』
と左手薬指に銀色のリングが光ってた。
『…そう……そうなんだ。………おめでとう』
『サンキュー』
『じゃ……じゃあ、俺、行くわ。』
『うん。
智……元気でね。』
『お、おう。
ニノは………お幸せに………』
と言うと控室を出た。
明らかに動揺してるのが自分でもわかった。