薬物と スターの死 | Gaydar !

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HIV+です。ゲイです。それ以外の自分って...なあに?(笑)


アメリカの人気TV番組「Glee/グリー」に主演していたカナダの俳優、コリー・モンティスさんが ヘロインとアルコールの併用摂取により 31才の若さで亡くなった。

うーん....
僕も番組のファンだったし、ショービジネスの世界で将来のあるひとだろうなあ、と思っていただけに 残念だし ショックだった。やりきれない気持ち。

で、この話を何人もの友だちとしていたときに、彼らの口から 一様に

「ヘロイン って...なんで ヘロインなの?」

という言葉が出てくるのを聞き ちょっとハッとしたんで 自分の知っている範囲のことを ブログに書きとめておこうと思う。

日本で違法薬物といえば、誰もがまず思い浮かべるのが覚せい剤(アンフェタミン、メタンフェタミンを含む)だろう。
厚生労働省・警察庁・海上保安庁の2011年度の資料を見ても、年間の検挙人数のほとんどを覚せい剤が占めており、ぐっと引き離された形で大麻、コカイン、MDMAの順番になっている。
ヘロインを使用する人数は 日本においてはあまりいないだろうということが統計からも推測できる。

すべての人に関して当てはまるかどうかは分からないが、日本では違法薬物を"刺激を求める"ために使用する、つまり 自分の気持ちを高ぶらせたり、アゲるために使用する人が多いんだろうなあと思う。
俗に"アッパー系"とよばれるものですね。
感覚としては アルコールを過剰に摂取してハメをはずそうという延長線上にある。
本質的に 日本人はマジメでおとなしく、他人に対して従順な気質をもっている人が多いから、アルコールや薬物によって自分のタガを外し、日常生活の中で押さえつけている凶暴性を開放して ひと暴れしてやろう っていう欲求が強いんじゃないだろうか。

ところが 国によっては こうした"アッパー系"ではなく、鎮静剤などの"ダウナー系"と呼ばれる薬物が流行している国がある。
というか 統計で見たら 実はそっちの国のほうが多いことが分かる。
その"ダウナー系"の主流がヘロインやモルヒネといった薬物だ。

2011年に HIVと麻薬問題を扱う市民団体のメンバーとして「国連麻薬委員会」という ものものしい名前の会合を傍聴させてもらった(非常に)貴重な経験がありますが、そのときも "ドラッグ"を口にしていた人々(日本人以外の)が連想していたのは 覚せい剤ではなくヘロインだった。

ヘンな言い方になるけれど 外国ではそれくらいポピュラーな薬なんだね ヘロイン。
2010年にクアラルンプールのリハビリ施設を訪問したときも クリーンな状態を保っている元依存症の人たちからさまざまな話を聞き、ヘロインの怖さについていろいろ考えさせられたことを思い出す。

しかし...
薬物に依存する理由が ハイな刺激がほしー、ひと暴れしたい ではなく いわば"眠り薬"にあたるヘロインなのか この理由が自分にはピンとこなかったので 麻薬委員会の会場で、ある外国人に尋ねたことがある。

彼の答えはこうだった。

「うーん....難しいですね。
その薬物が流行している国や集団の事情というか 背景によっても変わってくるんですが...
たとえば、酒に高い税率を課している国の中には アルコールを買うよりもヘロインのパケットを買うほうが安価なケースがあります」

「あるいは 薬物のほうが酒より簡単に手に入るという生活環境も 実際にはある。
子供が最初に手にする"不良のたしなみ道具"が、酒やタバコではなく危険な幻覚剤である可能性は十分にある。親や兄弟など 流通の媒介になる人間が身近にいれば 簡単です」

「ヘロインに魅力を感じる人がいるとして、その理由で考えられるのは
世の中にあるすべてのことを忘れてしまいたいくらい 自分は不幸なんだ
生きていても楽しいことなんかひとつもないんだから と思ったら 
明らかな自殺ではないけれども 薬を使って楽になりたい 
現実にはありえない幸福感を味わいたい と思うことは あるのかも知れない」

「刺激がほしい、というのは つまり 刺激が足りないというくらいだから 日常生活はある程度ふつーになんとかなっていて 毎日の生活で食うに困るとかそういうことじゃなくて 安定はしてるんだけど 同じことの繰り返しでなんか退屈なんで なんか面白いことねえかな ってことでしょう」

「そういう理由の違いもあるだろうし、麻薬であろうと薬という物質である点にかわりなく 化学的な作用が体質にあう、あわないもある。
あるいは 最初に使った薬がなんなのか それによっても あとの展開が変わってくる」

「そういったさまざまな理由が組み合わさって 人によって使う薬の種類が違ってくるとか あるいは国の事情によってポピュラーな薬の種類が違うとか あるかも知れないね」

彼の答えのすべてが正しいかどうかは分からないが...

確かに ヘロインが流行している国は 経済的な発展の途中にある国が多いし 財政破綻で話題になったギリシャや 国民の間で生活の格差が進むロシアなどでヘロインの静脈注射乱用者が激増しているというのも なんとなく理解はできる。

ちなみに"アッパー系"の薬でアゲアゲになって でも そのままではハイな状態が収まらないので"ダウナー系"の薬でサゲる、という 両方の種類の薬物をカクテルにして使用する方法を好む人たちもいる。
そしてこれは ジャンキーへの最短距離とも言われているし、過剰摂取、OD(オーバードース)による死亡の大きな原因でもある。日ごろ 過剰なストレスにさらされている有名人などには、多く見られる傾向という。
コリーさんの場合 ヘロインとアルコールなどの組み合わせだったらしいけど そう考えれば 身体へのダメージが心臓に過度な負担を与えたのではないか ということは 納得できる。

薬物の過剰摂取で亡くなった芸能人は外国ではたくさんいるが、僕の世代でなんといっても印象的だったのは リバー・フェニックスではないだろうか。
「スタンド・バイ・ミー」や「マイ・プライベート・アイダホ」、「旅立ちの時」など数々の映画で見せてくれた孤独な少年/青年像は、あのころの僕らの間ではカリスマ的な存在になっていて、彼の発言や行動が 当時の若い人たちの心を 確実に動かしていた。

彼がヘロインとコカインの過剰摂取で亡くなったのは1993年の秋で、考えたら今年は没後20年だったんだね。
時間の経過の なんと早いことか。

コリーさんも きっと クスリをやめたかった 真剣にやめたかっただろうな。
リハビリ施設に通所してたそうだから このままじゃいけない ってわかっていたのだと思う。

でも 一度足を踏み入れたらやめたくてもやめられないのが 薬物依存の怖いところだ。

「薬を使うなんて自分が悪いんじゃん、自分の問題じゃん、自己責任的にぜんぜんダメダメじゃんね、同情の余地なんてまったくないでしょー」

と 自分の一方的な価値観でバッサリ切って捨てるようなことは 僕は言わないし 言えない。

それは 自分が薬物におぼれないだけの恵まれた環境にあることに対して 無意識 無自覚でいるに過ぎないからではないか と思うから。

でも すべての人たちがそういった恵まれた環境にいるわけではない。
自分の努力だけでは 自分が望む環境を手にすることが難しい人たちだってたくさんいるのだ。

薬物問題で苦しんでいる人が自分のそばにたくさん暮らしているのを知っているし、僕自身も悩みを抱えた時期がある。
彼らがどれほど本気になってやめたいと思っているか 毎日の生活を それこそ地獄で暮らすような思いで必死に戦っているか その胸のうちも ある程度は(全ては無理だろうけれども)分かってるつもりである。

痛切な心のうちを知るものとしては 誹謗中傷で相手を責め立てるのは ツラい。  

"刺激はないけど、平穏でとりあえず健康かなって思える 現在の自分の日常生活を大事にしたい。廃人になった人もたくさん見てきた。薬物の恐ろしさを知っているつもり。
だから自分は使いたくないし その必要もないよ" 

という意思を伝える....
それくらいのことしかできないし それで充分だと思っている。

特に 自分はHIVという病気をもっているから....
違法薬物の摂取で健康に被害が及ぶのは 病気を持つ身として なんのメリットもないので... 

今回のコリーさんの死をきっかけに 若者の薬物使用の問題が もっと自分たちの問題として考え直され リアリティをもってもらえるようになれば。

昨日までTVで見かけていたあこがれの人も 夢の中に生きてたわけじゃなく

現実を必死に生きていた 生身の人間だったんですよ と。

追悼の意を込め 今は そんな気持ちになっています。

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